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Art & Design

モノづくりは個人へシフト
ブランドはデザインの「データ」を売る時代

2015.10.08 岩井 光子

女性の頭上に掲げられているのは、「Download EP01」のスニーカー用アクセサリー。3Dプリンターで出力する際の素材には生分解性プラスチックなどが薦められている © Honest by.

アパレルの世界に革命を起こしていると言われる3Dプリンター。これまでにない素材感や造形を試みた樹脂やナイロンのドレスなど、プロデザイナーの野心的な作品を見かけることも多くなりました。グローバルブランド同士のし烈な拡大競争が引き起こす搾取や環境汚染が深刻な社会問題となっている今、「エシカル」の視点から見ても、ロスが出ず、少量生産が適した3Dプリンターは未来のエシカルファッションに欠かせないキーワードになると言われています。

いずれは服のデータを購入して家庭の3Dプリンターで出力する時代が来る―とは言われていますが、そんな近未来型のお買いものをいち早く実現させてしまったのが、ベルギー・アントワープに本社を置く「Honest by.」。スペインのベンチャー企業Comme des machinesとのコラボで今年6月にリリースした「Download EP01」は、シューズの靴ひもに通すチャームやブローチ、キーホルダーといった9種のカジュアルなアクセサリーライン。顧客は気に入ったデザインのデータをダウンロードして購入し、自前の3Dプリンターで製造して完成品を手にする、というわけです。

Honest by.CEOのBruno Pieters(右)。一番人気の自転車用プレート(左)。「Download EP01」のチャレンジは、まさに業界のレボリューション © Honest by.

Honest by.はドイツの「HUGO BOSS」など数々のラグジュアリーブランドを経て独立したBruno Pietersが3年前に立ち上げたブランドで、柱に据えたのは100%の「透明性」。服の素材についてはもちろん、布のカッティングや縫製の各工程にかかった時間、製作費の詳細から卸し先への掛け率まで、生産工程を包み隠さず「見える化」させる姿勢を徹底しています。服作りにかける誠実さ、正直さをブランド名にも反映させたBruno Pietersが、未来のファッションへの扉を開くツールだと確信したのが3Dプリンターでした。クリエイターと顧客を直接つなぐ3Dプリンターの出現で、その中間にあった搾取や環境汚染、輸送コスト、商品ロスなど数々の問題は一気に飛び越えることができます。透明性を確保するという意味ではまさに画期的なソリューションです。

顧客からの反応は「想像以上」とのことですが、Honest by.アシスタントデザイナーのVirginia Visanさんは、「一般の人は(3Dプリンターのような)新しいテクノロジーを現実のファッションに適用することにまだそれほど慣れていない」とも話します。サイトにはプリントの際の手順や諸注意が事細かに記されていて、実験的なショッピングスタイルを顧客と一緒に作り上げていこうとする姿勢が感じられます。顧客はこれまでのところ、20歳から35歳の若い世代が大半だそう。「今後、市場の反応を見ながら商品の幅も広げていきたい」とVisanさん。デザインデータを売るという業界初の試みが、今後どのような展開を見せるのか、とても楽しみです。



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ベルギー (ヨーロッパ/ロシア

岩井 光子