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Energy

独英でCO2貯留プロジェクトが中止、EUのロードマップに暗雲

2012.02.08 アマサワエンジィ

CCS plant in Germany:Creative Commons,Some Rights Reserved,Photo by Vattenfall

油田やガス田、火力発電所などから出る二酸化炭素を回収し、地下に貯留する「CCS」(Carbon Capture and Storage)技術は、 欧州各国が数十年前からCO2排出量削減効果を期待し、巨額の投資を行って開発を進めてきました。しかし、前四半期にはドイツとイギリスで2つのCCSプロジェクトが打ち切られ、残る他のプロジェクトの多くも 今年中には同じ道筋をたどるのではないかと言われています。理由は資金不足と、地層へのリスクや温暖化対策としての効果を疑問視する一般市民の反対の声です。

プロジェクト続行には陰りが見えるにもかかわらず、2011年12月、EU委員会が2050年までにEU全体のCO2排出量を1990年比で80%削減するとした「エネルギー・ロードマップ」の中では、依然としてCCS技術でその19-32%をまかなえると見込んでいます。EUエネルギー担当のギュンター・エッティンガー委員が「CCSなしにはヨーロッパの化石燃料の未来はない」と強調するほどです。

CCSの技術普及を進めるオーストラリアの国立研究所「グローバルCCS機構」によると、CO2回収技術をひとつの発電所に設置するのに資本コストが30-100%増えると言われ、その額は発電所の規模により平均で10億から20億ユーロ(約1000億−2000億円)に値します。さらに、CCS技術の設置により発電所の効率は落ち、出力は20%下がるとも言われています。現在財政難に陥っている欧州にとっては手痛い出費です。

資金難が大きな壁となっているCCS技術ですが、化石燃料から得られる安定と供給を犠牲にせずに温暖化対策にも対応できるとの利点から、政界や関連業界の大きな支持を得てプロジェクトを続行している国も少なくありません。米国では現時点で4機のCCS設備が実証試験中、3機が建設中、そして18機が計画段階にあり、他にもノルウェー、オーストラリアやカナダで計画が推進されています。

環境問題へ率先して取り組んできた欧州では、温暖化対策の切り札とも言えるCCS技術が財政危機によって大きく揺らいでいますが、実際の効果や環境への影響が不透明であることも忘れてはいけません。CCSの今後の動向に注目です。



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