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Biodiversity

世界最北のライチョウが教える日本の生物多様性

2010.10.03 岩井 光子

Afternoon stroll:Creative Commons,Some Rights Reserved,Photo by Wen Nag (aliasgrace)

ニホンイノシシやホンドタヌキを始めとする在来動物を多く飼育している富山県の「富山市ファミリーパーク」(山本茂行園長)。見せ物としての動物よりも、共に暮らす仲間としての動物を考えさせてくれる、貴重な動物園です。

3月、同園の新たな仲間に加わったのがスバーバルライチョウ。北極圏内のノルウェー領スバーバル諸島に生息する、地球上で最も北にすむライチョウです。8月にはヒナがふ化し、うち19羽が順調に育っています。

山本園長は今夏、そのスバーバル諸島を訪れました。そもそもスバーバルライチョウの飼育を始めたのも、富山の北アルプスなどにすむ特別天然記念物・ニホンライチョウの今後を考えるためでした。

寒さに強いライチョウは23亜種のうち、ほとんどが北極周辺をすみかとしており、ニホンライチョウは地球上で最南端にすむ特別な種。世界が陸続きだった2万年前の氷河期に日本にやってきて高山にすみついたと言われています。

身を隠す樹木もない、永久凍土に覆われた地。山本さんが見たスバーバルライチョウは、U字谷の絶壁から崩れ落ちて堆積した礫(れき)でできた斜面に生える、わずかな草をついばんで生き抜いていました。

翻って「日本のライチョウは、なんとぜいたくで豊かな場所にすんでいるのか」と山本さん。身を隠す樹木も、えさも、冬の生活場所も整っている。「日本の自然環境は狭い割に複雑」。その複雑さこそがニホンライチョウを生き延びさせた、と山本さんは分析します。

トキの二の舞にならぬようにと、人工繁殖の研究も進める同園。狭く複雑な環境は、わずかな変化にも大きな打撃を受けます。日本の生物多様性は環境と人間、そして動物、互いの微妙なバランスによって成り立っていることを改めて実感させられます。



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岩井 光子