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2018.03.29 | 宮原 桃子

フェスと起業家をつなぐ! オランダの新しいベンチャーの支え方


©INNOFEST

暖かくなって、各地でさまざまなフェスが開催されるシーズンになりましたね。音楽やカルチャー、スポーツなどのプログラムを楽しみながら、飲んだり食べたり、会場で寝泊まりして楽しむフェスもあります。多くの人が集って活動するフェスは、まるで小さな社会の縮図とも言えます。だからこそ、フェスは新しいサービスや商品を試してみる、素晴らしい実験の場になるのでは。そんな想いを抱いたオランダの一人の女性が、ベンチャー支援サービスを立ち上げました。その名も、イノベーションとフェスティバルを掛け合わせた「イノフェスト(INNOFEST)」。

©INNOFEST  創業者のアンナ・ファン・ヌーネンさん

創業者のアンナ・ファン・ヌーネンさんは、元々オランダの研究機関で、ビジネスエコシステムやイノベーションなどの分野を研究していました。スタートアップ企業が直面する課題の一つとして、商品や技術、サービスのプロトタイプを、市場参入する前にテストできる場や機会が少ないと感じていたそうです。そこに、フェスを単なるエンターテイメント以上の場にしたいと考える人びととの出会いがあり、イノフェストのアイディアが生まれたのです。

「小国オランダでも、フェスに年間2300万人以上の人が訪れます。多くの人が集うフェスでは、食べ物、水、物流、エネルギー、ごみ処理など、現実の社会と同じあらゆる機能が必要とされます。ここで新しいサービスや商品をテストすれば、その効果や反応を測ることができます。しっかりテストできる場があれば、実際の社会で失敗するリスクを減らすこともできます」と、アンナさん。


©INNOFEST

2年前に立ち上げたイノフェストは、オランダ国内8つのフェスと手を組んで、起業家や学生たちによる61のプロジェクトをサポートしてきました。支援先の選定にあたっては、革新性や投資効果とともに、より良い世界に貢献する「サステナビリティ」をとても重視しています。イノフェストは、支援先のテスト内容や目的、手法を精査して、最も合うフェスを選びます。そして準備から当日まで、二人三脚。フェスが終わると結果を検証して、追加テストを行ったり、投資家やパートナー企業とのマッチングを行ったりと、次のステップをサポートします。イノフェストの支援サービスは、財源の85%をオランダ政府の助成金で支えられていることもあり、これまで無料で行われています。


©INNOFEST フェスで企業をサポートするイノフェストのスタッフ

支援企業の一つ「セミラ・サニテーション・ハブ」が手掛けるのは、循環型トイレ。特殊なフィルタリング技術によって、人の尿から飲料水を作り、排せつ物から肥料やバイオガスを作るトイレです。同社は、オランダ有数の音楽フェス「ユーロソニック」でトイレを稼働し、尿から抽出した飲料水でミントティーを作って、来場者に提供。こうしたテストを経て、現在はヨルダンの難民キャンプで稼働しています。ただ、フェスのテストでは、尿から作られた水を飲むことを躊躇(ちゅうちょ)した人も多く、心理的なハードルがあることもわかりました。そこでイノフェストとセミラ社は、文化人類学者なども交えて、ユーザーとどのようなコミュニケーションが必要かを検討し、近々別のフェスで追加テストを行うそうです。


©INNOFEST セミラ社

イノフェストの支援を経て、85%のプロジェクトが市場に参入しています。例えば、2年前に支援したオランダの「カーテント(KARTENT)」社は、世界各地のフェスで使用後のテントが放置されている問題に対して、リサイクルできる段ボール製テントを開発。イノフェストでのテストを経て、今ではアメリカやオーストラリアなど海外でも展開されているそうです。


©INNOFEST

イノフェストの試みは、世界各地から注目を集め、昨年はEU委員会が主催する「欧州企業プロモーション賞」で、審査員大賞にも選ばれました。今後は、ベルギーの5つのフェスとの提携も決まっているそうです。アンナさんは、今後についてこう語ってくれました。

「世界各地で多くのフェスが開催され、最近は、サステナビリティをコンセプトにしたフェスも増えています。ただ、フェス自体をサステナブルに運営することと、フェスをサステナブルなイノベーションや起業家のための場にすることでは、異なるアプローチが必要です。こうしたノウハウを強みに、まずヨーロッパ、さらに世界へ展開していきたいですね。また今後は、支援企業による費用負担や、パートナー企業のスポンサーシップも増やしながら、よりサステナブルな運営を目指していきます」

イノベーションとフェスは、そのどちらも、世界中に存在するもの。そして、サステナビリティは、世界中で求められていること。この3つを掛け合わせたイノフェストの試みは、日本を含め、どの国でも実践できるアプローチではないでしょうか。

宮原 桃子
宮原 桃子(みやはら ももこ) 地球リポーター

日本貿易振興機構(JETRO)に勤務後、フェアトレードファッション・ブランド「People Tree」にて、バングラデシュ・インド・ネパールでの衣服生産を支援する仕事に携わる。ドイツでの子育て生活を経て、帰国後は親子向けにフェアトレードを学ぶワークショップを企画する団体「フェアトレードガーデン世田谷」(本部・東京)を運営。フェアトレード絵本「ムクリのにじいろTシャツ」の筆者。現在は広島に暮らしながら、フェアトレードや環境、平和などのテーマを中心に執筆。 この社会を変えられるのは、私たち一人ひとりです!社会や世界で起きていることを「自分ごと」として感じ、考え、行動する。そんなきっかけになるような記事をお届けしたいと思います。

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