NTT DATAThink Daily

  • 地球リポート
  • 地球ニュース
  • 緊急支援
  • 告知板
  • Think Dailyとは

地球ニュース

RSSrss

Water

太陽熱エネルギーで水を浄化
深刻な干ばつに悩むカリフォルニアで水革命が起きるか

2015.08.06 平澤 直子

San Joaquin River National Wildlife Refuge:Creative Commons,Some Rights Reserved,Photo by H Grimes

「カリフォルニアの水はあと1年分しか残っていない」というNASAの科学者の衝撃的な発言で話題となったアメリカ・カリフォルニア州ですが、実際、ここ80年間の観測史上でも記録的なほど雨が降っておらず、特にこの4年間は大規模な干ばつに悩まされています。一方でアメリカ政府開拓局は、カリフォルニア中部で最大の河川であり、かんがい農業の用水供給源となっているサンホアキン川に流れ込む、汚染された農業排水を2019年までにゼロにするよう求めていて、カリフォルニアの農家は給水だけでなく排水の問題にも頭を悩ませています。

この悩めるカリフォルニアで、この2つの問題を同時に解決する、新しい浄水プラントの建設計画が発表されました。発表したのは、サンフランシスコに拠点を置く再生可能エネルギーを利用したウォーターリサイクルシステムメーカー、WaterFXの子会社HydroRevolutionで、プラントは、カリフォルニア初の太陽熱を利用した、農業排水を浄化しリサイクルするものです。

カリフォルニアの沿岸にはいくつもの大きな浄水プラントが並んでいますが、これらは海水に大きなエネルギーをかけて塩とミネラルを透過させて浄化する逆浸透法をとっており、エネルギーの大量消費、沿岸の生態系への悪影響といった問題を生み出してしまっています。また、これら従来の方法では、最大で半分もの量が、海に戻されていて、効率も良くありません。

その点HydroRevolutionシステムは、化石燃料の使用を避け、太陽熱で排水を蒸留するため、気候変動に影響を与えないと言います。ナショナルジオグラフィック協会の淡水フェローでありグローバルウォーターポリシープロジェクトのディレクターを務めるサンドラ・ポステル氏は「いくら干ばつの間の飲用水を確保することができても、その技術が気候変動を促進するようでは本末転倒でしょう。結局それがさらなる干ばつを引き起こすのだから」と言います。

この新しい浄水プラントの建設予定地は、カリフォルニア州セントラルバレーの、現在耐塩性植物が植えられている35エーカー(約14ヘクタール)の土地でということで、生態系に与える影響は少ないと言えそうです(多量の塩は毒となり、そこで生きられる生物は少ないため)。そしてこのプラントで使われるAqua4 technologyという脱塩プロセス(排水から塩やミネラルを除くプロセス)では、余分な排水はなく、淡水および固形の塩が産生されるだけなので、汚染物質の河川への流出の心配ありません。また、システム全体を見ても、太陽熱で蒸留した凝縮液の90%以上は純水に戻されるという、この種のシステムの中で最高の効率の良さです。

この浄水プラントでは7,000エーカー(約2832ヘクタール)の畑から排水を集め、不要なミネラルと塩を除去して淡水を生産し、近隣地域に供給する予定です。最大で年間5,000エーカー・フィート(約61億リットル)の浄水が生産できるといいます(1万家庭または2,000エーカー<約809ヘクタール>の畑を賄うのに十分な量です)。

「WaterFXは、このプロジェクトがカリフォルニアの水の利用方法に革命を起こす第一歩になることを期待している」とWaterFXコミュニケーションチームのアイビー・ウィズナー氏は言います。このプラント設備はモジュール化され、持ち運び可能、コストも従来の方法の4分の1で済むとのことで、今後、カリフォルニア、だけでなく、オーストラリアやアフリカなど、深刻な水不足に悩む他の国への広がりも期待したいところです。

なお、この浄水プラントの建設の資本はクラウドソーシングの力を利用する予定で、投資家を募る予定です。カリフォルニア州の住民のみが参加可能ですが、カリフォルニア産の作物を直接あるいは間接的に食べている私たち日本人にも無関係な話ではないはずです。



関連するURL/媒体

Bookmark and Share

Thinkテーマ別に読む

Technology, Water

このニュースの地域

カリフォルニア、USA (南北アメリカ

平澤 直子