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地球リポート

from アメリカ vol. 68 2014.07.24 世界中のユーザーと共に車をつくる会社。ローカルモーターズ

ローカルモーターズは、2007年に創業された米国の新しい企業です。「ユーザーと一緒に車を作る」という斬新なビジネスモデルで注目を集めています。インターネットを駆使して一般のデザイナーや技術者と共に車を作り、マイクロファクトリーと呼ばれる工場で購入者と共に車を組みあげます。どの段階でもユーザーと「共に創る(コ・クリエイション)」ことを実現すべく、これまでとは一味違った仕組みづくりに挑戦しています。古くなってしまったこれまでの慣習や常識を超えて、時代に適応した新しい価値を生み出し続けているローカルモーターズを訪ねてきました。 (Text by Hidetoshi Fuchigami)

目次へ移動 いざアリゾナへ! マイクロファクトリーを目指して

 「世界中の自動車好きと一緒にインターネットで車を作っている会社がある」 そう聞いた私は驚きました。それは無理でしょうと。車を作るのはそんなに簡単なもんじゃない。購入した家具を自分で組み立てるのだって結構難しいのに、車を作るなんてそんな大それたこと。そう思う一方で、実際に自分の目で見て確かめてみたいという気持ちが抑えられなくなりました。本当だったら面白い。

 百聞は一見にしかず。その会社、ローカルモーターズに行ってみよう。その工場がある米国アリゾナに見に行こう。そう考えた私は、ローカルモーターズのオフィシャルサイトから連絡先を調べ、駄目元で連絡をとってみました。すぐに、「いつでもいいよ、来れる日が決まったら連絡して」というフランクな返信があり、早速、アリゾナに行くことにしました。

 「その味が忘れられずどこで売っているのかを探し求める外国の方が居るくらいだから、海外に行く際は必ず持って行った方が良い」というクチコミ情報の真偽を確かめる時間もないままに、チューイングソフトキャンディ「ハイチュウ」を大量にスーツケースに詰め、アリゾナに向かうことにしました。インターネットで本当に車なんて作っているのだろうか。半信半疑のまま、日本を発ちました。

 アリゾナのフェニックス・スカイハーバー国際空港に降り立ち、レンタカーで、ローカルモーターズの工場、いわゆるマイクロファクトリーに向けて走ります。一本道のハイウェイを約15マイル(約25キロメートル)ほど南下するドライブ。

 アリゾナは、メジャーリーグ球団の春季キャンプ地のメッカです。かつて日本のプロ野球チームも冬の寒さを避けながら、じっくりと体づくりに励むためにアリゾナまで訪れていました。温暖で広大なイメージ。実際にそのイメージ通りの気候と晴天です。大きく開けた幅の広い道を一直線に走ります。20キロほど走ったところでハイウェイの横道に入り、やけに大きなトレーラーとすれ違うアメリカンな雰囲気を満喫しながら車を走らせると、路肩にローカルモーターズの看板を見つけました。高まってくる興奮。

068-001.jpg ローカルモーターズのマイクロファクトリーが近いことを告げる看板

 そこから数分走ると、ありました。ローカルモーターズのマイクロファクトリー。抜けるような青空の下、大地の息吹が感じられる広大な敷地にドーンと鎮座する倉庫のようです。まるで宇宙船が給油のために降り立ったような雰囲気。建物に落ち着きというのもおかしな表現ですが、威厳と余裕のオーラを発しながらも、どこか牧歌的な風情のあるゆったりとした佇まいです。いやがうえにもワクワク感が湧きあがってきます。

068-002.jpg ローカルモーターズのマイクロファクトリー。製造に加えて、オフィスと販売店の機能も併せ持った拠点です

068-003.jpg マイクロファクトリーの玄関口。ドア上方の「A WORLD OF VEHICLE INNOVATIONS」というフレーズからローカルモーターズの志と目線の高さを感じます

目次へ移動 コ・クリエイションの4つのプロセス

 マイクロファクトリーの入り口を中に入ると、メールで連絡を取ったダミアン(Damien Declercq)が出迎えてくれました。ローカルモーターズの新規事業やユーザーと共に創るミッションの責任者です。非常に気さくな笑顔をたたえながら、早速、ローカルモーターズが、どのようにユーザーと共に、車を作っているのかを解説してくれました。

068-004.jpg マイクロファクトリーのエントランス。奥に見えるのはグッズやカーアクセサリーなどを展示販売するコーナー。ファクトリーとショップがコンパクトに一体となっています

 ローカルモーターズが、ユーザーと共に車を作り上げていく過程、すなわちコ・クリエイションのプロセスは、大きく4つの段階に分かれています。

①構想・立案(CREATE)
②開発・進展(DEVELOP)
③組み立て(BUILD)
④調整・修正(MOD)

 まず最初の構想・立案段階(CREATE ITフェーズ)。どんな車を作りたいかという一番最初の段階では、インターネット上のコミュニティで、自動車ファン、エンジニア、デザイナーが協働して自作する車の仕様を決めていきます。ローカルモーターズのウェブサイトでコミュニティに登録したユーザーは、こんな車があったらいいな、というデザインやスケッチを投稿することができます。既に他のメンバーが投稿したデザインやスケッチに、批評や改善案を加えることもできます。

 ローカルモーターズは、プロ、アマ、興味関心があるだけの人、自動車デザイナーになり損ねた人たちも含めて、自動車デザイナーがオリジナルのアイデアやラフスケッチを公開し、好きなデザインに投票するサイトから始まりました。創業者のジェイ・ロジャーズ(John B. Rogers, Jr.)氏がデザイン系の教育機関の先生から、「高度で専門的な教育を受けたけれども、その能力が活かせる職業に就けていない学生」が大勢いることを知ったことも、ローカルモーターズを創業する契機となった重要なエピソードのひとつだそうです。

 現在ではローカルモーターズのコミュニティには120カ国以上からアマチュアの自動車デザイナーやエンジニア、自動車愛好家ら5,000名超が登録しています。ローカルモーターズは、デザインの手がかりになる基本コンセプトやテーマをコミュニティに投げかけたり、月に一度ペースでデザイン・コンペティションを催すなどして、投稿される膨大なデザインやスケッチから良いものを見落とさないように工夫し、ベストの選択ができるようにしています。

 2010年11月にローカルモーターズの最初の販売車として世に出たオフロードレース用自動車「ラリーファイター」は、100カ国以上の国の2,900名ほどのコミュニティメンバーが投稿した35,000にものぼるデザイン、スケッチのなかから選ばれた、当時学生だったサンホ・キム(Sangho Kim)氏の構想したスケッチが基になっています。

068-005.jpg 構想・立案段階(CREATE ITフェーズ)では、ソーシャルネットワークでのクチコミなど、ユーザーの声や反応を可視化して、次の開発・進展段階(DEVELOP ITフェーズ)へと進めるか否かの重要な判断材料にしています。ユーザーの声や反応を重要視することは、これから創る製品の潜在的な需要の量的な面を、市場投入前に効率的に把握することにも役立っています

 このような過程を経て、ベストだと判断されたデザインは、第2の開発・進展段階(DEVELOP ITフェーズ)に移ります。ここでは、製造と販売を具現化するためにコンセプトや実現性の検証、技術的な検討が行われます。ここでもコミュニティメンバーは、車の詳細やデザインについて賛否を表明することができます。

 次の組立段階(BUILD ITフェーズ)に移ると、コミュニティメンバーは、車体のスキンデザインや、実装されれば購入したいオプションなどについての意見や要望を投稿することができます。

 最後の調整・修正段階(MOD ITフェーズ)では、車のアクセサリーや他の微修正についての意見や要望を投稿することができます。

068-006.jpg組み立て段階(BUILD ITフェーズ)や調整・修正段階(MOD ITフェーズ)でもコミュニティメンバーとなったユーザーと共に作り上げていきます

068-007.jpgコミュニティメンバーとなったユーザーが投稿したラフスケッチ。コミュニティメンバーは、世界中に分散していながらも、しなやかな絆で繋がったローカルモーターズのブレーンスタッフのようです




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ひとりひとりの貢献とチームワーク

 「みんなで一緒に車を作るなんて、利益の配分や貢献度はどう測るのか?」という私の質問に、ダミアンは、「来たぞ、お約束のその質問!」とでも言いたげに、ニヤリとしながらもさわやかな笑顔で、こう答えてくれました。

 「コ・クリエイションで車を作る場合、知的所有権の扱いや貢献度をどう測るのかとよく聞かれるんだ。ラリーファイターの例だと、デザインしたサンホ・キムは、最初に描いた草案がローカルモーターズが開催した自動車デザインコンテストで最優秀賞を受賞した際に賞金を手に入れ、実際にラリーファイターが商品化した際にさらに報償を手に入れた。ただ、その構想とビジュアルを示したサンホ・キムだけが寄与したわけではない。専門的かつ技術的な貢献をする人間や、問題提起をしてプロジェクトを活性化させる人間、ジョークを言ってコミュニティを和ませることで貢献する人間もいれば、マイクロファクトリーでコーヒーを汲んで配り、皆の結束を高めてくれる人間もいる。そういう人々がそれぞれ、コミュニティに貢献しているんだよ」

068-008.jpgローカルモーターズのインターネット上のコミュニティを運営するオフィス。少数精鋭のスタッフにより、非常に集中した無駄のない効率的な本部運営がされているようです

068-009.jpg「ラリーファイター」のラフスケッチ。ユーザーの思い描く世界観や大まかなコンセプトから全てがスタートします

目次へ移動  シャーシ設計 -プロフェッショナルの出番

 自動車の形状やスタイルを決める部分は、ユーザーが中心になって車の構想を固めていきます。その一方で、ローカルモーターズの社員は、コラボレーションで生まれた価値の取りまとめと調整、顧客の教育などの裏方に徹します。加えて、性能、安全性、製造性に欠くことのできない要素の検証や実現の方策を練ります。プロフェッショナルであるローカルモーターズの社員が、実現性や安全性に関わる高度な専門領域を取り扱うことで、実際の車の生産が可能になっています。

 例えば、軽量で安全性の高いシャーシ(車台)はローカルモーターズ社員の手で開発、製造され、コミュニティでのデザインがこのシャーシの上に搭載されます。自社ではシャーシ(車台)のみを生産し、それ以外の部品はほぼすべて外部調達しています。例えば、ラリーファイターの駆動系統はBMWでも使われているものですし、タイヤの上の衝撃吸収用部品は、フォードのダートレース向け車種でも使われているもの、ラリーファイター全体の衝撃吸収機構は、メルセデスベンツでも使われているものと同じものを採用しています。

068-010.jpgローカルモーターズの社員が高い専門知識と熟練の技術を駆使して、シャーシ(車台)構造の設計と実製作を行います

068-011.jpg車の中核部品(エンジンと動力伝達系統)

目次へ移動 安全性の追求 -エクストリーム・ドライブ!

 「準備ができたから、いったん、工場の外についてきてほしいんだ」とダミアンに促されるままについていくと、そこに、ラリーファイターがブーンっと入ってきて横付けされました。

「さあ、行こう!」
「え?」
「自分たちの作る車の安全性、色々な走行に耐えられるかどうかには、非常に気を配っているんだ。さあ、乗って!」

068-012.jpg颯爽と現れるラリーファイター。登場の演出もなかなかキマッています

ラリーファイターに試乗!

 ローカルモーターズでは耐久性や安全性も自社でチェックするために、エンジニアでもあり、本格的な腕前のレーシングドライバーでもある社員が自ら、オフロードでのドリフト走行など、車に負荷のかかるスタントドライブも行っているのです。

目次へ移動 マイクロファクトリーでの組み立て -Build Floor

 製品化が完了し、販売するに至った後でも、ローカルモーターズは、ユーザーと共に車を作ります。車の購入者がマイクロファクトリーに来て自ら組み立てるのです。車を作ったことのない初心者(ほとんどがそうでしょ!)でも、ローカルモーターズの熟練工が付添って、技術指導や車づくりのノウハウを伝授します。

 例えば「ラリーファイター」の場合、空港からマイクロファクトリーまでの送迎、近隣ホテルの宿泊、食事が含まれる6日間みっちりの組立実習を行い、完成後のラリーファイターに乗って帰るという具合です。

068-013.jpgマイクロファクトリーの「Build Floor」。平日のAM8時~PM5時30分までオープンしています。車を構成する部品、カーラッピング装飾に使用されるフィルムや、炭素繊維材料などが備えられており、カラフルで賑やかな装いです。コーヒーブレイクのスペースもあり、ユーザー同士、ユーザーとローカルモーターズ社員などの実際の交流が行われています

068-014.jpg組立に必要な工具類が常備されています

068-015.jpg部品同士を結合するナットやボルト、配線などが収納されています

068-017.jpg製造のラインがあるわけではなく、一台一台を手作業で取り扱っています。天井には世界各国の国旗が掲げられています。ローカルモーターズのコミュニティメンバーが120カ国以上で構成されているグローバルコミュニティであることが思い出されます




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ユーザーと共に -Made by you in America

 当初の好奇心に加えて、感心や納得、称賛の思いにすっかり言葉数が少なくなってしまいました。

 工場内をいちいち「うーん、なるほどー」と唸りながら見て回る私に、ダミアンは工場内のディスプレイを示します。

 「初心者でもわかるように車の作り方、構成する部品の知識、工具の使い方について、車を作る順番に沿ってこうやって公開しているんだよ」

 これにはダメ押しをされました。
「顧客志向」、「お客様側の目線に立って」という言葉は最も重要な格言であり金言でもあると思いますが、ここまで徹底して顧客の立場に立って、顧客の気持ちになって、顧客のために各種の情報や知識を惜しげもなく開示するという姿勢に感動を覚えました。

068-018.jpg購入者がマイクロファクトリーで実施する内容について、日ごとに詳述された項目リストが公開されています。使用部品や部材の内容が、初心者でも理解できるように詳述されています。実施内容が混み入っている場合は、動画解説が収録されています

 工場内がとてもいい雰囲気のため、あちこちウロチョロと見て回っていたところ、置いてある車の後部に目を奪われました。

 Made by you in America

 その刻印には、「あなたが自ら作った車なんだよ」「あなたは自分自身の手で車を作れるんだよ」という励ましや勇気づけのニュアンスが込められ、優しく語りかけられているような気がしました。そして、その言葉には、できあがった最終製品という物体としての価値もさることながら、それを作り上げるために学んだこと、スパナに力を込めたこと、週末の時間をやりくりしたこと、組みあがっていく喜び、マイクロファクトリーでの大勢の人との交流、最終的に完成した時の感動。そのように過ごした経験や体験の素晴らしい価値が、「Made by you in Amarica」というフレーズに凝縮されているように感じました(私が作ったわけではないにも関わらず、あたかも自分がそのような豊かな体験をしたかのように感じ入ってしまいました)。

068-019.jpgラリーファイターの後部

068-020.jpg後部に刻印された「Made by you in America」

目次へ移動 イノベーションのプラットフォーム - LM Labs

068-022.jpgマイクロファクトリーの研究場「LM Labs」。平日は正午~PM9時まで、土曜はAM10時からPM4時までオープンしています。「LM Labs」では、ユーザーとローカルモーターズ社員がコミュニティメンバーの同士、アイデアをカタチにしていく同士として、フラットに混じり合って活動し、新しいアイデアや構想が試作されていきます。試行錯誤しながらカタチにしていくために必要なスペースや機材、道具などが取り揃えられています

 「ラリーファイター」だけではありません。あちらこちらに、違う車やオートバイ、自転車、ドローン(無人ラジコン飛行機)のような色々な乗り物がありました。ローカルモーターズは車だけでなく、乗り物を広く捉えて幾つものプロジェクトを興しているのです。感心する私に、ダミアンはこう語りかけました。

 「われわれはイノベーションのプラットフォームを作っているんだ。自動車の自作キット(Rally Fighter in a Box) やオープンソースで作る電気スケボー(Open source electric skateboard)、3Dプリンターで車をつくる(3D Printed Car Design Challenge)など、色々なプロジェクトを興しているんだよ」

 「電気自動車の時代になると、もっと面白い。エンジン自動車にも増して、電気自動車になるとソフトウェアで車のほとんどの駆動系を制御するようになる。そうなると、デザインだけでなく、色々なソフトウェアがより重要になってくる。いまは、乗れば乗るほど、車も劣化していきがちだけれど、これからは違う。ソフトウェアの更新で、自分たちで作った時よりも、乗れば乗るほど車がアップデートされていく時代になる。ソフトウェアこそ、オープンソースコミュニティで作れるメリットがある。ソフトウェアを作ることができるコミュニティの力はもっと強くなると思う。こうしたコミュニティとの信頼関係や、コミュニティを運営するノウハウを育てている我々の優位性は高まっていくと思う

 「インターネット上で車をデザインし、地元の工場で、最先端の材料を使って車を作る。そして、インターネットで、ソフトウェアをどんどん更新し、作った時よりも性能の上がっていく車に乗る。そういうビジネスモデル。大切なのは顧客との関係の維持なんだよ。そのためには地域に根を下ろす必要がある。顧客と共に何かを作り上げるためには、デザインでも組立でも改良でも工程改善でも、何にせよ、顧客と物理的に触れ合う必要がある。そのためにマイクロファクトリーが必要になるんだ」

068-021.jpg(左上)オートバイ「Racer」青 (右上)「Racer」白 (左中)エンジン付き自転車「Cruiser」 (右中)ドリフト用三輪車「Verrado」 (左下)3Dプリンターで作る車プロジェクトの模型 (右下)二人乗りのオープンカー「Open Tandem project」

目次へ移動 コミュニティをつくること ー「知的余剰」を集める

 マイクロファクトリーを隅から隅まで案内してもらったその後、ダミアンと色々な意見交換をしました。最後にダミアンに聞きました。

 「日本でこのようなビジネスを興そうとした場合に、まず、何をすべきだと思いますか」

 ダミアンは即答でした。
「まずは、コミュニティをつくることだよ」

 「日本で、ローカルモーターズのような顧客と共に製品開発を行い、価値を提供する営みを成功させるために、まず最初にすべきことは、『コミュニティ』を作ることだよ。情熱を持った人々のコミュニティ。世界中に、高いレベルの教育や訓練を受け、高いモチベーションを持っているにも関わらず使われていない『知的な余剰(Cognitive Surplus)』が頭の中にあって、それを喜んでコミュニティや自分以外の人や目的のために奉仕する人々がたくさんいる。そういった『知的な余剰』を集められるコミュニティが最も大切なんだよ」

 「ローカルモーターズでは、デザイン、技術、付属品、ブランディングに至るまで、インターネット上のコミュニティで誰もが気軽にアイデアを提案できる環境を整えている。顧客や協力者が価値の創造に参加できる大きなコミュニティを作れば、それは会社の一部となり、競争力を高める原動力になる。他社の商品やサービスは簡単に模倣できても、仲間やパートナーとして、会社のためを思って行動や貢献をする人々を集めたコミュニティを真似しようと思っても、そう簡単には作れないんだ」

 「インターネット上で多くのコミュニティがある。ただ、リアルの活動に優るものはない。人が実際に集い、同じ時間と空間を共に過ごすことは大切なんだ。コミュニティメンバーは、最後の組立をマイクロファクトリーで自分でやる。もちろん、ローカルモーターズのプロが、初心者でも組立られるようにお膳立てし、導く。マイクロファクトリーで顔を合わせ、空間と時間を共有することは普通のネット企業にはなかなかできないことだ」

 「コミュニティは製品を開発し、また顧客にもなる。ラリーファイターの場合も、大企業ならデザインに2年、製造に6年ほどかかりそうだけど、インターネットのコミュニティでデザインは約3カ月で完成し、14か月で製造ができた。インターネットコミュニティではデザインが速く、安く、より良く開発される。しかもそれだけでなく、既に製品の市場調査が済んでいる。なぜなら、コミュニティ自身が開発した製品だから、当然、コミュニティが気に入るものとなる」

 「いつかローカルモーターズの工場がコミュニティメンバーの住む様々な地域に分散され、注文に応じて作られ、地元のディーラーとして活躍するようになれば嬉しいよ。ネットコミュニティで世界中の人々と協力してデザインし、自分が関わった車を地元のマイクロファクトリーで組み立てる。故障したら自分で修理し、乗らなくなった車はマイクロファクトリーに戻してリサイクルに協力する。新しく車を組立てようとしている人がいたら手伝ってあげればいい。そうなれば、地域も潤うし、楽しいし、人と人との結束が強くなると思うよ」

068-023.jpgダミアンとの議論・意見交換。明快かつ説得力のあるビジョンに強い感銘を受けました




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おわりに -面白さ、明るさ、遊び心の大切さ

 ローカルモーターズの取り組みと、そこから得られる示唆のひとつひとつは、モノの溢れかえった成熟社会、「受益者として、誰かにしてもらってあたりまえ」の感覚が染み付いてしまった、消費者神様社会の凍てついた消費マインドを溶かすヒントになりそうです。

 何よりも、人間と人間が知恵を出し合って新たな価値を作りだしていくということの面白さ、明るさ、遊び心、エンジョイライフの精神に満ち満ちています。これからの時代は、そういった精神が根本的に大切だと感じています。

068-025.jpgここには、いつまでも居続けたくなるような心ときめく雰囲気と居心地の良さがあります

 まずは、自分で手を動かしてみること、行動することから始めよう。なんでも体感してやろう。飛び込んでみよう。自分から湧き上がってくるであろう内発的な感情に耳を傾けてみよう。そして、心を開放し、オープンマインドで偶然の導き、出会いをも受け入れていこう。おそらく、そういう基本的な心構えがあってはじめて、新しいコミュニティや新しいチームを築いていくことができるんだと直感しています。

 ダミアンの笑顔に見送られながらアリゾナを後にする時には確信していました。これは、単なる趣味の世界で終わりじゃないな。「インターネットで車を作るなんて」と感じていた半信半疑な気持ちはすっかりと消えていました。

 日本へ帰国した後すぐにダミアンから一通のメールが届きました。日本を発つ時に抱いていたもうひとつの半信半疑な気持ちもこれで解消されました。
 The team loves the Japanese sweets!!!!
マイクロファクトリーのみんなは、日本のスイーツが大のお気に入りだよ!

068-024.jpg大きな青空の下のマイクロファクトリー

参考サイト:
ローカル・モータース(http://localmotors.com

淵上英敏・略歴
1975年兵庫県生まれ。日本電信電話株式会社を経て、2007年に株式会社ガーコを創業。コンサルティング・ビジネスプロデュース業務に奮闘している。専門領域は、戦略論、新規事業開発、プロジェクトマネジメント、コンテンツビジネス、メディアとネットの融合。経済産業省「コンテンツビジネスモデル研究会」委員、経済産業省「コンテンツビジネスフォーマット研究会」委員、総務省 独立行政法人情報通信研究機構「ICT ベンチャー支援アドバイザリー会議」委員などを歴任。修士(経営学)筑波大学。


取材・文・写真:淵上英敏

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