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若者が集う島「海士町」から見える日本の未来像

2014.09.23 大野 多恵子

「巡の環」の阿部裕志さん(右)と信岡良亮さん 写真提供:巡の環

今、日本でもっとも注目される島のひとつ「海士町(あまちょう)」。島根県の北60キロ、日本海に浮かぶ隠岐諸島の小さなこの島に、現在多くの若者が訪れ、過去10年間で400人を超える定住者いわゆるIターンが増えています。人口約2,300人、そのうち4割は65歳以上という超少子高齢化社会、最寄りのコンビニまでは5時間というこの島に惹(ひ)かれてやってくるのは、なぜでしょう?

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海、山の自然に恵まれた海士町


7年前に、やはりこの島に惹かれ、他県から移住した阿部裕志さんと信岡良亮さんは、「巡の環」(めぐりのわ)という会社を設立し、島と都会の架け橋となるべく事業を展開しています。そのひとつである海士の食材を使った料理を通した交流イベント「AMAカフェ」が、8月31日に、東京都江東区の武蔵野大学の構内で行われました。島へ行ったことがある人、これから島へ行ってみたい人、島の暮らしに興味のある人たちが集まり、特産品のサザエ、有機肥料のみで作られたアイガモコシヒカリで作ったおにぎりや野菜料理など、海士ならではの味を堪能しながら、阿部さん、信岡さんのトークショー「これまで、そしてこれからの想い」に耳を傾けました。

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東京で行われたAMAカフェにてトークショー


2人は、もともとそれぞれ自動車メーカー、Web制作のベンチャー企業で働いていたサラリーマン。海士には、きれいな海、豊かな土壌、昔ながらの自然が残る日本の原風景があり、人とのつながりにも恵まれた場所で、地域に溶け込んでいきました。「持続可能な新しい生き方を学ぶ学校づくり」を目的とした「巡の環」の活動の軸は3つ。地域に根差したイベントの運営や補助を行う「地域づくり事業」、島外の人たちが海士町の島まるごとから学ぶ「教育事業」、AMAカフェのほか、海士Webデパートでの特産品販売などで地域を伝える「メディア事業」です。

教育事業の中の「めぐりカレッジ」では、各地で地域づくりにかかわる人たちを対象に、課題を解決するための、とかいセンスといなかセンスのバイリンガルとして「地域コーディネーター」を養成することが目的です。また、「海士五感塾」では、人材育成や、働きがいを追求したい人を対象に、仕事力の向上の元となる「人間力」を磨いていくことを目的とし、既にイオンやサントリーの労働組合をはじめとする多くの人や大手企業が島を訪れています。

阿部さんは「海士町には、超少子高齢化、財政難など日本が将来抱えるだろう重要課題が凝縮されています。ここでの課題解決が、日本全体の持続可能な未来をつくるモデルになれば、今後日本全体を、また世界をも引っぱっていく力になるのではないかと思っています」と話しています。

信岡さんは、この夏から拠点を東京に移して、都市と島とのつながりをめざした「島の大使館」として、カフェを拠点とした活動を始めることになりました。それぞれのポジションでのまた新たなステージですが、共通の想いは「意志ある未来」「持続可能な未来」。現代の日本社会で、ものを大量に消費することが、はたして本当の豊かさなのかどうか? そんな思いを抱く人が増えるほどに、新しいモデルとしての生き方にますます注目が集まっていくのでしょう。



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このニュースの地域

隠岐郡、島根県 (日本

大野 多恵子