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「ほしいも学校」で学ぶ新しい世界観

2012.01.10 岩井 光子

2010年に発刊した書籍「ほしいも学校」は色や形、透明度といった干し芋の外観から果ては食べた後に出るおならまで、干し芋にかんするあらゆることを写真・イラスト付で楽しく紹介した一冊。2011年度、グッドデザイン賞を受賞 写真提供:ほしいも学校

自然な甘みとねっとりとした歯ごたえが気持ちをほっこりさせてくれる冬のおやつ、干し芋。こたつの上が似合う素朴な外観ですが、この干し芋をブランド化して地域おこしにつなげたいと考えたのが、茨城県ひたちなか・東海地域。同地域は国内生産の約80%を占める一大生産地です。

干し芋は地元の人たちにとっては、当たり前すぎる存在。市販のパッケージされたものを買うのではなく、出来たてのオン・シーズンの芋が生産者から直に段ボール箱でどーんと届く。そして段ボール箱の芋を冬の間、常備おやつとして楽しむ。そんな感じだそうです。

干し芋の歴史は、「煮切(にきり)干し」とも呼ばれるその製造方法を思いついた「いもじいさん」こと、静岡の栗林庄蔵から始まります。蒸して、熱いうちに皮をむいて、スライスして、台に並べて乾燥させる工程は100年来ほとんど変わりません。熱い芋の扱い方、乾燥の見極め方など、どれも想像以上に神経を使い、手間のかかる作業です。あと、生産者の高齢化が進んでいるのが農家の悩みの種です。さて、こんな干し芋をどうPRしていくか―。

干し芋の卸売りに携わる人たちがアイデアを求めたのは、キシリトールガムのパッケージデザイン始め、幅広い活躍で知られるグラフィックデザイナーの佐藤卓さん。干し芋の面白さにピンときた佐藤さんはすぐに「ほしいも学校」というコンセプトを提示、「干し芋から一緒に宇宙を見ましょう!」と大胆に呼びかけました。

その発想は、斬新なデザインで目立つといったことではなく、地元の人にとって当たり前過ぎた干し芋文化の豊かさに改めて目を向けるということ。これまでに栄養価の高い干し芋、世界に誇る自然食である干し芋といった観点から様々な動きが生まれています。12月17日まで行われた南青山のカフェ「knot」とのコラボでは、キムチと和えたり、豚バラ肉で巻いたりした干し芋の創作料理が大好評でした。また、地元では子どもたちと一緒にほしいも学校の校歌を作る案も進んでいますし、食糧問題の深刻なアフリカで干し芋の製造方法を伝える活動を提案する企業も現れています。

身近な干し芋をキーワードに何かできないか―。各自が自由に想像していくことで、通常なら出会わないかもしれない異分野の人たちが次々とつながっていきます。ともすれば、少し古くさく感じてしまう干し芋には、私たちの世界の見方を変えるような大きな力がある。ほしいも学校は地元の人にとって当たり前過ぎた干し芋が、実はこんなにも豊かで面白かったことに気づかせてくれるプロジェクトなのです。



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岩井 光子