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2017.08.18 | 宮原 桃子

スウェーデンに果物レスキュー隊登場! 救われた廃棄果物がおしゃれなジュースに

スウェーデン発「Rescued Fruits」の廃棄果物ジュース ©Eva Kronfält Thorvinger

今世界で生産されている食料の3分の1は廃棄され、その量は年間約13億トンにも上ります。その中でも特に野菜や果物は、廃棄率が高いとされています。形が悪かったり、小さ過ぎたり、輸送中のちょっとした衝撃や時間の経過で一部だけ傷んでしまった野菜や果物…。まだまだ食べられるにも関わらず、多くの場合これらの野菜や果物は、店頭に並ぶことなく廃棄されています。運が良ければ、店頭でディスカウント商品として売られることもあります。

©J.Triepke

「そんな果物を救いたい!」と、スウェーデンで一つのベンチャー企業が生まれました。セシリア・ラーソンさんが2014年に設立した会社「レスキュード・フルーツ(Rescued Fruits)」は、その名も「救出された果物」。果物の廃棄は、農家や輸入業者、卸業者、小売業者などサプライチェーンのあらゆる段階で行われています。レスキュード・フルーツは、各段階の業者を訪問し、廃棄果物を選別して回収します。その後、自社工場にて手作業で傷んだ部分だけを取り除きます。品質的に全く問題のない残りの部分を使い、おしゃれなパッケージに包まれたジュース商品が生まれます。

 できるだけ多くの部分を有効活用するために、手作業で細かく選別 ©Eva Kronfält Thorvinger

 

ジュース商品に ©Eva Kronfält Thorvinger

レスキュード・フルーツは、2016年に60トンの廃棄果物からジュースを作り、2017年はこの2倍を見込んでいます。同社商品は、スーパーやコーヒーチェーン、レストランなどで販売されています。2016年春からは、スウェーデンの代表的な大手スーパーチェーンICA(イーカ)と提携し、ICAから出た廃棄果物を使ったジュース商品を店舗で販売。これまでに約33トンの廃棄果物から約5万4000本のジュースを販売しました。一般の高品質なジュースと同じ価格帯ながら、売れ行きは好調。購入者の多くが社会に良いコンセプトに賛同しているのはさることながら、味や品質、デザインへの評価がとても高いそうです。

レスキュード・フルーツのジュースの生産から流通までを紹介

レスキュード・フルーツは、販売できない果物の選定・回収作業を無償で行い、小売店などの企業は無償で廃棄果物を提供しています。企業にとっては、販売できない果物の選別や廃棄処理にかかる費用や人員を節約できるとともに、食品ロスを減らすという社会的課題に取り組むことができます。さらにICAの事例のように、新しい収益にもつながります。

一方、廃棄果物を原料にする同商品は、どのような果物がどれだけの量で入ってくるかが常に流動的なので、フレキシブルな生産体制が求められます。小売店などからの理解も必要不可欠です。ラーソンさんは、こうした難しさに挑戦しながら、より大きな規模で事業を展開していくことを目指しています。

創業者のセシリア・ラーソンさん ©Eva Kronfält Thorvinger

これまで売れないとされていた野菜や果物を、ただ処分したり価値を下げて売ったりするのではなく、逆に付加価値を付けた商品に生まれ変わらせる。そんな取り組みは、今世界各地で広がっています。廃棄野菜や果物を使って、カナダの「LOOP」はスタイリッシュなジュース商品を、ドイツの「Dörrwerk」は「果物ペーパー」と呼ばれる極薄の美味しいチップスを、イギリスの「Rubies in the Rubble」はオリジナリティ溢(あふ)れるペーストやソースを作り出しています。これらの商品はいずれも、原料のユニークさだけでなく、他にはない商品を開発しながら、社会の課題解決に貢献しています。

私たちの周りには、ちょっと視点を変えてアイディアを絞れば、新しい価値のあるものに生まれ変わるものがたくさんあるように思います。そんな目で世の中を見てみれば、増え続ける地球への負担を少しでも減らせるかもしれません。

宮原 桃子
宮原 桃子(みやはら ももこ) 地球リポーター

日本貿易振興機構(JETRO)に勤務後、フェアトレードファッション・ブランド「People Tree」にて、バングラデシュ・インド・ネパールにおける生産管理に従事。現在は、企業のサステナビリティ推進を支援する「 エコネットワークス」に、コンテンツプロジェクトマネージャーとして参画。ライフワークとして、フェアトレード絵本「ムクリのにじいろTシャツ」を制作したほか、親子向けにフェアトレードを学ぶワークショップを企画する「フェアトレードガーデン世田谷」(本部・東京)の運営に携わる。社会や世界で起きていることを「自分ごと」として感じ、考え、行動する。そんなきっかけになるような記事をお届けしたいと思います。

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