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森林保護か石油採掘か アマゾンのジレンマ

2013.09.01 ささ とも

Yasuni National Park:Creative Commons,Some Rights Reserved,Photo by Josha Bousel

南米エクアドルのコレア大統領は8月15日、ヤスニ国立公園で油田開発を再開する方針を発表しました。

エクアドルは豊かな熱帯雨林が広がり、その足元には膨大な石油資源が眠っています。そのため、石油掘削か森林保護かどちらを優先するかが長年、議論の的になってきました。アマゾン川源流域に位置するヤスニ国立公園のイシュピンゴ・タンボコチャ・ティプティニ(ITT)地区では、エクアドル政府が2010年に国連開発計画(UNDP)との間で協定を結び、ヤスニITT信託基金を設立、この開発によって得られる推定利益の半額に相当する36億米ドル(約3500億円)を国際社会が出資すれば、この地区で石油採掘を永久的に行わないことを約束していました(ヤスニITTイニシアティブ)。しかし、コレア大統領の発表によると実際に集まったのは1330万ドル(約13億円)でした。

ヤスニ地区には推定埋蔵量は8億5000万バレルの石油、金額にすると72億米ドル(約7030億円)に相当します。石油はエクアドルの輸出の40%を占める重要産業です。世界でも貧しい国であるエクアドルは、国民の4分の1以上は貧困線より下、平均収入は日額26米ドル(約2500円)といわれています。それでも国民の78%はヤスニITTイニシアティブを支持しています。

ヤスニ国立公園は1989年からユネスコの生物圏保存地域に指定されるほど世界的にも貴重な資源で、この地域を保護する価値は、到底お金で換算することはできません。生物多様性と先住民のコミュニティーの保護、炭素排出量の削減がもたらされるからです。ヤスニ国立公園は面積9000平方キロメートル、ほ乳類187種、鳥類596種、は虫類121種、カエル150種が生息する多種多様な生物の宝庫です。この地区ではワオラニ民族に属するタガエリ族とタロメニアン族や、他にもキチュア族やナポルナ族がヤスニの豊かな自然に依存して暮らしています。また、森林保護を維持することで4億700万トンのCO2排出を削減することができます。

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Many-banded aracari.:Creative Commons,Some Rights Reserved,Photo by Buster&Bubby


この地区では1994年に油田開発のための道路ができて以降、10種のサルのうち3種が毎日観察されていましたが、この3年にわたり1種も見られなくなりました。また、石油会社が先住民に衣類や食料を無料で配るので、子どもは伝統的な装いをはずかしがり、祖父母が教えることを拒否するようになるなど、先住民のアイデンティティーが失われつつあるといいます。

日本企業としてこの問題に対して行動を起こしたのは衣料品や生活雑貨の「無印良品」を展開する良品計画。2011年に日本企業としては初めて20万ドル(約1950万円)をヤスニITT信託基金に出資しています。しかし、コレア大統領は、イニシアティブが失敗したのは先進国が保護を説きながら行動しなかったためで、とりわけ三大石油消費国のアメリカ、中国、日本がプロジェクトを支援しなかったと批判しています。

ヤスニの油田開発の問題は、現代文明のジレンマを映し出しているように思います。石油を手に入れて便利な生活を続け、未来に目を背けるか、森林を保護して生態系を守り、温暖化を最小限に抑え、未来世代に伝統的な先住民の文化を継承していくか。私たちの世代の選択にかかっているのです。

参照
http://www.pbs.org/newshour/bb/environment/july-dec13/ecuador_08-16.html
http://www.miamiherald.com/2013/08/16/3567831/conservation-groups-vow-to-save.html



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