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世銀が途上国の防災・減災をテーマにハッカソンを開催

2014.02.19 山田 由美

2月8、9日に発展途上国×防災・減災をテーマにした「ハッカソン」というイベントが、世界銀行東京防災ハブの立ち上げを記念して東京・石巻・名古屋で同時開催されました。

ハッカソンという言葉はIT業界には浸透していますが、まだ一般的には聞き慣れないかもしれません。これは「ハック」と「マラソン」を合わせた造語。他人のコンピュータに不正侵入することを「ハッキング」と呼ぶこともありますが、本来悪い意味ではなく、コンピュータを熟知した人たちがプログラムを書き、ソフトウエア・ハードウエアなどを作ったりすること意味します。それをマラソンのように参加者たちが一斉にゴールを目指して競うのがハッカソン。多くの場合、指定会場に集まった参加者が決められたテーマに対してアイディアを出し合い、チームごとにソフトウエア・ハードウエアを開発し、最後にはできたものをプレゼンして優勝を狙います。白熱した議論や徹夜も辞さない作業で体もヘトヘトになりますが、集まったアイディアや共同作業でのものづくりで、気持ちはとても高揚する創造的なイベントなのです。

今回このイベントを開催したのは世界銀行。なぜ銀行が?と思いますが、開発途上国への融資を行う世界銀行は、防災を開発計画や投資プログラムに取り入れるために、防災の知識を活用することが重要と考えています。先日東京事務所内に設置された「東京防災ハブ」も日本の専門知識を活用するためでした。また前総裁ロバート・ゼーリック氏が「オープン・データ・イニシアティブ」を2010年に発表して以来、世界銀行はデータのオープン化を積極的に推進。以前は有料だった資料も大量に提供され、誰もがデータを活用できるようになりました。そこで、更なる活用や普及を目指すために、発展途上国×防災・減災に向けた共同作業が企画されたのです。

東京会場となった東京大学駒場リサーチキャンパスには、事前に登録をした参加者が大雪の中で集合。世代、国籍、性別、職種を問わず集まった参加者は2日間のうちに発展途上国の防災・減災に役立つソフトウエア・ハードウエアを作ることをゴールにプログラムについて熱く議論を交わした後、黙々と制作を進めます。持久戦を応援すべく、スポンサー企業からはピザ、栄養ドリンクなどが提供されました。この辺りも楽しく盛り上がるハッカソンならではの文化です。

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アイディアを出し合い、ソフトウエアなどを制作作業中  photo by Takahashi, Race for Resilience, CC BY


2日目午後には、それぞれのチームが様々なアイディアを試作品という形に仕上げてプレゼンし、審査が行われました。どのチームも発展途上国で現実的に使える物品、技術、コミュニケーションの道具は何かを事前に調査し、絞り込み、安価にできるものを実際に動き、見せられるものとして完成させて披露します。成果は測定器、警報システム、ゲーム、撮影機、ラジオ局、地図など多岐に渡りました。

発表をした16チームのうち1位を獲得し、今後グローバル審査に駒を進めることになったのは「Save the Baby」と名付けられたウェブアプリケーション。東日本大震災の津波で母子手帳が流されて予防接種や成長の記録が消えてしまった教訓から電子的に記録を残すことを目指しました。途上国では電話が最も身近なデバイスであるため、音声ガイダンスに従ってプッシュボタンで情報を入力したり、電話で安否確認する方法などを盛り込みました。

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1位を受賞したSave the Babyチームの発表  photo by Yumi Yamada


世界銀行という大きな国際機関が目指す先駆的な取り組みと、市民ハッカーが積み上げるアイディアや様々な能力が、ものづくりという場面で成果を少しずつ生み出しています。将来、具体的な力として防災に役立つ日も近いかもしれません。



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山田 由美