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中国生まれの「二十四節気」、気象とのズレをどう考える?

2013.01.29 岩井 光子

Spring has come! :Creative Commons,Some Rights Reserved,Photo by skyseeker

もうすぐ二十四節気のひとつ、立春を迎えます。まだまだ寒い時期ですが、私たちは節分をお祝いし、春の訪れを心の中で意識します。

もともと古代中国で考案された二十四節気は大陸性気候の特性がある黄河の中・下流域の気候を元にしているので、立春のように日本の実際の気候とは多少のズレを感じるものがあります。例えば、8月8日ごろの立秋は秋風を感じるにはまだ早い盛夏。暑さがおさまる8月23日ごろの処暑も残暑が厳しい時節です。また日本気象協会が行ったアンケートによれば、雪や氷が溶けて雨となる2月中旬の雨水を梅雨と勘違いしていたり、稲の苗を植える6月5日ごろの芒種(ぼうしゅ)のように、多くの人にとって言葉自体耳なじみが非常に薄いものもあります。

そこで日本気象協会は2011年2月に「日本版二十四節気」を作成すると発表。若い人にも親しみやすいよう日本の季節感により合った言葉を集められないかと、元気象庁長官の新田尚氏を委員長に俳人や暦の研究者、国立天文台職員、気象予報士の資格を持つアナウンサーらを集めた専門委員会を11月に組織。現代日本の気候風土や慣習になじんだ言葉を一般から広く公募しながらとりまとめていこうと動き出しました。

ところが、予想外に気象協会に多く寄せられたのは反対意見でした。特に二十四節気を軸に歌を詠む俳句愛好者からは「言葉の意味が変わってしまったら季節の定義そのものが変わってしまう」と、大問題と受け取られる事態に。専門委の俳人からも「変えてはならない」と反対意見が上がりました。気象協会側にとっては、今の日本の季節を反映した言葉を広く募りたいという思いで始めた企画で「二十四節気を置き換えて新しい季節言葉の周知を図る」といった権威的なことを考えていたわけでは全くありませんでしたが、思惑の行き違いから誤解が生じたため、対話の機会を設け真意を説明し続けてきました。

昨年8月、様々な意見を鑑みた上で専門委と気象協会は「二十四節気は変えない」と改めて立場をはっきりさせた上で、日本の季節になじんだ言葉の募集を始めました。昨年12月21日で募集は締め切られましたが、春夏秋冬それぞれに1000を超える言葉(重複を含む)が集まったそうです。七五三や入試などの行事や出来事、植物の名、東日本大震災のこと、個人的な思い出を感じさせる熟語など実に様々なカテゴリーの言葉があり、今後整理して抜粋し、日本の季節を連ねる言葉集を編さんしていくそうです。

今回、俳句界を中心に起きた一連の議論で明らかになったのは、二十四節気が現在の日本の気象と多少ズレがあるにせよ、そのズレも含めて日本人の季節感の大きな指針となっているということでした。アンケートでは「日本は北と南では季節感が大きく違い、ズレは当たり前」といった意見も。寒い立春を機に「春の兆しを感じる」「先駆けて春を思う」という心の在り方こそが長い時間をかけて育まれた日本古来の季節感なのですね。



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