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フェアトレードを楽しく学ぶ絵本『ムクリのにじいろTシャツ』

2014.06.02 岩井 光子

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値段の安い、自分好みの服を探し出すことは悪いことではありません。でも、安ければ安いほど、どうしてその値段が実現できているのか、その背景に思いを馳せることは必要でしょう。食の背景にこだわるように、普段の服もどんな人がどんな労働環境で作っているのかを考えるきっかけにしてほしい、と『ムクリのにじいろTシャツ〜フェアトレードのおはなし〜』を5月に自費出版したのが世田谷区在住の宮原桃子さん。日本のフェアトレードブランド「ピープル・ツリー」で働いていた宮原さんは今では二児の母親。安さのウラで「一番負担を強いられるのは、生産現場で働いている労働者たち。この状況を変えられるのは、モノを買う側にいる私たち。子どもたちがこうした状況について、難しいお勉強や説明でなく、絵本を通して楽しく学ぶことができたらいいなと思い、この絵本を作りました」と話しています。

物語では、ムクリという主人公が大きな虹色のTシャツを作りたいと考えます。お願いしようと隣のまちに出かけると、「まっくろこうじょう」と「まっしろこうじょう」があり、ムクリは悩みます。「たった3日で、信じられないほど安く作れます!」と豪語する「まっくろこうじょう」と、「薬を使わないすばらしい綿で作ったシャツですが、手づくりなので3週間はかかります」と約2倍の値段を提示する「まっしろこうじょう」。決めかねたムクリは実際に両社の生産工程を見学にいき、その値段の背景を自分の目で確かめていきます。

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(c)Momoko Miyahara, Ayako Nakazawa


「まっくろこうじょう」の綿畑では農薬がたくさん使われていて、生産者は体の具合も悪そうです。縫製工場では労働者が日夜働かされていて、ムクリは仕事のために学校に通えない女の子「マヤ」に出会いました。一方、「まっしろこうじょう」では綿畑でも、服の生産現場でも、生産者たちは誇りを持って仕事に取り組んでいて幸せそうです。さて、ムクリはどちらの工場にTシャツを頼むのでしょうか。そして、マヤは?? 子どもたちは物語の展開にちょっとドキドキしながら、自分が着ている服についても、その生産過程を考え始めるかもしれません。

お茶の水女子大附属高の家庭科で消費者教育としてエシカルファッションを取り入れている葭内(よしうち)ありささんは、「若い人は、新しい知識や体験を素直に受け入れる柔軟さがある。服に興味はなくても、エシカルに関心を寄せたりするので、早い段階で触れるきっかけを作ってあげることはとても重要」と教育効果の高さを指摘しています。

幸せな環境で作られた服を着た方が、自分も幸せで豊かな気持ちになれる―。ムクリも物語の中でそのことに気づいていきますが、フェアトレードも基本はきっと、ごく自然な良心に基づいた消費行動が支えるもの。高校生よりずっと小さな子どもたちも、心の柔らかいうちにお母さんやお父さんと一緒に絵本を通してそんな体験ができれば、ファッションの背景を考えるまなざしもすくすく育つのでは、と期待が膨らみます。



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