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2018.06.01 | 宮原 桃子

ベビー古着をメッセージ付きで 、次の誰かに 「気持ちのつながり」が服の廃棄を減らす!

©Hubbub Foundation

子どもって、あっという間に大きくなりますよね。次々にサイズアウトしていく子ども服、皆さんはどうしていますか? 兄弟のため に取っておく、友人の子どもやいとこなどに譲る、セカンドハンドショップやオンラインで売るなど、さまざまな選択肢があります。ただ、思い出深くて譲れずにいる服など、家に眠っている服もあります。行き場がなくて、最終的に捨てられてしまう服も多いはずです。

今、世界では、驚くほどたくさんの服が捨てられています。循環経済を推進するイギリスのエレン・マッカーサー財団によると、2015年に世界で生産された洋服の73%が、埋め立てもしくは焼却されています。洋服の廃棄を減らすには、どうしたらいいか。そんな想いから、イギリスでベビー古着を地域内で循環させるキャンペーン「ギフト・ア・バンドル(小包を贈ろう)」が始まったのです。

©Hubbub Foundation

ユニークなキャンペーンやイベントを通じて環境問題に取り組む、イギリスのハバブ財団(財団の紹介記事は、こちら)は、イギリスの家庭に約1億8000万着ものベビー古着が眠っていることに着目。昨年から母の日(英国では3月11日)に合わせて、各家庭に眠っているベビー古着を、指定のコットンバッグに6-10着詰め、次のもらい手へのメッセージを添えて、提供してもらうキャンペーン「ギフト・ア・バンドル」を企画。

英国大手ベビー用品チェーンのマザーケア社とコラボして、同社店舗で回収し、それぞれの地域で活動するコミュニティグループや慈善団体などを通じて、必要とする家庭に配布しました。今年のキャンペーンでは、約6000の袋が回収され、約5万2000着のベビー服が、次の新しい家庭に届けられました。

©Hubbub Foundation

ハバブ財団創設者のトレウィン・レストリックさんは、こう話します。

「家庭に眠っているベビー服を、地域内で循環させることで、価値ある洋服を最大限活用し、地域内で人と人をつなぎ、廃棄物を減らすことができます。洋服の寄付をめぐっては、近年さまざまな問題が起きています。寄付された服の多くが、チャリティーを通じて発展途上国に流れ、それによって地元のアパレル産業を破壊しています。また、廃棄物処理インフラが整っていない国ぐにに、多くの廃棄物をもたらすという問題にもつながっています。

その意味で、地域内で循環させることは重要です。また、提供する側もされた側も、お互いどのような効果が生まれたかを、地域で間近に感じることができるのもいいですよね」

©Hubbub Foundation

このキャンペーンのユニークなところは、ただ服を循環させるだけ でなく、そこに人と人をつなぐメッセージタグが付けられているこ とです。タグには、こんな言葉が並びます。

「子どもたちは、本当に早く大きくなります。あなたの小さな赤ちゃんと、たくさんの素敵な思い出ができますように」

「親になれば誰だって、手助けが必要です。この服が、あなたにとって少しでも力になりますように。疲れることもあると思うけれど、どうかほほえみ続けて!」

©Hubbub Foundation

メッセージを届けたり、受け取ったりすることは、さまざまな良い効果を生み出しています。思い出深いベビー服は、セカンドハンドや行く先がわからないような寄付には出しづらくても、メッセージとともに地域の新しい赤ちゃんにバトンタッチできることで、 手放しやすくなります。また、メッセージを添えて個人的な贈り物になることで、より品質や状態の良い服が寄付されるそうです。

大きな反響を呼んだこのキャンペーンは、今後も継続する方向で進められています。また、それぞれの地域やコミュニティで、こうした仕組みを独自に作る動きもサポートしていくそうです。ハバブ財団では、この他にも洋服の廃棄問題の解決に向けて、アップサイクルの提案や、消費をあおるブラックフライデーに代わる「ブライトフライデー」キャンペーンなど、さまざまな取り組みを展開しています。

©Hubbub Foundation ハバブ財団創設者のトレウィン・レストリック氏

「感情的な愛着のある服を、人は簡単に捨てられないものです」と、レストリックさん。確かに、おばあちゃんや母が手作りしてくれ たセーターや服は、簡単には捨てられないし、長く大事に着て、受け継いでいきます。友人がプレゼントしてくれた服も、同じです。それは、そこに「気持ちのつながり」があるからではないでしょうか。このキャンペーンで人から人へと託されたベビー服も、きっと大切にされるでしょう。

今、深刻化する服の廃棄問題の背景には、安くて商品回転の速いファストファッションの存在があります。15年前に比べると、洋服1枚あたりの着用回数は36%も減っているそうです。使い捨てるように服を消費する。そこには、作ってくれた人や作られた環境への「気持ちのつながり」が見えません。自分の家族や友人が作ってくれたものを大切にするのと同じに、バングラデシュや中国などの縫製工場で作っている人たちのことを知り、想像することができれば、きっと私たちが選ぶものは変わり、そして1枚の服を大切に着られるはず。

「ギフト・ア・バンドル」キャンペーンは、そんなシンプルな「気持ちのつながり」の大切さを、改めて気づかせてくれます。日本でも、エピソードやメッセージ付きの古着交換会「xChange」などの取り組みがあります。私たちの暮らす地域でも、気持ちとモノを循環させる仕組みを作っていきたいですね。

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宮原 桃子
宮原 桃子(みやはら ももこ) 地球リポーター

日本貿易振興機構(JETRO)に勤務後、フェアトレードファッション・ブランド「People Tree」にて、バングラデシュ・インド・ネパールにおける生産管理に従事。現在は、企業のサステナビリティ推進を支援する「 エコネットワークス」に、コンテンツプロジェクトマネージャーとして参画。ライフワークとして、フェアトレード絵本「ムクリのにじいろTシャツ」を制作したほか、親子向けにフェアトレードを学ぶワークショップを企画する「フェアトレードガーデン世田谷」(本部・東京)の運営に携わる。社会や世界で起きていることを「自分ごと」として感じ、考え、行動する。そんなきっかけになるような記事をお届けしたいと思います。

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