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2018.04.19 | 宮原 桃子

プラスチックごみを、誰でもどこでもリサイクル! ノウハウを公開する「プレシャス・プラスチック」

上海のユーザーコミュニティー

カラフルでおしゃれなお皿やコップ、タイル、アクセサリー、花瓶、時計…。思わず手に取りたくなるようなポップな商品の数々。これらは、すべてプラスチックごみからできているんです。作ったのは、世界各地の名もなき普通の人びと。彼らは自分たちで、プラスチックごみをリサイクルする機械を作り、粉砕し、溶かして、商品を作っています。そんな簡単に機械が作れるの? と思うかもしれません。今世界中に広まりつつある「自分でリサイクル」の背景には、オープンソース「プレシャス・プラスチック」の存在があります。

「プレシャス・プラスチック」は、現在約4万人のフォロワーを抱えるオンラインコミュニティです。ウェブサイトでは、プラスチッ ク廃棄物をリサイクルするための機械づくりから商品化までのノウハウや、世界各国で取り組む人たちや工房の情報、リサイクル商品や機材のオンラインマーケットなど、さまざまな情報を誰でも無料で得ることができます。

プレシャス・プラスチックを2013年に立ち上げたのは、当時オランダの名門アカデミー「デザイン・アカデミー・アイントホーフ ェン」に在学中だったデイヴ・ハッケンスさん。ハッケンスさんはデザインを学ぶなかで、膨大な廃棄物を生み出す消費システムに、疑問を感じるようになりました。プラスチック生産は年々増え続ける一方、世界のリサイクル率は10%程度にとどまり、世界中にゴミがあふれている。リサイクル設備は複雑で高価なため、裕福な国や大企業しか手に入れられない。そんな現状を目の当たりにしたハッケンスさんは、「誰でも簡単に、自分でプラスチックをリサイクルできる機械を作ろう!」と決心。卒業プロジェクトとして、「プレシャス・プラスチック」を立ち上げたのです。

プラスチック廃棄物によって、海が汚染され、生態系にも影響を及ぼしている
創設者のデイヴ・ハッケンスさん

職人ではないハッケンスさんは、まずYouTubeやインターネットなどでさまざまな情報を集めて、機械の試作品を作るところからスタート。リサイクルシステムが確立していないような国も含めて、世界中の誰もが作れる方法を模索。試行錯誤の末に、どこでも手に入る安い材料で、誰でも簡単に作れる機械を開発しました。寸断機、押し出し機、射出成形機、圧縮機で構成される、モジュール型のリサイクルシステムです。

左から寸断機、押し出し機、射出成形機、圧縮機

プレシャス・プラスチックのユニークさは、機械や商品の作り方や設計図、データなどあらゆる情報を、オンラインで無料公開しているところです。ハッケンスさんは、こう話します。「人間が生み出した廃棄物問題は、人間によってしか解決できないもの。この巨大な問題に対して、世界中の誰もが取り組める方法を考えた時、オープンソースで情報をシェアするのが、一番スピーディーで効果的だと考えたのです」

ウェブサイトでは、説明書やデータ、ラベルなどを含むキットをダウンロードできるほか、ステップごとのビデオインストラクションで、作り方をわかりやすく学ぶことができます。

プラスチック寸断機を作るためのビデオ。ハッケンスさん自身が出演し、ユーモア満載でわかりやすい

オンラインマップでは、どこで誰が機械を作って活動しているか、これからやってみたい人がどこにいるかなど、さまざまな登録ユーザーを検索できます。現在世界で約500人が機械や工房を稼働しているほか、約6000人がプロジェクトをスタートしたいと手を挙げ、仲間や資金、場所などを募っているそうです。

また、プレシャス・プラスチックの機械で生まれ変わったリサイクルプラスチック商品を、誰でも販売できるオンラインバザーのサイトも。ここでは、誰かが作った機械や部品も買うことができます。

こうしたさまざまな情報をオープンソースでシェアしたことで、プレシャス・プラスチックの活動は、瞬く間に世界中に広まりました。毎週、世界のどこかで新しい参加者や工房が誕生しているそうです。ハッケンスさんと二人三脚で活動するイタリア人のマッティアさんは、こう話します。

「一人の個人ができることや知識、スキルは、限られています。プラスチック廃棄物の問題はグローバルだからこそ、世界各地のさまざまな環境に暮らす人びとの、多様な視点や考え方、知識、スキルを結集する必要があるのです。オープンソースのいいところは、自分たちだけでは考えもしなかったような、クリエイティブで素晴らしいアイディアが生まれることです。プレシャス・プラスチックを立ち上げた私たちも、いつも驚かされ、インスパイアされています」

台湾のユーザーコミュニティー

日本でも、プレシャス・プラスチックを始めている工房があります。鹿児島にある一般社団法人「その辺のもので生きる」が運営する、日本最大級のファブラボ「ダイナミックラボ」。このラボは、誰でも気軽にさまざまな工作機械や工具を使って、何かを作ることができる「市民工房」です。廃材や廃物の利用、自然技術の伝承、生態系が豊かになることを目指して、運営されています。ダイナミックラボ代表のテンダーさんは、プラスチック廃棄物の問題に取り組みたいと思い、プレシャス・プラスチックに出会いました。

ダイナミックラボ代表のテンダーさん  ©ダイナミックラボ

「プレシャス・プラスチックマシーンの素晴らしいところは、理屈が必要ないところです。エコとか環境とか言わなくても、目の前でプラスチック廃棄物から新しいモノが作り出されるところを見れば、わかる。ほとんどの人が驚いた反応を示しますが、真剣に見つめた後に、自分のところでもやりたいから教えてほしいと言ってくる人も多いですね」

ダイナミックラボでは、さまざまなメンバーが参加して、プラスチ ック廃棄物からタイルを作り、販売しています。 今後は、さらにカスタネットやリコーダーなどの楽器、窓サッシ、建材などを作る計画です。全国各地から、プレシャス・プラスチックの機械を作るワークショップの依頼も来ているそうです。

ダイナミックラボで販売しているタイル  ©ダイナミックラボ

プレシャス・プラスチックは、今さらに活動を広げ、地域レベルで のリサイクル向上にも取り組んでいます。昨年からは、世界各地のさまざまなパートナーからの依頼を受け、自らのチームを現地に派遣して、リサイクルシステムの立ち上げを支援するプロジェクト「プレシャス・プラスチック・パイロット」もスタート。これまでに、国連や財団、環境NGOなどとともに、ケニアやバングラデシュ、モルディブ、チリなどで、プラスチックリサイクルのプロジェクトを立ち上げてきました。また2-3年以内には、現在の小規模なリサイクルマシーンや作業所のモデルだけでなく、小さな町や自治体レベルで導入できるような、少し大きい規模のシステムも開発する予定とのこと。

国連からの依頼で、ケニアでプラスチックリサイクル作業所を立ち上げた

こうした受託事業は、プレシャス・プラスチックの新たな収益モデルにもなりそうです。すべてのノウハウを無料でシェアするプレシャス・プラスチックは、メンバーの8割がボランティアでかかわり、資金のほとんどを個人や団体からの寄付金に頼っています。今後は、受託事業に加えて、毎月1ドルからの小額を寄付するパトロンプログラムなども展開しながら、ますます活動が広がっていきそうです。

パトロンプログラムを紹介するハッケンスさんのメッセージビデオ。クリエイティブで行動力のある彼の活動に、わくわくしてきます

私たちの暮らしは、プラスチック製品や包装であふれかえっています。近所のゴミ捨て場を見ても、プラスチックごみが一番多いとい っても過言ではありません。まずは、レジ袋を使わない、できるだけプラスチック包装のない商品を選ぶ、ペットボトルなど使い捨てのものは選ばないなど、プラスチック消費を減らすこと。それでも生まれたプラスチックごみは、リサイクル。ハッケンスさんは、こう話してくれました。

「私たちは、この地球で何千年もかけて生み出された石油でできたプラスチック製品を、一瞬にして捨ててしまっている。プラスチック廃棄物の問題を解決するために必要なのは、道具でも機械でもテクノロジーでもないのです。必要なのは、私たちのマインドセットを変えること。プラスチック廃棄物を、価値のある資源ととらえていくことなんです」

プレシャス・プラスチックでなら、プラスチックごみが、付加価値のある素敵なモノに生まれ変わるはず。誰でもどこでも、やってみることができる。あなたも、ぜひトライしてみませんか?

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宮原 桃子
宮原 桃子(みやはら ももこ) 地球リポーター

日本貿易振興機構(JETRO)に勤務後、フェアトレードファッション・ブランド「People Tree」にて、バングラデシュ・インド・ネパールでの衣服生産を支援する仕事に携わる。ドイツでの子育て生活を経て、帰国後は親子向けにフェアトレードを学ぶワークショップを企画する団体「フェアトレードガーデン世田谷」(本部・東京)を運営。フェアトレード絵本「ムクリのにじいろTシャツ」の筆者。現在は広島に暮らしながら、フェアトレードや環境、平和などのテーマを中心に執筆。 この社会を変えられるのは、私たち一人ひとりです!社会や世界で起きていることを「自分ごと」として感じ、考え、行動する。そんなきっかけになるような記事をお届けしたいと思います。

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