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「あったかいデジタル」で壁を取り払え!
多様な人が地域でつながるアプリ「ためまっぷ」

2017.06.16 宮原 桃子

住民発信型の地域情報アプリ「ためまっぷ」
©ためま株式会社

どこへ行こうかな、何をしようかなと思った時、 皆さんはどうやって情報を集めますか?

レストランならグルメ情報サイト、 観光やイベントならおでかけ情報サイト、ファミリーだったら子育て情報サイトなど、 今はあらゆる情報検索ツールがあります。しかし、自分が暮らす街という小さなエリアのイベントや集まりを探そうとすると、公共施設に置いてあるチラシや街の掲示板、 自治体や主催団体のホームページなど、思いのほか限られています。 それぞれの場所へ行ってチラシをもらったり、 ネットで情報を細かく検索したりすることは、いつでも誰でもできるわけではありません。忙しい、子育てや介護で手一杯、高齢で行動範囲が限られている、どのページを見ればいいかわからないなどさまざまな理由で、 地域の情報がなかなか簡単に手に入らないことがあります。

公共施設などに置かれるたくさんのイベント情報チラシ

こうした地元のさまざまなイベント情報を、 一度に簡単に検索できるスマホアプリが、今注目を集めています。 広島県で2014年に始まった地域情報アプリ「ためまっぷ」は、「みんなのまちの掲示板」がコンセプト。「ためまっぷ」という名前は、自分のため、子どものため、誰かのため...など、みんなの「ため」の情報を共有することに由来しています。 地図上で自宅から半径500メートルから5キロ圏内のイベントを検索できるほか、ジャンルや日にちでも検索ができます。また、地域でイベントを開催したい人は、いつでも誰でも簡単に情報を投稿することができます。 このような「住民発信型」の地域情報アプリは、 全国的にあまり例がなく、新しい取り組みと言えます。


地域情報を簡単に検索できるようにすることで、地域に賑わいと人のつながりを生む
©ためま株式会社


ためまっぷが生まれた背景には、 地域で多様な人がつながってほしいという熱い想いがあります。 プロジェクト発起人である清水義弘さんは、 元々システムエンジニアで、 子育てや引っ越しなどさまざまな場面で生まれる地域での孤立を目にし、 地域のつながりをもっと生み出したいとプロジェクトを立ち上げま した。清水さんと二人三脚で運営を支える和田菜水子(なみこ)さんは、前職は社会福祉協議会の職員で、 広島で起きた土砂災害後の生活支援に携わっていました。 その中で、地域のつながり・支えあいが、 いかに大切かを痛感したそうです。しかし現実は、 地域のなかで世代や職種、住んでいる場所、 生活スタイルなどさまざまな要素によって、 人びとの間にはボーダー(壁)ができています。

和田さんは言います。「あらゆるボーダーを取りのぞきたい。 多様な人がつながることで、何かが生まれる。 決まりきった結果ではなくて、何か面白いことが生まれ、 地域が盛り上がっていく。ためまっぷは、 人と人とをあたたかくつなぐ"あったかいデジタル"なんです」

ためまっぷの広報・和田菜水子(なみこ)さん。 チャーミングな人柄と信念のある姿勢で、 周りの人びとを巻き込む

ためまっぷは、多様な世代を巻き込むという視点から、 地域で孤立しがちなお年寄りにも使いやすい工夫や仕掛けをしています。タッチだけで検索できたり、チラシをそのまま投稿・ 閲覧できたりすることで文字入力の手間を省き、シンプルで見やすい画面にしています。また、毎月地域の公民館などで高齢者向けのスマホ講座を開催し、使い方を丁寧に説明しながら、ためまっぷの紹介も行っています。 高齢者の方々の関心は高く、今月開催された広島県廿日市(はつかいち)市でのスマホ講座では、募集の3倍もの応募があったそうです。会場には、60-70代の参加者が集まり、 皆さん熱意に溢(あふ)れていました。60代の女性は「暮らしのほとんどを地域のなかで過ごしているけれど、地元のイベント情報は近所の公民館などで手にするくらい。 ためまっぷのように、地域の情報が簡単に見られるアプリは、とてもいいと思う」と話していました。

高齢者向けのスマホ講座(広島県廿日市市の阿品台市民センターにて)

60代~70代の参加者は、とても熱心に耳を傾けていた

ためまっぷアプリは、これまで約6000回ダウンロードされ、3万2000件以上のイベントが投稿されています。また、自治体や企業とのコラボも進んでおり、 昨年夏は呉広域商工会青年部が、ためまっぷを活用して、とびしま海道の観光振興キャンペーンを展開。 今年度は、コープこうべ(神戸市)が組合員向けに地域情報を提供するツールとして、ためまっぷを採用予定。また、セブン銀行とのコラボ事業も決まっており、全国的な広がりを見せそうです。全国どこへ行っても一つのプラットフォームで使えるアプリを目指して、特許も出願しています。ためまっぷは、その社会貢献活動が高く評価され、昨年度ひろしま県民活動賞において広島県知事賞を受賞。 さらに広報の和田さんは、日本青年会議所が主催する「人間力大賞」の広島ブロックでグランプリを受賞し、6月23日に開催される全国大会に挑みます。

一般社団法人シルバーサービス振興会とも包括提携。右端が、ためまっぷ発起人の清水義弘さん
©ためま株式会社


今の時代は、インターネットやSNSなどで、自分の興味や考えにあわせて、ピンポイントで情報を集めることができます。とても便利ではありますが、情報が細分化していることは、異なる志向や世代の人が交わらない、多様な人のつながりが生まれづらい状況も生んでいるように思います。地域という切り口であらゆる情報が目に入ることで、例えば「この会は、うちのおばあちゃんが興味あるかもしれない」と祖母に連絡してみる、「これは大人向けの音楽会だけど、うちの子どもは好きそうだな」と参加してみるなど、さまざまな切り口で多様な人が交わるきっかけができるかもしれません。

また、自分が暮らす地域でつながりが生まれることは、災害時だけでなく、日常においてもお互いを助け合い、見守りあうという温かい関係ができ、 安全で暮らしやすいコミュニティが増えていくでしょう。

色々なボーダーを取りはらって、地域で新しい人のつながりを生むためまっぷは、これからどの地域でも必要とされるツールではないでしょうか。



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宮原 桃子