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投票ごみ箱!?
イギリスの「大騒ぎ財団」が、面白く楽しく社会を変える!

2017.07.12 宮原 桃子

©Hubbub Foundation

最近はずいぶん減りましたが、まだまだ見かけるポイ捨てタバコ。 もし街中にこんな灰皿があったら、どうでしょう? タバコを入れる2つの穴の上に、「どっちのチームが一番? バルセロナかレアル・マドリード」と書かれた「投票ごみ箱」です。思わず、自分がいいなと思ったほうにタバコを入れてみる=タバコをきちんとごみ箱に捨てる、という結果になるわけです。結果もさることながら、地域やコミュニティでユニークなゴミ箱が話題になることで、タバコのポイ捨てについて考えるきっかけになります。

これは、イギリスの環境保全団体「Hubbub Foundation(ハバブ財団)」のポイ捨て削減キャンペーンで企画されたものです。この「投票ごみ箱」を設置したロンドンのサットン地区では、ポイ捨てタバコの量が46%も削減されたそうです。投票ごみ箱は、英国内だけでなく世界中から注目され、導入したいとの声が寄せられたため、初年度だけで21カ国で約560個も販売されました。アメリカでも、5都市でテスト導入され、今後全国展開も検討されているそうです。


特にタバコのポイ捨てが多い若者が、どうしたら灰皿に捨てるようになるか? 投票ごみ箱のコンセプトや実例を紹介する映像

ハバブ財団は、直訳すると「大騒ぎ財団」というユーモラスな名前。 私たちの日々の暮らしと密接につながっている社会や環境の問題を、人びとに考えて行動してもらうために、遊び心のあるキャンペーンを数々展開しています。これまでに展開されたキャンペーンをいくつかご紹介しましょう。

イギリス南西部にあるディーンの森では、毎年250トンも捨てられるごみを減らす「LoveYourForest(森を愛そう)」キャンペーンを展開。「誰かに見られているとごみは捨てづらい」という視点から着想を得て、森でよくごみが捨てられる15カ所で 、木々に面白おかしい50個もの「顔」をつけ、「コミュニツリー(Communitrees)」と命名。コミュニツリーを巡るマップも作成して、人びとの関心を喚起しました。その結果、7カ所で30%のごみ削減につながりました。

communitrees.png

©Hubbub Foundation

また、森で拾ったゴミを、ホットドリンクやポップコーン、 野草の種などと交換できる「ごみ交換トラック(Trash Converter Van)」を設置。最初の2週間だけで2000リットル分のゴミを回収しました。この他、イギリス初の「ごみショップ」を開店し、 森で集められたごみを陳列するという面白い試みも。80年代のお菓子の袋や飲料水ボトルも発掘され、「ビンテージコレクション」として紹介するなどユーモアにあふれ、店は訪れる人でにぎわいました。

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©Hubbub Foundation
ポップなデザインのごみ交換トラック


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©Hubbub Foundation
まるで商品のようにごみが並ぶ「ごみショップ」


また食品ロス問題への取り組みとして、それぞれの家で余った食材を自由に置いたりもらったりできる「コミュニティ冷蔵庫」を設置。 設置したダービーシャー州スワドリンコートの町では、最初の半年で9000個の食材(2トン相当)が冷蔵庫を通じて交換されたそうです。

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©Hubbub Foundation
「コミュニティ冷蔵庫」に、余ったり使わなくなったりした食材を持ち込む住民


ハバブ財団は、斬新なデザインやアプローチによって、普段その問題を考えたことがなかったり、関心がなかったりする層も巻き込んで、地域にインパクトを与えています。あらゆる社会問題への取り組みで大きな鍵となるのは、「知っているだけでなく、実際行動する人を増やせるかどうか」です。これについてハバブ財団の創始者トレウィン・レストリック氏はこう語ります。

「人は考えていることと、 実際行動することの間に確かに溝があります。ですから、できるだけ身近で関心の高いテーマ(食べ物やファッション、 家庭、地域など)に焦点を当て、人びとが誰かに伝えたくなるような面白い企画を心がけています。 それによって、人びとがそのテーマについてお互い話をするようになり、日々の暮らし方や行動が変わるきっかけにもなります。また、シンプルで簡単にできるアクションを提案するようにし、大きなムーブメントやグループの一部としてアクションできる仕掛 けにすることで、人びとが参加しやすくなります」

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ハバブ財団創始者のトレウィン・レストリック氏

こうしたキャンペーンが単発で一過性のものに終わるのでなく、地域やコミュニティに根付いて、持続していくかことも大切です。 ハバブ財団では、キャンペーンが終わった後も、ハロウィーンやクリスマスなど年間行事などにあわせて、定期的にイベントを企画したり、フェイスブックなどのSNSでコミュニティを作ったりして、地域で継続するような仕掛けを作っています。また、他の地域でも応用できるように、テーマにあわせて「インスピレーション・ガイド」と呼ばれるガイドブックを作成しています。

また、より大きな社会的インパクトをもたらすべく、企業との連携も深めています。以前地球ニュースでもご紹介したコーヒーカップリサイクルプロジェクトには、大手コーヒーチェーン各社やロイズ、デロイトなど大手企業を含む36社が参加。どの店舗のコーヒーカップでも回収する巨大なごみ箱をロンドン中心部に設置し、1カ月で50万個のリサイクルに成功しました。そ の他「コミュニティ冷蔵庫」では大手スーパーのセインズベリーと組んだり、インテリアショップのイケアと共同でサステナブルなライフスタイルを提案するプロジェクトも手掛けたりしています。ただ、こうしたプロジェクトでは、「人の意識や行動が変わるには時間がかかる一方で、企業は短期間で具体的な成果を求めるという難しさもある」とレストリック氏は語ります。プロジェクトの長期・短期の効果をしっかりモニターしながら、コミュニティそして企業のニーズをうまく合わせていくよう取り組んでいます。

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©Hubbub Foundation
企業が多く参加したコーヒーカップリサイクルのプロジェクト。 ロンドン中心部に約130個の回収箱が設置された


あらゆる社会問題は、誰かが解決してくれるわけではなく、一人ひとりの市民が動かなければ、最終的には解決しません。 面白いデザインと発想で、興味がある人もない人も、さまざまな人を巻き込んで、地域に根付かせていくハバブ財団。その活動は、社会の問題に取り組むさまざまな団体や企業、行政にとって、参考になりそうですね。



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宮原 桃子