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夢の翼 - スターライトミーティング2004 in Fukuoka|地球リポート|Think the Earth

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地球リポート

from 福岡 vol. 19 2004.12.01 夢の翼 - スターライトミーティング2004 in Fukuoka

子どもたちに宇宙の神秘を体感してもらいたい! 宇宙開発の魅力を知ってもらいたい! そんな想いから開催されたスターライトミーティング。星空に出会った24人の子どもたち、その子どもたちの笑顔に出会った大人たち。実はこのスターライトミーティング、2005年に福岡で開催される宇宙の世界的祭典、第56回国際宇宙会議のプレイベントでもあります。国際宇宙会議の成功の鍵を握るスターライトミーティングは、笑顔の交換の物語でした。その全貌をレポートします。

目次へ移動 宇宙から地球を見ると・・・

渦巻き状銀河の例(ハッブル望遠鏡の画像)Credit NASA渦巻き状銀河の例(ハッブル望遠鏡の画像)Credit NASA

『宇宙の事典』(沼沢茂美・脇屋奈々代著、ナツメ社)という本によると、宇宙というのは「真空の揺らぎの中にトンネル効果によってぽろりと生まれました」とあります。「ぽろり」という言葉が、この広大な宇宙の始まりとしては、あまりにものどかな印象を与えますが、実際に宇宙は生まれた瞬間には、原子ひとつよりもはるかに小さく、その大きさは10のマイナス33乗センチ、1兆分の1兆分の1のさらに10億分の1センチという微細さだったそうです。それが、ほんの10のマイナス34乗というわずかな時間で、10の100乗倍にまで膨張しました。以来、宇宙は140億年にわたって膨張し続けています。

私たちの住む地球があるのは、太陽系です。太陽系は、銀河系の中にあります。その銀河系の大きさはだいたい10万光年。1秒で地球を7周半するという光が1年かかって到達する距離が1光年。その光のスピードで、端から端まで10万年かかるわけです。銀河系が属しているのは、局部銀河群の中のサブグループといわれ、局部銀河群の大きさは1000万光年。宇宙全体の大きさは100億光年以上といわれています。しだいに、単位の感覚、時間の感覚、距離の感覚が麻痺し始めてきますね。

ステファンの五つ子と呼ばれる銀河の集まり Credit: ESAステファンの五つ子と呼ばれる銀河の集まり。2億7000万光年のかなたにある(ハッブル望遠鏡の画像)Credit: ESA

例えば銀河系には2000億個の星が存在しています。そんな銀河が50個から1万個も集まったものを銀河団といいますが、そんな銀河団が宇宙にはごろごろしています。つまり、十分に大きなはずの銀河系自体が、宇宙全体からすると、本当にちっぽけな存在だということがわかります。宇宙全体にどれだけの星があるか、専門家の間でも意見はまとまらないようですが、気の遠くなるような膨大さであることだけは確かです。それだけの星がある中で、太陽系の近隣、地球から10光年以内にある恒星(自分で光を出せる星)は7個しかありません。ひとつひとつの星がいかに離れていることか。10光年がどれほどの距離か実感できますか? 約94兆キロです。音速でひたすら突き進んでも、約940億時間、つまり10億年かかってしまう距離です。

目次へ移動 宇宙開発という先端技術

宇宙空間では、塵やガスが集まって、絶えず新しい星が作られています Credit NASA星のゆりかご。宇宙空間では、塵やガスが集まって、絶えず新しい星が作られています。Credit NASA

いまのところ、人類が有人探査船を送ることができるのは、地球の衛星である月や太陽系の中でも、火星や木星に限られています。それでも、人類にとっては大冒険であることに変わりありません。現在、国際協力によって国際宇宙ステーション(ISS)の建設を進めると共に、月面基地建設や有人火星探査計画などが提案されています。宇宙空間の無重力を利用した科学実験や生産技術にも注目が集まっています。そして、それらの計画には日本も参加しているのです。その主体となっているのが、宇宙航空研究開発機構=JAXA(Japan Aerospace Exploration Agency)です。

宇宙開発は、ロケット工学をはじめとして、さまざまな科学技術が結集しています。宇宙ステーションや宇宙コロニーの実現には、酸素や水、食料の自給といった課題を解決しなくてはなりません。さらに、地球環境問題の要因となっているCO2や廃棄物の問題も解決しなくてはなりません。つまり、宇宙開発技術は、地球環境問題とも密接な関係を持っているのです。しかし、宇宙開発の営みは、多くの人に支持されたり、注目されているとはいえません。あまりにも、長期的な気の長い話なので、身近な問題とはなりにくいという事情もあります。また、日本では、度重なる衛星打ち上げの失敗などで、人々の目は宇宙からはすっかり離れているといっていいでしょう。

そんな現実を憂慮し、機会をとらえては宇宙の不思議と魅力を実験を通じて紹介しながら、宇宙への興味、科学へのあこがれを子どもたちに伝えているのがJAXAで有人宇宙技術の研究開発を行っている小口美津夫さん。「子ども達に夢と好奇心を与える宇宙の伝道師」との異名を持つ小口さんが、実行委員長を務めているのがスターライトミーティング2005プロジェクト実行委員会。今回レポートする、スターライトミーティング(後援:JAXA、日本宇宙少年団(YAC)、福岡県、福岡市、北九州市)の運営主体です。

目次へ移動 スターライトミーティング、始まり!

2004年10月16日、正午。福岡県の南のはずれに位置する山村に24人の小学生が到着しました。小倉と博多で観光バスにピックアップされた彼らは、両親や学校の友達以外との1泊旅行に、少しだけ緊張気味。この24名の小学生たちこそが、記念すべきスターライトミーティング第1回目の参加者です。

24人の子どもたちを乗せたバスが星野村に到着!24人の子どもたちを乗せたバスが星野村に到着!

第1回目のスターライトミーティングの舞台に選ばれたのは、福岡県八女郡星野村の星のふるさと。星の山荘・星の温泉館きららという宿泊施設を中心に、池の山キャンプ場、日本でも有数の天体望遠鏡を備えた天文台(星の文化館)、茶の文化館などが一体になった施設です。

「これまでも、さまざまな展示会やシンポジウムで子どもたちを対象にした講演や実験教室を行ってきましたが、泊まりがけのイベントを開催するのは初めてでした。たとえ1泊とはいえ、親元から離れた小学生たちがどんな表情をしているのか、見るまでは不安でしたね。でも、バスから降りてくる彼らの顔を見たら、これは成功だったなって確信しました。バスの中でボランティアのリーダーたちが子どもたちを盛り上げてくれたようです」と小口さんが語るように、バスの扉が開くと同時にステップを駆け下りるようにして飛び出してきた子どもたちの顔は、これから起こる、心をわくわくさせる体験への準備がすっかりできているようでした。昼食を済ませ、3人のリーダーのもと3班に分かれた子どもたちを集めて、最初のワークショップが開催されました。タイトルは、「宇宙と出会おう!」。講師を務めるのは、ミッキーこと、小口美津夫さんです。

グループ分けの後、各グループの名前を決めました。
北斗七星、太陽、水星の3グループ。グループ分けの後、各グループの名前を決めました。 北斗七星、太陽、水星の3グループ。

目次へ移動 真空と極低温の実験に興味津々

実験は、宇宙という特殊な空間を視覚や触覚で体験できるものが用意されました。「地上で再現できる宇宙空間の現象は、真空、極低温なんですね。本当は大人も子どもも興味があるのは無重力なんですが、それは再現が難しい。擬似的に再現できることはできるんですけど、あくまでも擬似なんです」。ということで、ここでは真空と極低温の実験が行われました。

宇宙服のレプリカ。 直接触れて、実感できる宇宙開発の一部です。宇宙服のレプリカ。直接触れて、実感できる宇宙開発の一部です。

教室の片隅にはスペースシャトルの宇宙服が展示されています。この宇宙服は、非常時に宇宙飛行士を守る構造になっていることが、ミッキーの口から説明されます。宇宙の特徴は、無重力、真空、極低温であること、これからの「おもしろ宇宙実験教室」のテーマが真空と極低温であることが告げられます。

小口美津夫さんによるろうそくが消える実験ミッキーこと、小口美津夫さんの実験開始! 真空の中でろうそくが消える実験。

アクリルドーム内を真空状態にしていくと、空気を入れていない風船がふくらんでいきます。アクリルドーム内を真空状態にしていくと、空気を入れていない風船がふくらんでいきます。

まず、真空。ミッキーがアクリルのドーム内に真空状態を作り出します。中に入っているのはマシュマロ。このマシュマロが、どんどんふくれあがっていきます。次に、ドーム内に入ったのは、炭酸飲料。内部の気圧が下がっていくと、次第に泡立ちが激しくなります。さらには、空気の入っていない風船がみるみるふくらんでいきます。こんな実験から、真空という空間の恐ろしさが伝わってきます。つまり、真空状態では、人間は宇宙服を着ていないと血液が泡立ち、肺もふくれあがり、最後には破裂してしまうのです。

次は、極低温です。各テーブルに液体窒素の入った容器が配布されます。液体窒素の温度は約マイナス200度。白い煙が立ち上がっていて、いかにも「実験」というムードがただよってきます。3班に分かれた子どもたちに、地元星野村の子どもたち10数人が加わって、極低温の実験が始まります。宇宙空間には、地球のように大気がありませんから、太陽の光(熱)が当たらない所はとても温度が低い(マイナス150度位)のです。その、極低温とはどういう状態なのかを、具体的に知ることができる実験が用意されました。まずは、マシュマロ。小さくかちんかちんになってしまいます。次は、風船。これを液体窒素の中に入れると、風船がふくらませる前のようにみるみるしぼんでいきます。そして、そのしぼんだ部分に水のような液体が見られます。この水の正体、実は酸素が液化したもの。酸素の沸点はマイナス183度、液体窒素はマイナス193度ですから、風船の中の空気に含まれている酸素が水になったのです。

液体窒素を使った極低温の実験液体窒素を使った極低温の実験。風船を入れると、みるみるしぼんでいきます。

お次は、極低温の定番、バラの花です。バラの花を液体窒素に浸すこと、約30秒。取り出したバラの花は、一見入れる前と変わりませんが、触ってみるとぼろぼろに崩れ去っていきます。次は、バナナ。これもCMなど映像ではおなじみなのですが、実際に体験するのは、みんな初めて。バナナを液体窒素の中に入れ、約30秒。用意された板きれにバナナをトンカチ代わりにして釘を打ち込んでいきます。子どもたちの間から歓声が拡がります。このレポートでは、子どもたちのコメントも紹介したかったのですが、本当にびっくりしたり、感動したりしている場面では、人はコメントは残さないものです。凝視と歓声。興奮と笑顔。写真を見ていただくと、初めて体験する「もの」への好奇心とちょっぴり不安な子どもたちの表情がよくわかるかと思います。

極低温の液体窒素の中にバラの花や、バナナを入れていきます。極低温の液体窒素の中にバラの花や、バナナを入れていきます。
花びらはかさかさに、バナナは釘が打てるほど堅くなります。

液体窒素は、マイナス200度の極低温です。さらっとしずくに触れる程度では実害はありませんが、もし中に指を漬けたりしたら、指もバナナと同じように凍ってしまい、きっと細胞も破壊されてしまうでしょう。凍り付いてしまったバナナも長時間手に触れていると、やはりやけどの可能性があります。つまりは、一般的な見方をすれば危険が伴う実験です。とても、学校などでは実行できないでしょう。しかし、適切な指導を行えば無茶なことをする子どもは一人もいません。

子どもたちの表情、机に乗りだしている姿。集中していることがよくわかります。子どもたちの表情、机に乗りだしている姿。集中していることがよくわかります。

目次へ移動 振り返りシートから

  • 宇宙はとてつもなく広いこと!
  • 真空の世界があること
  • 星がいっぱいあって周りの空気がないと、人もまわりもはれつするということ
  • 太陽より大きい星があったこと
  • マシュマロなどが大きくなることがおどろいた
  • マシュマロがかちんこちんになったこと
  • うちゅう人がいるかもしれないこと
  • バラが(液体窒素で凍り)ぐしゃっとなったこと
  • 人間が一番遠くへ行った星は、月ということがおどろいた。あとの星はそんなに遠いんだなと思った

目次へ移動 身体で実感する宇宙空間

「不思議な現象に、直に触れることが、子どもたちの好奇心を呼び起こすんです。私なんか、小学校の頃に図書館で中学校の理科の実験の本を借りてきて、ずいぶん個人的に実験をしたものです。トイレ掃除用の塩酸と電池をばらした電極を使って水素をつくって水素ロケットを飛ばしたりしていました。今の小学生たちにも、いろんな実験で科学の驚異を感じて欲しいですね」と語る小口さんは、確かに生まれながらの「宇宙の伝道師」かもしれない。

星野村は、棚田も見られる自然豊かな山村星野村は、棚田も見られる自然豊かな山村。

天文台とプラネタリウムのあるプチホテル星の文化館(左)と、プラネタリウム(右)。天文台とプラネタリウムのあるプチホテル星の文化館(左)と、プラネタリウム。

実験を通じて、宇宙の神秘に触れた子どもたちが次に体験するのが、本物の星空。夜は、山頂にある星の文化館のプラネタリウムでの宇宙旅行と天文台での星空観察です。ほとんどの子どもがこれほど本格的な天体望遠鏡は初体験。ここでも、子どもたちの歓声が響いたのは、いうまでもありません。

ここでは、織り姫と彦星としてなじみの深いベガとアルタイル、さらにはその間にある天の川を肉眼で見ることができました。さらには、多くの子どもたちにとっては初めての流れ星を見ることもできました。

アンドロメダ星雲。星の文化館撮影。アンドロメダ星雲。私達の銀河系の隣の星の大集団で、三千億から四千億ちかくの星が集まっています。星の文化館撮影。

目次へ移動 振り返りシートから

  • 夜空が見れてデネブなど星をいっぱい知ることができました
  • 星ってこんなにあったんだなーとおもいました
  • まだまだわからないことがあるのだなあと思いました
  • ながれぼしがあった
  • むかし、火星には水があったこと
  • 太陽よりもでっかいのがあるのを知ったこと
  • ちいさな星に見えてもほんとは遠くにあるだけ
  • プラネタリウムに行ってキリン座とかいろいろあったのがおどろいた

目次へ移動 2005年国際宇宙会議

実は、このスターライトミーティング、2005年10月に福岡で開催される第56回国際宇宙会議の下地作りの意味合いも含まれています。IAC(=International Astronautical Congress)国際宇宙会議は、毎年世界各地で開催される宇宙関係者の世界最大の国際会議であり、宇宙関連技術の国際見本市でもあります。2004年に行われたバンクーバーでの第55回国際宇宙会議では1000件を超える研究発表、機器展示、デモンストレーション、ツアーなど盛りだくさんの内容。専門家主体の研究発表の他、学生が行う研究発表など、宇宙に魅せられたすべての人を巻き込んで開催された会議です。それが、福岡にやってくるのです。

「世界各国から2000人以上の関係者が集まる会議なんですね。でも、一般の人は、そうなの、という感じなんで、振り向くこともない。もちろん、研究発表は専門家のためのもので、一般の人には興味は持てないかもしれません。でも、この会議では、展示もやることになっているんです。いわゆるビジネスショー的ではない、学術セッションに付随する展示なんですね。大学で宇宙関係の研究をしている学生も参加して活動を発表したりもするんです。つまり、いろんな世代が楽しめる大会なんです。福岡会議では、さらに底辺を拡げて、小さな子どもたちから、小学生、中学生、高校生にも宇宙開発の意味を理解してもらいたいと思っています。家族連れで来てもらってもいいし、近隣の学校からも授業の一環として来て欲しいですね。最新の科学技術に直接触れあって、体験なり、勉強、新しいことを見つけてもらいたいと思っています」と小口さんは福岡会議への思いを馳せます。

子どもたちが参加する、地元の人たちが参加する国際会議。世界中から集まるお客さんには、これ以上のもてなしはないはずです。「子どもたちと触れあうことで、大人たちも成長のチャンスを与えられるんですよ。現に、僕らスターライトミーティングの参加者に参加した大人たちが子どもたちからもらったものはたくさんあります。僕が考えるコミュニケーションの原則のひとつに、子どもに説明できないものはよくない、というのがあるんですね。どんなに立派なことをやっていても、子どもにきちんと説明できないとだめなんです。宇宙開発も同じです。どんなに、意義のあることをやっていても、子どもに理解してもらえるようにならなければ、広く国民の理解を求めることは難しい。それに福岡で開かれる国際会議なのに、福岡のファミリーが知らないのは、おかしいと思うんですね。スターライトミーティングで、子どもたちが感動して帰ってくれれば、当然それを家族と共に話す機会があると思うんです。子どもたちとのコミュニケーションプログラムはぜひ必要だと思ったんですね」と、スターライトミーティングの実行委員の一人であるプランナーの飯島ツトムさんも一般の人たちの理解、特に子どもたちが参加することの意義を強調します。

2日目の朝ご飯。もうすっかり、うちとけています。2日目の朝ご飯。もうすっかり、うちとけています。

茶の文化館でしずく茶と抹茶作りを体験。茶の文化館でしずく茶と抹茶作りを体験。

食後のひととき。食後のひととき。

目次へ移動 夢の翼を育てるため

「スターライトミーティングの実験では、子どもたちがわれ先に、参加していたでしょ? 福岡の国際会議でも子どもたちを意識した新しい展示の形を企画しているんですね。NASAで火星ローバー(探査機)を開発している研究所があるんですね。それを、火星の地形を再現したジオラマの中で動かす、というようなデモンストレーションをやってもらおうと思っています。NASAは、海外では展示はしないという原則があるんですが、研究所単位で出展したいといってくれています。ロボットコンテストがあちこちで開かれて盛況でしょ? 福岡大会でもローバーコンテストをやって、子どもたちの探査機のアイディアを集めたり、実際に動かしてみたりといった展示をやってみたいと思っています。

今の子どもたちがどの程度夢を持っているのか? まったく未知数なんですが、夢の萌芽のようなものは誰しも持っていると思うんですね。スターライトミーティングは星を題材にして、自然と親しむ、普段見られないものを見たりすることができるわけですよね。そのことが、夢を大きくすることができるのではないかと考えているんですね。夢を育てるのは、自分一人ではできないんです。友達や、大人といった自分以外の人とふれあい、話し合うことで、具体化するんですね。スターライトミーティングという機会を使って、自分の夢を明確にして、目標として進む。そうすることで、はっきりとした人生を送れるのではないかというのが、僕の思いです。子どもたちが、自分で考えて何かをする、自分で考えて積極的に、好奇心を持っていろんなものに突き進んでいく、そのきっかけをつかめるのではないかと思うんですね」(小口美津夫さん)。

目次へ移動 宇宙開発技術は環境技術

ところで、ミッキーこと小口美津夫さんは、いつもいつも「おもしろ実験」をしているわけではありません。小口さんが現在取り組んでいるのは、宇宙コロニー時代が来たときのための物質循環。

小口美津夫さん。調布のJAXA施設内にある研究所にて小口美津夫さん。調布のJAXA施設内にある研究所にて

「僕がこれまで研究してきたのは、ロケットエンジンの制御技術でした。それが一段落付いたので、現在は、より多くの人が宇宙に行くようになったときのために必要な生存環境作りの研究をやっています。宇宙ステーションではなく、さらに規模の大きいコロニーですね。場所は火星を考えています。平均温度はマイナス60度。ちょうど業務用の冷凍庫、マグロなんかがかちんかちんになる冷蔵庫の温度ですね。大気は95%が炭酸ガスです。この炭酸ガスからメタンを生成してエネルギーとして使います。そのことで温暖化を進める。自然にまかせておいたら、数千年、数万年かかることですが、先端技術が介入すればある程度の期間でできるのではないかと考えています。

もちろん、その前にそうしたことをやるべきか、やっていいのかどうかといったことを話し合わなくてはなりませんけど、人間が住める環境にすることは可能なんですね。食べ物や水あるいは酸素など、人間の生活に必要なものは、もちろん最初は持っていきますが、消費したものを、生物と物理化学を使ってリサイクルしていくということをしなくてはならないわけです。炭酸ガスから酸素、廃水から水、廃棄物から食料を生産する。その研究をやっていて、要素技術は完成してきました。火星に人類が行けるのは、まだ先なので、現在はこの技術を地球環境問題に応用しようとしています」。

小口さんが取り組んでいるのは、いわゆる生ゴミから透明な水を作る技術。例えば、どろどろの焼酎の残渣を30分で水と炭酸ガスに変えてしまいます。水は水処理技術で飲料水などの水資源に、炭酸ガスはメタンガスに変換してエネルギー資源として利用できます。処理能力といい、再資源化の可能性といい、将来有望な技術だと考えられます。

スターライトミーティングの最後で、小口さんは子どもたちに「スターライトミーティングにすべて参加した人は、将来火星の別荘に招待します」と話していました。もちろん、冗談ですが、小口さんの頭の中ではあながち冗談だけだったともいえない発言だったようです。

火星の姿。いつの日か、この星に住めるようになるかもしれません。Credit NASA火星の姿。いつの日か、この星に住めるようになるかもしれません。Credit NASA

目次へ移動 第2回スターライトミーティングへ

スターライトミーティング、2日目のプログラムは、お茶の文化館でしずく茶体験と抹茶作り体験。星野村は、茶の名産地。しずく茶とは、ごくごく上等の玉露を茶碗に入れ、50度ほどに冷ましたお湯を20ccほど入れ、2分蒸らし、それに蓋をかぶせながら飲むのです。玉露の甘みが凝縮され、さらにほんのりとした渋みや苦みも加わってえもいえぬ旨味が口の中に拡がります。お茶に含まれるテアニンという物質の甘みです。飲み終わったら、少しずつ熱いお湯を入れ、普通のお茶として飲み、最後はポン酢を入れて食べてしまうのです。抹茶作り体験では、やはり最高級の茶葉を石臼で粉にしていきます。しずく茶は、大人には美味そのものですが、やはり子どもには渋さの方が先に来てしまうようです。その代わり、抹茶作りは大いに盛り上がりました。できあがったお茶は、みんなのおみやげになりました。

ふりかえりを終えて、スターライトミーティング修了証が一人一人に手渡されました。ふりかえりを終えて、スターライトミーティング修了証が一人一人に手渡されました。

さまざまな意義のあるスターライトミーティングですが、参加した子どもたちが星の世界に興味を持つと同時に、何か素敵なものを見つけてくれない限り、何の意味もありません。しかし、それは、ここに紹介した写真を見ていただけば、言葉で説明する必要はないでしょう。スターライトミーティングは、今後、2005年3月、夏、福岡会議開催直前の10月に開催予定です。また、場所などは未定ですが、星野村以外でも開催が検討されています。

地球は、宇宙というスケールから見ると、探し出すのが難しいほどちっぽけな存在です。そして、その上でほんのひととき命を得て暮らしている人間は、それに輪をかけてちっぽけな存在。宇宙のことを知れば知るほど、その感は強まります。しかし、その小ささ、その微細さゆえにひとつひとつの命はかけがえのないものとして映ります。さらに、私たちの存在は、太陽という巨大なパワープラントに支えられ、森の木々に支えられ、さらには、私たちの目では見ることができないほど小さな微生物たち、すべてに支えられています。

宇宙が生まれた際には、宇宙には水素しか存在しなかったといいます。その水素が核融合でヘリウムとなり、気が遠くなるような回数の核爆発を経て、鉄や炭素といった元素が生まれたといわれています。地球は、そうした星くずからの贈り物からできた星。私たちの身体も、そうした星たちの贈り物からできているといえるかもしれません。

宇宙140億年の営みから、瞬時で命を全うする微生物たち。極大から極小へのダイナミズムの中で、ひとつだけいえるのは、すべての存在に価値がある、という事実でしょう。天気のいい夜には、家のあかりをすべて消して、星空をながめてみませんか?

目次へ移動 振り返りシートから

  • 星野茶を飲んだ、作った
  • 星野村は星がいっぱい見えるし、秋のはじめに夏の大三角形もあった
  • いろんな人とともだちになったこと
  • 友だちが、いっぱいできた事
  • 星のかんさつ。たのしかった。いろんなことを初めておしえてもらった
  • ちっちゃい子とかいたし、一番おそくねて、早くおきるのは大変だったと思います。リーダーはたよりがいがあり私たちにやさしくせっしてくれました。パンナリーダーは元気いっぱいなリーダーでした。ありがとうございました
  • 二日間お世話になりました。良い思い出になりました。この二日間のことはぜったい忘れません。おじ、パンナリーダー、マリーダー、たの、かとうさん、なべさん、危険人物さん、いいじまさん、ミッキーさん、こやまさん、ひさださん、本当にどうもありがとう!
  • みんなとなかよくなったよ
  • たのしかった。よるがたのしかった
  • ありがとう。ねたときみんなでせんそうをした
  • おんせんがうれしかった
  • マリーダーへ。また行きたいです。2日間とても楽しかったです。マリーダーどうもありがとう!

加藤久人 略歴
かとうひさと
1957年東京生まれ。立教大学文学部仏文科卒業。有限会社バショウ・ハウス主宰。環境、エネルギー、温暖化対策、リサイクル、「働き方」などに関する執筆活動を通じて、21世紀のライフスタイルを提案している。趣味はウクレレ。著書に『Q.O.L.のためのひとにやさしいものカタログ~ユニバーサルデザインアイテム59+α~』(三修社)など。

文・写真 加藤久人

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