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2024.06.24 | ささ とも

障がいのある人たちに雇用と笑顔を フランス発のインクルーシブなカフェがNYに上陸

アメリカには800万人以上の知的障がいや発達障がいのある人がいて、そのうち約20%しか職に就けていません。障がいのある人が有給で働ける場をつくる。そうしたミッションを掲げ、カフェ・ジョワイユは3月21日の「世界ダウン症の日」に合わせて、ニューヨークでアメリカ1号店を開店しました。

カフェ・ジョワイユはフランスのブルターニュ地方レンヌで2017年に最初の店をオープンして以来、パリやリヨン、そしてブリュッセルやリスボンなど、ヨーロッパ中の都市に広がりました。今では20数店舗にまで増え、180人以上のダウン症や発達障がいをもつ人が働いています。そしてついにこの春、アメリカ大陸に上陸しました。

障がいのある人が働いている店と聞くとどんなカフェを想像しますか? カフェ・ジョワイユは非営利団体が運営していますが、従来のような障がい者に強いられる不安定な雇用形態、低賃金、皿洗いや掃除などのバックヤードの仕事といった雇用の場ではありません。ここでは障がい者が正社員で雇用され、レジや接客の仕事を任され、サポートする健常者と分け隔てなく働ける場になっています。そしてカフェの利益はすべて障がい者の雇用や職業訓練に再投資されます。

カフェのデザインは、フランス人インテリアデザイナーでインテリアブランド「Maison Sarah Lavoine」の創設者サラ・ポニャトフスキさんが手がけました。ニューヨークのマンハッタンにオープンした店は、黄色を基調としたポップなデザインで、障がいのある人が働きやすいように工夫されていたり、壁には従業員の写真が並んでいたりと、働く人にも利用する人にも親しみやすく居心地のいい空間になっています。

温かみのある黄色を基調とした店内。デザインを手がけたのはフランス人インテリアデザイナー、サラ・ポニャトフスキさん

グルメメニューは季節に合わせた材料を用いて、すべて店内で調理されます。コーヒー豆はフリートレードの100%アラビカ種を使用し、焙煎も店で行うというこだわりよう。コーヒー豆はオンラインでも購入でき、店に行けない人でもこの活動をサポートすることができます。

こだわりのコーヒー豆はフリートレードの100%アラビカ種

カフェ・ジョワイユはオシャレでハッピーにインクルージョンを広める活動ですが、ここ日本ではどんな取り組みが進められているのでしょうか。日本には障がいのある人の雇用を進める法律「障害者雇用推進法」が施行されています。たとえば一定数以上の従業員のいる民間企業では、障がいのある従業員の割合を全体の2.3%を満たすことが義務づけられています。令和5年度では実雇用率が2.33%で前年と比べて0.08ポイント上昇し、雇用者数は約64万人に達していて前年より4.6%増えています(*1)。この数字だけで単純に楽観視できるわけではありませんが、職場や学校で、障がいのある人もない人も一緒に働いたり学んだりすることが当たり前の社会に一歩ずつ近づいていると考えるとうれしいかぎりです。

カフェ・ジョワイユ(Café Joyeux)のJoyeuxはフランス語で「喜び」を意味します。わたしの家の近所にも障がい者施設の運営するカフェがあって、障がいのある店員さんが注文をとったり、料理を運んできてくれたりします。飲食店が近くに少ないのでランチに来る人も多いようです。

喜びとインクルージョン精神のあふれるカフェ。みなさんの街で見つけたら、足を運んでみてはいかがでしょうか。

*1:厚生労働省「令和5年 障がい者雇用状況の集計結果」

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ささ とも
ささ とも(ささ とも) 地球リポーター

神奈川県在住。翻訳者、ライター。 2010年からThink the Earthのリポーターとして世界の持続可能な取り組みのニュースを発信。気候変動、エネルギー、生態系など幅広い分野で世界の動きを追っていきます。翻訳書『ポストキャピタリズム:資本主義以後の世界』(東洋経済新報社)など。

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