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地球リポート

from ブラジル vol. 39 2008.04.16 世界最大の熱帯林、アマゾンからのメッセージ

総面積約700万平方キロメートル、南米9カ国にまたがり、日本の国土の20倍近い広さを誇る世界最大の熱帯雨林・アマゾン。30年以上前から続く乱開発によって森は年々減り続けており、さらに気候変動の要素もからんで、2030年までに最大で60%の森が消滅または破壊されるという報告もあります。こうした危機を伝える数字や森林破壊のショッキングな映像はたびたび見聞きするものの、詳細な情報が少なく、実感がわかないという人もいませんか? 今回は、広いアマゾンの一端ではありますが、実際に行われている森林管理や生態系を守る取り組みを紹介しつつ、アマゾンの“いま”を、お伝えします。

上部へ移動 年間1万8000平方キロの森が消失

アマゾン川の恵みを受けた森林地帯には、4000以上の樹種、約6万種の植物、1000種以上の鳥類、300種以上の哺乳類が生息し、地球上の種の4分の1が存在するといわれています。ここで大規模な森林破壊が始まったのは1970年代。当時、国として大きな債務を抱えていたブラジルは、未開の地が多かったアマゾンに道をつけて人を住まわせ、開発を推進しました。全長5,500kmにも及ぶ横断道路の建設が、牧場開拓や鉱山開発、ダム開発を加速し、80年代には、急速な森林破壊と先住民族・インディオに対する生活、文化の侵害が国際的な問題になりました。現在も、年によって増減はあるものの、いまだに年平均約1万8,000平方キロメートルの森林が毎年失われ、先住民族に対する圧迫も続いています。
これほど長きにわたって注目を集めているのに、根本的な解決の道がなかなか見つからないのはなぜだろう? ... そんな疑問を抱きながら、アマゾンの河口、ベレンを出発し南西の街、タイランジャに向かいました。

ブラジル、ペルー、ボリビア、パラグアイ、コロンビア、べネズエラ、ガイアナ、スリナム、フランス領ギアナにまたがったアマゾン川流域一帯を「アマゾン熱帯雨林」と呼びます。アマゾンだけで、南米大陸の40%を占めるほどの大きさです。そのうち約70%がブラジル領にあるため、多くの場合、アマゾンというとブラジル領アマゾンを指すことが多くなっています。今回取材に訪れたのもブラジルです。リポート内では、特に説明がない限り、ブラジル領アマゾンをアマゾンと表記しています。

上部へ移動 もったいない!土地の使われ方

街はずれの橋を渡ったあたりから、家もほとんど見当たらなくなり、まわりの景色がだんだん変化してきます。衛星写真などで目にするように、開発は道沿いに進みます。しばらく車で走ると、切り拓かれたアマゾンのさまざまな姿が見えてきました。

■アマゾン熱帯林破壊の跡(JAXA 地球観測研究センター)
http://www.eorc.jaxa.jp/imgdata/topics/2003/tp030829.html

上部へ移動 アブラヤシのプランテーション

パーム油を採るためのアブラヤシは、いたる所に植えられていました。パーム油は精製され、植物油、バイオ燃料、石けんなどに姿を変えて、私たちの生活に届けられます。植物原料なので「環境にやさしい」というキャッチフレーズをよく聞きますね。確かに、原料としては自然素材なので人の身体には「やさしい」ですし、私たちの生活には欠かせないもののひとつです。しかし同時に、過剰な開発は、生産現場である熱帯林の消失にもつながる可能性があることを意識しなければなりません。(日本はマレーシアからの輸入がほとんどで、アブラヤシ栽培による熱帯林破壊の問題は、現在、マレーシアやインドネシアで深刻といわれています。)

■「パーム(椰子)油とCSR」開催報告(地球・人間環境フォーラム)
http://www.gef.or.jp/activity/economy/sustainable/palmoil2007_report.html

上部へ移動 牧場

遠くで土煙があがっていたので「何だろう?」と車を止めると、それは広大な牧場! 土煙のように見えていたのは、何千頭もいる牛の移動で生じたものでした。これまでのアマゾン森林破壊の最大の原因は、肉牛のための牧場開拓です。2000年から2005年までの森林消失原因の6割は、牛の牧畜によるものといわれています。森を切り拓いて土地を焼き、牛を放牧するのが1年目。2 年目くらいから土地が少しずつやせてきて生産性が減り、牛の数も増えていくので、新たに森を拓いて牧場を増やす・・・これの繰り返しで、アマゾンの森が減っていったのです。最近は、草が生えなくなった牧草地を耕して、再び牧草地として使う牧場管理も行われているようです。また、以前は牛を1000頭飼っていれば牧場を運営するには十分だったのが、牛の値が下がって、いまでは4000-5000頭必要になってきているのだという話も聞きました。

上部へ移動 製材所

タイランジャ近くの道路沿いには、たくさんの製材所がありました。木材業者に限りませんが、アマゾンでは土地を所有する場合、原則としてその80%の森林を保全しなければなりません。でも、実際はその通りにいかないところが多いようです。インバゾンと呼ばれる、他人の土地に勝手に入りこむ土地なし農民が木を切って焼き畑等をして、しばらくして収穫できなくなると土地を放棄して他に移動するというのはよくあること。わざとインバゾンに土地を切り拓かせたうえで、土地を横取りしたり、違法伐採や農地転換をしてしまう人もいるのだとか。また、業者が役人にリベートを渡せば、簡単に取り締まりの穴をくぐり抜けられてしまうという現実もあるようです。

上部へ移動 植林地

牧場主が銀行の融資を受けて行っているユーカリ植林地の脇を通り過ぎました。面積あたりの利益を考えると、牧場が200-300レアル/年/ha、ユーカリ植林が800-1000レアル/年/ha(アマゾン南西部の場合)なので、植林に挑戦する牧場主もいるのです。ブラジルの法律の解釈によっては、原生林に生えている樹種を植林したら2割しか伐採が認められなくなることもあり得るけれども、ユーカリなど外来種の植林はその心配がないのです。

※1レアル=約60円

上部へ移動 農地、焼き畑

取材時期が、ちょうど種まき前だったため、農地にはほとんど何も植わっていない状況でした。いま、牧場開拓、木材伐採に続くアマゾン森林破壊の脅威は、ヨーロッパや急速に経済成長を遂げる中国に対する輸出用大豆のための大規模農地開拓だといわれています。栽培面積は、まだアマゾン全体の1.5%ほどですが、世界の需要増加に比例して、トウモロコシ、サトウキビ栽培も含めた農地化の勢いは増しています。

牧場跡地や再生林を焼き畑しているところ。焼き畑のために、自然の森林がいとも簡単に切り倒され、材木として利用されることもなく焼かれてしまうことも。

上部へ移動 炭焼き

アマゾンで見ることになるとは思っていなかった炭焼き窯。主に近くにある製鉄所の燃料になります。とある炭窯で聞いたところ、作業員の収入は釜に入れるのに一基あたり20レアル。釜から出すのに10レアル。ひとりで一日2基くらいできるので、60レアル(約3400円)の稼ぎになるとのこと。ちなみに、1基からできる炭を売ると、100レアル(約5700円)くらいのもうけになるそうです。

上部へ移動 放棄地

アマゾンを走っていて、「なんてもったいないんだろう!」と感じる瞬間が何度もありました。もともと熱帯林の土壌は浅く、数年で作物が採れなくなったり牧草の生育が悪くなるので、その度に土地は放棄されどんどん新しく森が切られていきます。現在、 NGOや政府が土地を有効に利用するための指導をしているとのことですが、まだ開発のスピードには追いついていません。世界32カ国で生態系保全の活動を行っている世界的環境NGO『ザ・ネイチャー・コンサーバンシー』のフィールドコーディネーター、ジョゼ・ベニット・ゲレイロさん曰く「たとえここに住む人たちの経済的自立を考慮したとしても、これ以上、森を切り拓く必要はないのです。放棄地を有効に活用すれば、現在の人口3300万人は食べていける」とのこと。土地の適正管理が、今のアマゾンには本当に必要なのです。

上部へ移動 森を管理する試み

報道などを見ていると、残念ながら森林破壊の絶望的な状況ばかり目にすることが多いのは確か。でも、少しずつですが、きちんと森を管理して活かしていこうという取り組みも行われています。その中のひとつ、ブラジルで最大規模のFSC認証(適正な森林管理を認証する制度)の森づくりをしているブラジルの木材加工、合板メーカー、CIKELの森林管理の現場を訪ねました。

ブラジル政府が「公式に」定めている森林管理に従って森林伐採を行うためには、毎年樹種を記録し、切る木の位置を地図に示していかなければなりませんが、相当な手間がかかるので書類はいい加減に作られてしまうことが多いとのこと。FSCの場合はさらに詳細な社会責任認証が必要なので、取り組んでいる企業はまだ多くはありません。CIKELの林業技師、ライムンド・ノイナートさんにお話を聞きました。

上部へ移動 適切な森林管理をすれば森は活かせる

FSC認証の取り組みを始めたのは2000年からだそうですね。きっかけは何ですか?

もともと森林管理は行っていましたが、欧米や国内の顧客に、よりしっかりやっていることをアピールするためです。会社のイメージ向上につながりますし。

活動していて大変なことはありますか?

IBAMA(ブラジル環境・再生可能天然資源院)も要求しないような、より高度な環境面、社会面の配慮をしなければならないことですね。最初は私たちスタッフも戸惑いました。

どのくらいの規模の森林管理を行っているのですか?

ライムンド・ノイナートさん「林業にたずさわる前、カカオ栽培でアグロフォレストリーを勉強したときに、持続可能な森林管理に関心をもったんです」

現在、20万ヘクタールで5つの森林管理プロジェクトを行っています。FSC認証を取っていないエリアもありますが、トータルで考えるとブラジルで最大規模のFSC認証の森林を持っていることになります。このプロジェクトは、キャタピラー社など、アメリカの企業が資金を出してつくっている、持続可能な森林管理をするための財団(Tropical Forest Foundation)のサポートを受けています。伐採は30年周期なので、同じ森で次の伐採を迎えるまでにはほど遠い段階ですが、アマゾンの森林管理の先駆けとなっています。管理を行うスタッフは、財団が定期的に行っているFSC研修を全員受け、現場の作業員には、FSCの研修を受けた指導員が技術指導を行っています。

今回訪れたCIKELが管理するリオカッピンの森。全部で16万7千ヘクタールの森林管理を行っています。森に分け入っても伐採の痕跡を見つけるのに一苦労するほど、原生林と見分けがつきません。

リオカッピンの森林管理地域の地図を見せていただきました。白い部分はまだ手を付けていない森。黄色は牧場で、現在、植林地になりつつあるところ。緑が伐採済みのFSC認証林で、紫はFSC認証林でない伐採済みの森林管理地。水色は伐採許可を得ているところです。

どのような管理を行っているのでしょう?

衛星データを使ったマクロの計画をもとにフィールド調査を行い、伐採前と直後、そして3年・5年・8年後の生態系の経過を詳しくモニタリングしています。植生調査については、1000ヘクタールに1ヘクタールの割合で調査地を設け、そこで直径10センチ以上ある木をすべて記録していくという方法です。適切な森林管理をすれば、森が再生することがわかりました。以前は牧場だったところが2-3年で森に戻った例もあります。CIKELの森林管理地にはナマケモノやサルなどの動物たちも住んでいて、作業員の中にはヒョウを見かけた人もいるんですよ。

FSC 認証は取っていませんが、2003年に伐採を行った森を見せていただきました。切った跡を探すのが困難なくらい、すっかり生い茂った森。きちんとした切り方をしていると、2-3年で伐採の跡がわからないくらいにもと通りになるとのこと。伐採によって地表に光が届くと、若木の状態で長年(時には50年くらい)出番を待っていた木が生長するのだとか。

目次へ移動 持続可能な森林管理には政府と買う側の協力が必要

ちょうど、FSC認証の森から1ヶ月前に切った木を森から運び出す作業をしていました。3人一組でスキッダと呼ばれるトラクターの通る道を決め図面でわかるようにしておき、スキッダで倒れている木をどかしたりしながら、丸太を集材場に集めます。

太い車輪と頑丈な車体で道なき道を、ちょっとした木はなぎ倒して入っていく森林トラクター「スキッダ」。切り出した木を一度に2-3本つかんで集材場まで引きずっていき、反対側のブレード(排土板)部分で材木の山に器用に押し上げていきます。

これから、持続可能な森林管理は広がっていくでしょうか。

この先、行政が前向きに取り組んでくれるかどうかが大きいと思います。森林管理は、とても根気のいる作業なんです。(アマゾンの木材伐採は本来すべて許可制なのですが、)行政に伐採の申請を出してから許可がおりるまで3ヶ月、あるいはそれ以上かかるので、企業経営がとても左右されます。2005年には、行政の停滞でひとつも伐採許可が下りず、森林管理・木材業を辞めてしまった企業がありました。CIKELがFSC認証を取っていることは許可までの期間が早まるという利点があり、融資を受ける際にも有利になっています。 また、始めた当初は市場が追いついていなくて高く売れませんでしたが、今ではFSC木材を専門に扱う問屋もあり、通常の30-40%高く売れています。オランダ等、国によっては認証つきではないと買わないところもあるので、需要はあると感じています。

政府の伐採許可を得るのはとても難しいので、法律に則ってやろうとすると、森の仕事にかけるよりも手続きや官庁とのやりとりのために使うお金、煩雑な手間が多いのが現実。それが、違法伐採を引き起こす一因にもなっているはず。100点満点中40-50点の森林管理でも、皆伐して無になってしまうより良いのではないでしょうか。CIKELで行われているような森林管理がさらに広がるように、行政や材木を買う側の理解を深める必要があると感じました。

森の中にある従業員の宿泊施設。ここで36人の森林従業員と炭焼き労働者90人が暮らしています。救護室、食堂、サッカー場、テレビ室、訪問者が宿泊する施設などがそろい、字が読めない人用の学校もあります。労働者は1ヶ月に22日連続で働いて8日間の休みをとります。

453日無事故の看板。最高は742日間。安全看板には「この数値が向上するように協力を」というスローガン。従業員の安全管理もFSC認証のルールのひとつです。

目次へ移動 将来世代の育成も

CIKEL には、農業高校、農業大学の学生がよく見学にくるそうです。林業専門の生徒は3-6日くらい滞在して研修することや、6ヶ月の実習を受けることもあるのだとか。近隣の学校からは、年6回、生徒が見学に訪れています。研究者も含め、月に4-5回の視察受け入れを行うなど、アマゾンの森林管理への理解を広げ、将来世代を育てるために、積極的な情報公開を行っている姿勢が伺えました。

■CIKEL
http://www.cikel.com.br/

目次へ移動 子どもに未来を託す

子どもたちにも大人気!の佐藤卓司さん

「これはインガー。種のまわりの白い実が食べられる。クプアスーはカカオの親戚で、あっちはパリカという豆科の木。インバウーバ(セクロピア)はナマケモノの好物で、種から育てようとすると大変だけど、自然の力でちゃんと生えてくる。森を切り払って焼いてしまっても、自然には再生能力がある。」

森を歩きながら、次々とアマゾンの木について語ってくれたのは、佐藤卓司さん。主に子どもたちに向けて「アマゾンの森を知り、護り、活かす」ためのきっかけづくりをしているブラジルのNPO・ASFLORA(アマゾン森林友の協会)のスタッフです。東京農業大学拓殖学科を卒業後、1971年にブラジルに渡り、長年、日本の合板メーカーに勤め、企業内の森林管理や植林事業を手がけてこられました。退職後は、ASFLORAのスタッフとして、子どもたちの環境教育に力を入れています。30年間、アマゾンで企業の森づくりを進めてきた佐藤さんが、なぜ今、子どもたちに森を守ることの大切さを伝えているのか・・・ ASFLORAの活動に込める思いをお聞きしました。

ASFLORAは、もともと合板メーカーで行っていた環境教育、植樹活動を独立させたとのことですが、企業を離れてもなお、活動を続けようと思った一番の動機はなんですか?

やっぱりおもしろかったからじゃないかな。普通の植林(商業植林)はどこでも行いますが、ASFLORAは、植物生態学者の宮脇昭さんが提唱している、その土地本来の樹種を使った「ふるさとの森つくり」を進めています。商業植林の森はきれいに整列していますが、それだと森の中に入ってもおもしろいということはないでしょう!? 自然に近い森を造り、その森を歩くと、競合しつつ共生し育っていく森が見られるんです。人間も、みんな同じではつまらない。いろんな人がいるからおもしろいのと一緒です。

民間で環境造林事業を行っていても景気や経営者の意向に左右されて、途中で土地を売ったりせっかくできた森でも伐採されたりすることがあります。でも、子どもたちと接して、環境って何? 木材って何? 森を護るって何? と話しながら何か小さなことを与えていけば、少しは森を知り、護る気持ちを持たせられるような気がするんです。その子たちが大きくなって「こんなことがあったなぁ」と思い出してもらえる。そのほうが長続きするのではないかなと思ったんです。これまでの植樹活動は植林面積にしたらほんのわずかですが、それに関わった大勢の人たちに何か残ればいいなと思っています。

■ASFLORA(アマゾン森林友の協会)
http://www.eco-future.net/eco/brazil.html

■ASFLORA:2007年度活動報告
http://www.eco-future.net/eco/brazil_hokoku.html

■MOTTAINAI:海外で初の植林 ブラジルの小学生、苗木1000本
http://mainichi.jp/life/ecology/archive/news/2008/03/20080308dde041040052000c.html
(ASFLORAの活動のひとつです)

ASFLORAの植林風景。子どもたちは、学校単位または地域単位で参加しています。

ASFLORAの人気メニュー「森の劇」。学校向けだけでなく、鉱山会社に頼まれて、コミュニティの人や子どもたちに見せるということも。

佐藤さんに、アマゾンの現状について一番何を伝えたいかをお聞きすると、こんな答えが返ってきました。

ただ保全しろと言っているだけでは森は残りません。森を残そうと思ったら、管理を続け、森の価値が出て、お金を生むような使い方をしなければならないと思います。森に価値が出ないと、すぐ焼いて作物を植えるような使い方をされてしまう。一時的な利用のために木を切ってトウモロコシを植えたり牧草地にしたりして、手入れができず生産者価格が下がるとすぐに放棄されてしまう。土地問題は非常に難しく、建前や法律の言葉だけでは解決しないことがいっぱいあるんです。太い木が切られる象徴的な映像だけ見て、「単に木を切るな」と言うのではなく、その背景について知ってほしいのです。

牧場、農地、森林にしても、適正管理が必要。アマゾンの森林破壊を食い止めるためにすべきことを考えたとき、常に行き着く答えはここでした。コストが上がるかもしれませんが、誰かが負担しなければ、「アマゾンを守れ」という言葉が空虚に聞こえるだけになってしまう、と思いました。

目次へ移動 「アマゾンの環境を守ろう」と言うだけでなく

空路でアマゾン内陸部の拠点・マナウスを目指し、初めて「アマゾン」を目にしたとき、その広大な森の姿とゆったりとした川の流れに、思わず感嘆の声を上げていました。ところどころ、道路や鉱山開発、伐採の痕跡が見られるものの、アマゾンのスケールの大きさは想像以上でした。目の前にこれだけの森が広がっていれば、「少しくらい切っても大丈夫だろう」と、つい思ってしまう人がいてもおかしくはないなと感じるほど。日本では大規模開発といわれる規模でも、アマゾンだと小規模に見えるかもしれません。でも、その小さな一つひとつが増えていけば、インパクトは大きいのです。大地主、大企業による農地開発や森林伐採が行われていることも事実。もともとアマゾンで暮らしていた先住民族の人たちの生活・文化が絶たれ、誇りを失っている姿も目にしました。衛星観測などを使ってアマゾン全体を常に把握し、そこで生活する人たちにもルールを守ってもらいつつ、自立した生活ができるような経済をつくっていくことが、本当に大切なことだと、強く思いました。そして、そのためには、食糧や林産物、鉱物資源など、アマゾンの恵みをさまざまな形で受けている私たち日本人も、ルールを守って輸入された商品を手にするように、意識していくことが必要ではないでしょうか。

日系移民二世で、日本にも輸出をしているパラ州トメアスのジュース工場の専務・イバン・サエキさんは、アマゾンに関する偏った報道と人々の認識に、違和感を覚えていました。
「もちろん、ここにある財産(自然の資源)を何でも切り崩していいわけではないと思う。でも、どうしてアマゾンだけ守れと言うのか。ここにはジャングルとインディオしかいないと思われている。守ってほしいなら、世界中の人がアマゾンに対し何かしてくれるのか。生活を保障してくれるのか」と。

また、前述のネイチャー・コンサーバンシー、ゲレイロさんは、「アマゾンの森は守らなければならない」という議論が、ときにそこに住む人々のことを置き忘れた議論になっていることに異論を投げかけます。「まずは、アマゾンの恵みがないと暮らせないアマゾンで暮らす人々のことを考え、そしてブラジル全体の生態系を守ることを考え、そして、世界の課題としてアマゾンを捉えるべきだ。あなたたちはアマゾンからの恵みをもらっているのだから、"守れ"というだけでなく、何か返すべきだ。」
ふたりとも、アマゾンで暮らし、アマゾンの持続可能な森林利用や生態系保全を考えている方です。そのふたりが投げかけたこれらの問いに、アマゾンの問題の本質があるように思いました。

アマゾンの内陸部、アマゾナス州の州都マナウスは人口180万人。ここがジャングルの真ん中にあることを忘れるほどの都会です。

取材協力:特定非営利活動法人 地球と未来の環境基金、佐藤卓司(ASFLORA)
取材・執筆・写真:原田麻里子(Think the Earthプロジェクト)

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