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パラリンピック金メダリストと考える、障害と人権

2014.12.16 平澤 直子

Paralympics, London 2012 Athletics:Creative Commons,Some Rights Reserved,Photo by Nick Miller

12月4日、人権週間(同日から10日まで)に合わせ、東京・世田谷区の北沢タウンホールで、「講演と映画のつどい」が開催され、パラリンピック金メダリストの土田和歌子氏が講演しました。

人権週間とは、1948年12月10日に国連総会において世界人権宣言が採択されたことを記念して法務省と全国人権擁護委員連合会が定めたもので、毎年人権にまつわるさまざまなイベントを開催、その普及をはかっています。

講演を行った土田氏は、高校生のときに事故に遭い車いす生活になりました。事故直後は現実を受け入れ難かったものの、たまたま運ばれた病院がせき髄損傷を負った人の社会復帰を助けるセンターを併設していたため、その廊下を患者さんたちがカラフルな車いすで疾走していたそうです。それを見て、「あんなにカラフルな車いすがあるのか!」「車いすってあんなにアクティブに動けるのか!」と驚き、「早く自分もああなりたい」を励みに復活することができたそうです。

最初は車いすバスケをやっていた氏ですが、長野オリンピックが開催されることになり、その関連イベントでたまたまアイススレッジスピードレースを体験した際、なんと3カ月後のリレハンメルパラリンピックに出ないかとノルウェーから来た講師に誘われたそうです。オリンピック選手には3カ月ではなれません。でも、パラリンピックは競技人口が少ないため、3カ月でも選手になれる、誰にでもチャンスがあると氏はいいます。

残念ながらリレハンメルでは敗退したものの、4年後の長野パラリンピックでは金メダルを獲得。その後アイススレッジの廃止に伴い転向した陸上でも、2004年のアテネパラリンピック車いす5000メートルで金メダルを獲得しました。その後、結婚。自身の情熱と訴えで症例の少ない普通分娩での出産をし、競技に復帰。現在、2016年のリオ・パラリンピックを目指して世界中のマラソンレースに出場しているそうです。

氏の講演中によく出てきた言葉は「たまたま」「勝つためには何をしなければいけないか」「自分の情熱を人に話すことで人が動いてくれる」など、今の自分を受け入れ、そのうえで、目標に到達するのに必要なことを冷静に分析し、人に話し、行動をする。それは、車いすであろうがそうでなかろうが、すべての人に必要なことで、ありのままの自分を受け入れることができずにもがいているたくさんの人に元気を与える講演でした。

また氏は、「障害者となった友人にどう接したらよいのか」という会場からの質問に対して以下のようなヒントもくれました。「障害は、周りの人が何かしてあげられるものではなく、自分が強くなって乗り越えるもの。そのヒントを与えるのが周囲の役目。障害を持ったからといって特別扱いされたくない人もいれば、特別扱いされたい人もいます。そのどちらなのかは性格によります。性格は、周りの人が知っているはずだから、判断してください」

奇しくも12月3日は日本が「障害者の権利に関する条約」を批准(2014年1月)して初めての「国際障害者デー」。国連によれば、世界人口の約15%にあたる10億人が障害を持って暮らしていて、彼らは世界最大のマイノリティーであるとのことです。国連の今年の人権デー(12月10日)スローガン「human rights 365」にあるように、365日いつでも、世界中のすべての人が平等に人権を確保できる社会を作れるように願っています。そしてその鍵は、土田氏がヒントをくれた他者の気持ちを「尊重」すること、マイノリティーであってもいつも助ける対象にあるわけではなく、「尊敬」の対象となりうること(これは土田氏が身をもってあらわしている)、この2つにあるのではないかと思います。



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