NTT DATAThink Daily

  • 地球リポート
  • 地球ニュース
  • 緊急支援
  • 告知板
  • Think Dailyとは

地球ニュース

RSSrss

Food

伝統保存食×宇宙食で地域おこし

2015.09.11 岩井 光子

Space food:Creative Commons,Some Rights Reserved,Photo by Junpei Abe

国際宇宙ステーション(ISS)に長期滞在中の日本人宇宙飛行士・油井亀美也さんがTwitter経由で発信する宇宙食には興味をそそられます。ラーメンは、とろみを調節することで表面張力を強化したもの。約70度のお湯を注ぐと無重力空間では汁と一口大の麺と具が一体化し、ふわふわとボールのように浮きます。コーヒーは、香りも楽しめるよう宇宙専用の特製カップが用意されています。カップ側面の溝をコーヒーが毛細管現象により、つたってのぼってくるようにデザインされていて、ふちに溜まったコーヒーをすすって味わいます。固形のピーナツは、自分を回転させることで生じる遠心力を利用して口に運ぶのだそうです。

特殊な宇宙空間でとる宇宙食は、いくつかの条件を満たす必要があります。主なものは、1年半以上常温で保存できること、無重力下で飛び散らないこと、容器などから有毒なガスが発生しないこと、などです。宇宙食は未来食のようなイメージがありますが、「1年半以上常温保存可能」という条件から、例えば、伝統保存食と宇宙食は意外に相性が良いとみられています。JAXAは地域に伝わる食に着目し、2003年から宇宙食による地域おこしを呼びかけ始めました。2007年に宇宙日本食認証制度をスタートしてから、これまでにサバのみそ煮や山菜おこわなど、29品目が宇宙日本食として認証されました。2014年9月には、認証基準に必要な各種試験や検査をJAXAが積極的にサポートするという条件提示のもと、新たに33品目が選ばれています。

最近では、宇宙食開発をJAXAからの認証獲得にとどまらず、広く地域おこしにつなげる動きも各地に出てきました。約30年前に「航空宇宙産業基地」の候補となった北海道の大樹町では、町内で生産しているチーズをみそ漬けにし、フリーズドライにした「スペースチーズ」が4月から発売され、ご当地宇宙食として好評だそうです。豪雪地帯として知られる広島県の北広島町では「限界集落から宇宙へ」を合言葉に、ぞうのふんから作る「ぞうさんペーパー」やオーガニック食材などを販売するミチコーポレーション(本社・広島県北広島町)と宇宙イベントプロデューサーの井筒智彦さん、専門校のバンタンデザイン研究所が2年ほど前から産学連携で、乾物や薫製など地域に伝わる保存食を活用した宇宙食開発を進めています。

ミチコーポレーションがバンタンデザインと作った宇宙食「星イモ」と「星クズ」

西東京市生まれで、インターンで訪れた北広島町に魅せられ移り住んだという井筒さんは、自らも宇宙プラズマの研究で博士号を取得し、JAXAにも籍を置いていた元研究者。現在はミチコーポレーションが運営する「芸北ぞうさんカフェ」で映画上映や観測会と組み合わせたトークを企画し、宇宙タレントとして人気を集めています。山地や畑といった地元の恵まれた環境を生かしながら、子どもたちに宇宙の魅力を伝えるワークショップを精力的に企画する井筒さんの夢は、「西日本から初の宇宙飛行士を誕生させたい」。少子高齢化が深刻な町にこそ、最先端の宇宙技術を豊かに学べる環境を用意し、地域の未来の誇りにつなげたい、と語ります。宇宙食開発から広がったプロジェクトは、今では小さな町が探し求めていた活性化策の糸口にもなりつつあるのです。

刈った稲を木で組んだ「ハデ」にかけて乾燥させる伝統的な収穫方法を体験後、夜にこのハデをスクリーンにして、井筒さんがお月見トークを行う(今年の「ギャラクティック・ハーベスト」は9月下旬に開催予定)。中央がミチコーポレーション代表の植田紘栄志さん、右端が井筒さん

「だいち2号」の打ち上げに合わせて、ペットボトルの「水ロケット」を打ち上げようと企画されたのが「雪どけ水ロケット」。山道を2時間半近く歩き、滝つぼまで水をくみに行った



関連するURL/媒体

Bookmark and Share

Thinkテーマ別に読む

Food, Technology

このニュースの地域

広島県 (日本

岩井 光子