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古いLANケーブルも鉄クズも宝の山
産業廃棄物の「捨て方」をデザインする

2015.08.14 岩井 光子

アクリル端材などの「産廃」も視点を変えれば、こんな楽しい工作の材料に!(伊香保のハラミュージアムアークで)

日本の産業廃棄物のうち、ペットボトルやガラス瓶、プラスチック、発泡スチロール、紙くず、粗大ごみなどといった、私たちの生活に関連の深い資源ごみは2700万トンほどだと言います。私たちは日頃、こういった資源ごみを指定の回収日に収集場所に出すと、「あぁ、ひと仕事終えた」と感じてしまうのではないでしょうか。処理業者に運ばれ、さらに分別・解体が行われる次のステージは、多くの人にとって、きっと想像することもあまりない、未知の世界です。

多品目に渡る産業廃棄物を一括回収し、リユースをあっ旋したり、リサイクル原料や燃料として再生させるための分別・解体処理を行う中間処理業者・ナカダイ(群馬県前橋市)では、こうした資源ごみが処理されていく様子を、工場見学を通して広く一般に「公開」しています。例えば、発泡スチロールは減容機と呼ばれる専用機で中に含まれた空気を除去して棒状に固めます。プラスチックは素材別に粉砕し、再生できるようペレット状に、鉄くずやアルミ缶、自転車などはプレスと呼ばれる巨大な圧縮機で四角く、固められます。場内には毎日50トンものごみが運び込まれるそうですが、ダイナミックな機械が粛々と進める処理作業は私たちの目にはとても新鮮に映ります。


四角く圧縮された金属。左から自転車、アルミ缶、鉄くず


運び込まれた廃棄物のリユース・リサイクル率が99%を超えるナカダイでは、ごみを最終的なステージである適正処分や埋め立てに、そう簡単には引き渡しません。排出企業へのコンサルティングを行ったりしながら、一度ごみと判断されたモノを延命させる、つまり「捨てるまでの流れをデザインする」活動に力を入れています。ナカダイが品川と前橋に構えるショールーム「モノ:ファクトリー」では、スタッフが見立てた解体部品やマテリアルを中心に、車輪や信号機までが、どれも立派な素材としてきれいに並べられています。来場者はデザイナーやアーティスト、商業施設の職員、テレビの大道具担当者などデザインやアートの領域にかかわる人が目立つと聞きましたが、特定の素材を買い求めにくるというより、ここで素材をいじりながら湧いてくるアイデアやインスピレーションを期待してくるのだそう。「モノ:ファクトリー」が私たちのごみとの向き合い方を大きく変える試みであることがよくわかるエピソードです。


7月にオープンしたばかりの前橋本社工場の「モノ:ファクトリー」(見学は予約制)。各素材には、もともと何の部品であったかを記した「プロフィール」がつけられていて、それを読んで回るだけでも楽しい


子ども用のレジャープールに使われている赤い部品はよくよく見ると、台所洗剤のキャップ!(左上)。パソコンのキーボード部分のみをきれいに取り外したもの(右上)。ボタン電池の絶縁シート(左下)。色とりどりのLANケーブル。最近吉祥寺の焼き鳥店の内装に使われ話題に


ごみの分別・解体を担う産廃業者は、製品を供給する企業に対し「静脈産業」などと呼ばれることもありますが、処理した素材をもう一度モノ作りの流れにのせたり、会社の引っ越しや店じまい、年度末などを契機に出る大量の中古設備資材などのニーズをマッチングさせていく取り組みを、ナカダイは「リマーケティングビジネス」と呼んでいます。要らなくなったモノはごみだと思えばごみになってしまいますが、リユースやリサイクルに関心の高い人たちへ上手に橋渡しすることで、世の中の廃棄物がこれまでとは違う新しい水路に流れ込むことができるのです。

夏休みも中盤に差し掛かった今、ナカダイのスタッフと一緒に工作やパソコンの解体作業など様々なワークショップを楽しむことができる「ナカダイ伊香保工場」が伊香保のハラミュージアムアークで16日まで開かれています。100種近い素材をそろえた期間限定のマテリアルショップがオープンしているほか、アンティークシャンデリアの部品を使ったペンダントトップ、車のスピードメーターカバーを作る際に出るアクリル端材(アクリルだんご)の色付け、LANケーブルを使ったコースター作りなど、工作はどれも子どもの夏休みの宿題に良さそうです。ナカダイの世界観をぜひ一度体感してみてください。



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群馬、日本 (日本

岩井 光子