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電気を使わない家電製品!? 「非電化工房」の豊かな暮らし

2013.04.09 瀬戸 義章

非電化工房の玄関脇に設置された「非電化冷蔵庫」
photo by yoshiaki seto

みなさんは、電気を使わない冷蔵庫を想像できますか? おっと、氷も使いませんよ。

自然のちからで、食べ物・飲み物を冷やすことができる、この「非電化冷蔵庫」があるのは、栃木県那須町にある「非電化工房」です。この工房は「エネルギーとお金を使わなくても得られる豊かさ」を実現するというコンセプトのもと、2007年からはじまった「テーマパーク」でもあります。我慢をすることなく、楽しむ生活を魅せるからこそ、展示場ではなく、テーマパークなのです。

工房の代表は藤村靖之さん。科学技術庁長官賞を受賞したこともある発明家です。「非電化冷蔵庫」も、随所に科学的な工夫が凝らされています。まず、この冷蔵庫が物を冷やせるのは、放射冷却の力があるからです。放射冷却というのは、物の表面から赤外線が放射されることで、晴れた日の夜によく起きる現象です。冷蔵庫の外装と貯蔵室の間には保冷水が入っており、この水を夜間の放射冷却によって冷やすことで、また、昼間は外気からの熱を遮断することで、内部を低温に保つのです。

雨の日が続くと放射冷却が弱まるので、温度が高くなってしまいますが、3日に1日は晴れの日、という条件ならば、10度前後まで冷やすことができるそうです。冷蔵庫の中にあったビールを手に取ってみたところ、よく冷えていました。

この冷蔵庫、モンゴルで羊肉を保存するためにも使われています。現地でもつくれるように、内部構造は、「墨を入れたペットボトルを敷きつめる」と簡易化しました(黒は放射冷却がおきやすい色だそうです)。モンゴルのほうが空が澄んでいるので、放射冷却でよく冷えるそうです。

東日本大震災と原発事故にまつわる問題は、私たちが「エネルギーの使い方」を問い直すきっかけになりました。「非電化工房」は、発電所をつくり続けるのでもなく、節電にやっきになるのでもない、第3の「生き方」を示してくれているように思えます。

すごい技術者でなければこの冷蔵庫はつくれない、ということはありません。親子でつくるワークショップも開催されています。完成させて涙ぐんだお母さんもいたそうです。

「この社会は専業消費者と専業生産者に完全に分かれてしまっていて、わたしたちは『ものはつくれない。お金を払って手に入れなければならない』と思いこまされています。でも、実は、文化系のお母さんでも子どもでもアフリカ人でも、みんな、ものをつくることはできますし、ものづくりが好きなんです」藤村さんはこのように語ります。

非電化工房では、毎月2回、見学会が開催されています。近々、「非電化カフェ」もオープンするそうです。非電化除湿器、非電化消臭器といった発明のなかで、普段の暮らしとまったく違う、それでいて工夫に満ちた豊かな生活を、ここで感じてみてはいかがでしょうか。



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瀬戸 義章