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今月のレコメンド:地球の中、まるごと見せます!
『アンダーアース・アンダーウォーター』

2017.04.22 岩井 光子

宇宙空間がたくさんの不思議で満ちあふれているように、私たちの足元に広がる地下の世界も、実は謎だらけです。地球の中心までは6300キロメートル以上ありますが、科学者たちが北極圏に掘った世界で一番深い穴が12キロほど。2012年に映画監督のジェームズ・キャメロンが深海探査艇ディープシー・チャレンジャー号で到達したのも水深およそ11キロ。地球の底に比べたら、人間が到達した深みなんて、まだまだこれっぽっち、なのです。

現実には険しい地中や水中への旅も、例えば、この『アンダーアース・アンダーウォーター』という絵本の世界でなら、ずんずん潜っていけます。『マップス 新・世界図絵』が世界中で300万部以上を売り上げたポーランドのミジェリンスキ夫妻による待望の最新作です。前作同様、紙芝居サイズのずしりと重い絵本は、110ページに渡る本の真ん中がちょうど地球の中心。両面共に表紙という構成で、赤い表紙からは「EARTH」(地面)の下へ、青い表紙からは「WATER」(水面)の下へ、どちらでも好きな方から潜っていくことができます。

EARTHのページをめくると、地表すぐ下のアリの巣の世界から動物たちが眠る巣穴、植物の根っこ、地中に張り巡らされた配線や配管、地下鉄、トンネル、洞窟、化石、鉱物、地球の奥深くで煮えたぎるマグマまで―。「とりあげたいテーマを片っぱしから挙げていった。それをしぼりこんで、本全体の構成を考えてから、ラフを作っていった」、ダニエル・ミジェリンスキさんはそう説明します。今作は2012年から3年の月日をかけ、日本では昨年末に発売されました。彼らの本職はグラフィックデザイナーなので、ほとんど何も知らないところから興味のフィルターに引っかかったあらゆることを一から調べまくったそうです。知らなかった事実や現象に胸踊らせながらの製作は「とても楽しかった」とダニエルさんは振り返ります。

例えば、世界で最も深いところを走る地下鉄は北朝鮮にあること。日本の地下鉄の年間利用客は約30億人と世界一で、これはヨーロッパの全人口の4倍にもなること。冬の凍結道を避けるために作られたノルウェーのベルゲンとオスロを結ぶトンネルは単調なため、眠気を防ぐために青と黄色の光で照らされた洞(ほら)穴の休憩所があること。ダイオウホウズキイカという巨大イカの目は現在知られている動物のなかで一番大きく、サッカーボールにも匹敵すること―(目がページいっぱいに描かれています)。どのページにも誰かに「ねぇねぇ、知ってる??」とシェアしたくなる面白い情報がぎっしり。電気をどうやって遠くに流しているかなど、大人の私も案外知らないことだらけなのだなと気づかされます。

世界の多様性に対する作者夫妻の目は非常に謙虚です。「世界の子どもたちが読む。僕たちはこうだけど、違うかもしれない。ヨーロッパでは電線は地下に埋められているけれど、日本では違うでしょ」、ダニエルさんはそう言います。当たり前だと思っていることでも、まずは確認してみる。そうした姿勢でいるからこそ、地球が実は少し平べったい形をしているので、地球の中心から最も遠いのはエベレストの頂上ではなく、エクアドルのチンボラソ山の頂上である、といった事実にもたどりつくことができます。

鋼鉄をつなぎ合わせて作った380キロもある昔の潜水服は、「実際に使われたどうかはわからない」とあります。調べまくってもわからなかったことは正直に「わからない」と書いてあるので、子どもたちも、疑問にいつも答えが用意されているわけではないことを理解します。地面の下、海の中を探検しながら、夫妻が克明に記している調べごとの面白さ、学びの楽しみを追体験できてしまうところも、この絵本の大きな魅力である気がします。

4月23日は、親しい人に本を贈る記念日とされるサン・ジョルディの日。子ども読書の日にも定められています。好奇心いっぱいの子どもたちにオススメしたい、とっておきの一冊です。



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岩井 光子