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風で動く地雷除去ボール「マイン・カフォン」が進化!
今度はドローン搭載のハイテク型

2016.07.20 平澤 直子

courtesy of Mine Kafon Foundation/Hassani Design BV

現在、地球上に埋まっている地雷の数は1億発以上といわれています。アンゴラ、アフガニスタン、イラクをはじめ、60カ国以上に埋まるこの安価な凶器により、毎日10人以上が負傷または死亡し、たくさんの子どもたちが遊び場を奪われています。

この現状を打破しようと作られた、風で動く地雷除去ボール「マイン・カフォン」。それは2012年の発表以来、その原始的な構造と芸術的価値の高さゆえ、世界中で話題となり、トップ25デザイナーズ、フォーカス・フォワード、ニューヨーク近代美術館といった、さまざまな場所でとりあげられ、幾多の賞を受賞してきました。

courtesy of Mine Kafon Foundation/Hassani Design BV

しかしいくら美しくとも、風まかせで動くこの大きなおもちゃのような装置では、「2025年までに地雷のない世界を作る」という世界的目標(※)に間に合いません。そこで、マイン・カフォンの開発者であり、みずからも地雷により外遊びが十分にできない幼少期を過ごしたアフガニスタン生まれのオランダ人デザイナー、マスード・ハッサニ氏は、今度は、さらに効率よく地雷を除去できる、まったく外観の異なる装置「マイン・カフォン・ドローン(MKD)」を開発しました。

ハッサニ氏と世界中のエンジニアが協力して作り上げたMKDは、ドローンにロボティクスを組み込んでおり、マッピング、探知、起爆の3つの動作で地雷を爆破します。MKDはまず、地雷が埋まっていると思われる区域の上を飛び、その地形を把握し、3Dマップを作ります。次に高性能金属探知アームを垂らし、それが地上たった4センチの高さになるように飛び、地雷を探知します。そして探知された地雷の上に、また別のアームが小さな起爆装置を置き、地雷を爆破していきます。

マッピング、探知、起爆の3ステップからなるMKD courtesy of Mine Kafon Foundation/Hassani Design BV

風でランダムに動き、地雷に当たるのを待つ従来のマイン・カフォンと異なり、みずから地雷を探知するMKDは、より効率的に地雷を除去できること、そして、ドローンという無人機での作業であり安全であることから(現状では、動物や人の手で地雷探知が行われていて、非常に危険な状態です)、国連、オランダ軍、デンマークの世界的NGO Dan Church Aid、英国の地雷除去会社Mines Advisory Group Internationalなど、さまざまな機関や企業が興味を示しており、ハッサニ氏は今も、MKDのプロトタイプを携え世界中を飛び回っています。当然、従来のマイン・カフォンほど安価ではありませんが、それでも、現行の地雷除去機の200分の1のコストで製作でき、また、20倍の速さで地雷を爆破できるといいます。現行の方法では、世界中の地雷を撤去するのに1100年以上という、長い年月がかかると計算されていますが、MKDならたった55年。私たちが生きているうちに地雷のない世界を作るという夢も、一気に現実味を帯びてきます。

とはいえ、MKDはまだこれからパイロットスタディを行う段階で、その資金の7万ユーロ(約820万円)は資金調達サイトKickstarterで調達する予定です(8月31日まで)。2013年の従来型マイン・カフォンのKickstarterキャンペーンでは、目標の10万ポンド(約1400万円)を超える資金を調達できた彼らですが、今回のより実用的な外観のMKDはどういう結果になるでしょうか。

なお、従来型マイン・カフォンは、今秋アフガニスタンで屋外試験を予定しています。また、彼らのウェブページには、地雷原地域に住む人が簡単に作れるようにと、タイヤや木の板などを使った簡易版マイン・カフォンのDIY方法も掲載されています。最新テクノロジーを取り入れた装置の開発と、ローテク・ローコスト装置の開発と普及。この両輪を動かす彼らの今後には、これからも注目していきたいところです。

※2014年6月にモザンビークのマプトで開催された対人地雷禁止条約の第3回再検討会議で、ようやく締結国は2025年までに地雷のない世界を作ることを目標に定めた。



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このニュースの地域

アフガニスタン (アジア/オセアニア

平澤 直子