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Climate Change

世界の気温が観測史上最高に
CO2を地中に貯めるCCS技術への期待と限界

2016.01.28 ささ とも

建設時のクエストCCS設備:Creative Commons,Some Rights Reserved,Photo by Pembina Institute

米航空宇宙局(NASA)は、2015年の世界の平均気温が1880~1899年と比べ、初めて1度以上気温が上回ったと発表しました。

昨年12月の第21回国連気候変動枠組み条約締約国会議(COP21)で採択されたパリ協定では「産業革命前からの気温上昇を2度より十分に低く抑えることを目標とする」と合意されたばかりですが、上昇し続ける気温を世界はどうすれば止められるのでしょうか。

CO2増加を抑える切り札と言われているのが二酸化炭素回収貯留(CCS)技術です。CCSは発電所や工場から排出される二酸化炭素(CO2)を回収し、地下の岩盤層に注入して、永久的に貯留するという技術。気候変動に関する政府間パネル(IPCC)が、2度目標を達成するにはCCS技術が重要だ、と評価するなど、世界中でCCSの利用が期待されています。

現在、世界で操業中の大規模なCCSプロジェクトは14件。年間に平均約200万トンのCO2を回収する能力があります。IPCCのシナリオでは、2090年までに年間400億トンを削減する必要があるとしており、例えば2020年にプロジェクトを開始した場合、毎年250のCCS設備を建設し、それぞれ70年間稼働し続けなければならない計算になります。

操業中の14件のうち、11件が石油増進回収法(EOR)のプロジェクトです。EORとは油田にCO2を注入して石油の採集を増加させる方法で、つまり石油の増産を目的としています。カナダでは二つの大規模なCCSプロジェクトが実施されていて、その一つがサスカチュワン州のバウンダリーダムにあります。ここで石炭火力発電所から回収されたCO2は、カナダの石油会社に販売、EORで使用されています。もう一つは、アルバータ州で操業を始めたばかりのクエストプロジェクトで、年間100万トンの回収能力を有します。しかし、アルバータ州では石油・天然ガスの生産だけで年間7300万トンのCO2を排出しているため、カーボンニュートラルにするためには同規模のCCSが70基は必要となってくるのです。

日本でも2012年に、政府主導により北海道苫小牧でCCSの実証試験プロジェクトが始まり、今年4月からCO2貯留(圧入)が開始される予定です。CO2を閉じ込める場所は、地下1000メートルより深い砂岩などの層で、上部がCO2を通さない泥岩の「遮へい層」で厚く覆われていること、活断層の近くは避けることが条件となっています。海外では枯渇した油田やガス田が利用されていますが、日本でこうした条件を満たす場所は限られており、候補地115カ所から苫小牧が選ばれました。年間で20万トンの回収能力を目指しています。

CCSは炭素排出をゼロあるいはマイナスにもできる技術ですが、回収・貯留量や立地条件が限られるなど本格的な実用化には至っていません。温暖化を食い止めるためには、化石燃料への依存をやめ、脱炭素社会を築くこと。CCSはそれまでの間、大気中のCO2濃度の増加を抑える一つの手段として期待できると言えそうです。



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