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銭湯ライブに見るまちづくりのヒント

2013.06.17 高橋 彩

LIVE IN 松の湯で演奏する仰木亮彦&ザ・フードクラブバンド photo by Aya Takahashi

「地元で、地元の人たちと何か面白いことがしたい」と企画された「LIVE IN 松の湯」。「松の湯」は東京・北区田端のビル2階にある昔ながらの公衆浴場。住民の憩いの場として今でも広く親しまれていますが、現在は年一度、なんとライブ会場にも使われています。LIVE IN 松の湯では、毎年異なるテーマでバンド演奏が披露され、ちょっとした飲み物や食べ物もふるまわれます。第7回目となる今年のテーマは「男祭り」。もちろん女性も参加・入場することができます。当日はあいにくの雨でしたが、100人以上の観客で会場はにぎわっていました。

このイベントを企画したのは、松の湯界隈でギャラリーカフェを営む女性。カフェでは常設展のほかに、子どもから大人まで楽しめるイベントを定期的に企画しています。地域の人々と肩ひじ張らずに交流し、面白いと思ったアイデアを形にできる、彼女の行動力が地域の活性化にも一役買っているのでしょう。

6月10日午後7時。開始30分前でしたが、銭湯の入り口には、すでに人が集まってきていました。驚いたのは、子どもからお年寄りまで、お客さんの年齢層が幅広いこと。近所に住んでいる人だけでなく、この商店街の雰囲気にひかれて、普段からこのまちを訪れている人も多いように感じました。

さっそく入り口ののれんをくぐり、番台でお代を支払います。ライブ会場となっている女湯の脱衣所には、楽器や照明が設置され、すでに座るところがないほどお客さんでいっぱいでした。女湯に通され、洗い場で使われている黄色いプラスチックイスに腰掛けて演奏が始まるのを待ちます。下町情緒あふれる銭湯の雰囲気と、老若男女が入り混じって服を着たまま洗い場に腰掛けている、普段の銭湯では味わえないわくわく感を共有しているからなのか、不思議と隣に座っているまったく知らない人ともすぐに打ち解けてしまいました。バンドが奏でる音も、銭湯の天井に心地よく響いて、会場の雰囲気をいっそう盛り上げてくれます。いつの間にか、自分がお風呂で気持ち良く歌っているような気分で演奏を聴いていました。

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洗い場からステージをのぞく。銭湯ライブならではのユニークな構図です photo by Aya Takahasi


銭湯でライブと聞き、「どこで演奏するのか?」「観客はどうやって聴くのか?」「なぜ銭湯なのか?」と、とにかく様々な好奇心をそそられたイベントでしたが、「リラックス」という共通点のある銭湯と音楽をひとつの場所で楽しむことは、とても自然なことのように感じました。ライブで初めて訪れた人は、普段はどんな場所なのかと改めて訪れてみたくなり、銭湯として利用している人には、ライブ会場としての新しい魅力を発見するきっかけになる。そして、子どもからお年寄りまで馴染みのある場所だからこそ、会話が生まれ、交流も深まっていく。まちづくりのヒントは、そんな身近な場所にこそあるのかもしれません。



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高橋 彩