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アジアの夏が暑いのは、古来、太陽がたくさんあったから?

2012.08.08 岩井 光子

Sun and Sunspots:Creative Commons,Some Rights Reserved,Photo by
MarkGregory007
 

暦の上では立秋を迎えましたが、例年通り、まだまだ暑い日は続きそうです。昔からこんなに暑かったのだろうか? そんな話がよく出ますが、実は東南アジア各国に「太陽は複数あった」という筋書きの昔話がそろって語り継がれています。照りつける日差しの強さに、とても空の太陽がひとつだとは感じられなかった古来の人々の実感が伝わってきて、いずれも興味深いストーリーです。

インドネシア、スマトラ島西のムンタワイ諸島に伝わるのは、太陽にはたくさんの子どもがいて、昔の日中は今よりもずっと暑かったという話。暑くてどうしようもないので月がココナツの皮を食べて唇をピンク色に染め、「自分の子どもたちである星を食べたらすごく美味しかった」と嘘を太陽に話します。真に受けた太陽が子どもを食べ尽くし、今では暑い午後も仕事ができるようになった、と物語は締めくくられます。また中国では、その昔、10個の太陽がそろって空に昇り、強烈な熱が干ばつを引き起こしていたが、弓の名手・羿(げい)が9つを射落とし、1つだけ太陽が残ったという著名な射日(しゃじつ)神話が伝わっています。台湾の原住民・タイヤル族の神話にも、昼夜の区別なく交互に昇る2つの太陽を射落とすのに奮闘した3人の若者が登場します。モンゴルにも7つの太陽が昇り、人も馬も熱と渇きにあえいでいたという話があります。

これらの太陽にまつわる話は世界天文年2009日本委員会主催の「アジアの星の神話・伝説プロジェクト」で集められたものです。今年中には各国の描き手による美しいイラストを入れた本が万葉舎より出版される予定です。本には太陽や月のほか、プレアデス星団(すばる)や金星といった星座や惑星を題材にした13の国と地域の68の星物語が掲載されます。月にすむのは日本ではウサギと言われますが、アイヌでは連れ去られた子ども、ベトナムでは魔法の木と一緒に飛んでいった若者だったり、あるいは南の島ではヒョウタンを抱えた女性だったりと様々。七夕伝説も大筋は似ていても、日本や中国、ベトナムなど各国で多少異なることもわかります。

ギリシャ・ローマ神話が広く知られていて、アジアの豊かな星物語がほとんど知られていないのはもったいないと、国立天文台名誉教授の天文学者・海部宣男さんがアジア各国の天文学者やプラネタリウムの運営者らに広く声をかけ、実現したこの企画。私たちの先祖が語り継いできた星物語を通して、古来の宇宙観やアジアの国同士のつながり、また、当時の人々の暮らしぶりやじりじりとした夏の暑さまでも感じとることができるのです。



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