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2017.08.01 | 宮原 桃子

トルコの若者が「ご近所」革命、オスマン帝国から続く制度にオンラインで挑む


ムヒットを創設した2人、セラ(右)とダニエル(中央)  ©Muhit

トルコでは、 伝統的に地域で問題や改善してほしいことなどがあると、 まず地域で選出されたムフタルと呼ばれる村長や地区長に、相談や申し立てをします。19世紀のオスマン帝国時代から、国と市民をつなぐ役割を担う地域のリーダーとしてムフタルを置くようになり、現在トルコ全体で5万人以上いるそうです。

ただ時代とともに、ムフタルの政治的な影響力は小さくなり、事務的な役割に限られるようになりつつあります。多くの場合、ムフタルは本業の仕事のかたわら、ムフタルの役割を担っているため、面会や書面による申し立てに時間がかかるなど、問題の集約や解決がスムーズに進まないことも多いようです。 また地域や世代によっては、ムフタルとの関係が希薄になっていることもあります。さらに市民同士も、コミュニティ全体で共通の問題が何なのかを、きちんと共有できていないことも一つの課題です。


@Beshr Abdulhadi

伝統的に続いてきた仕組みを生かしつつも、もっと市民が参加しながら、コミュニティを変革していくことはできないか。そんな想いを持ったトルコの若者たちが、オンラインで誰でも自分が暮らす地域の問題や改善へのアイディアをシェアし、ムフタルや行政も巻き込みながらコミュニティを改善するプラットフォーム「ムヒット(Muhit)」を開発しました。「Muhit」は、「ご近所」を意味します。米国MIT大学院やオランダのデルフト工科大学出身のトルコ人メンバーを中心に企画と開発を行い、昨年はMIT主催の「IDEAS GLOBAL CHALLENGE賞」を受賞するなど高い評価を受けています。

ムヒットでは、誰でも地域の問題や改善のアイディアを書き込むことができます。その情報は、問題のカテゴリーや地域によって検索でき、 コミュニティでどんな問題提起がされているのか、すぐにチェックし共有できます。また、ユーザーはそれぞれのアイディアに「賛同」ボタンを押すことができるため、どの問題やアイディアに市民の関心が高いか一目瞭然です。優先的に取り組むべき課題がわかりやすく、ムフタルや行政にとっても問題解決に取り組みやすくなります。また、同じ地域に住む人びとやNPO、行政関係者などが、プラットフォーム上で意見交換をすることもできます。


ムヒットのプラットフォーム  ©Muhit

このプラットフォームは、現在トルコ全土で約2600人が利用しており、800以上の提案がなされています。交通や街づくりについての提案が多く、例えばイスタンブール中心地の交差点の改善、耕作放棄地でのパーマカルチャープロジェクト、リサイクル設備や自転車レーンの導入、サッカー場の照明時間の延長など、その内容は多岐にわたります。

ただ、ムヒットに参加する市民が増える一方で、ムフタルの関心が低いのが課題だそうです。これまで伝統的な仕組みで仕事を続けてきたムフタルの中には、こうしたプラットフォームに馴染みがなく、ただコストがかかるばかりで効果がないのではないかと訝(いぶか)しがる人も多くいます。ムヒットのメンバーは、ムフタルや行政関係者にこれからも積極的に働きかけつつ、同時にムヒットを通じて地域のNPOや市民グループ、個人なども地域のリーダーとして活躍できるようになれば、さまざまなアクターが多層的に地域の課題に取り組んでいけるようになると考えています。実際に、地元のクリエイターで結成される団体が、ムヒットのプラットフォームに関心を持ち、市民とともにパブリックアートを通じてコミュニティを改善するプロジェクトを進めています。


ムヒットと地元のクリエイター集団「Onaran lar Kulubu」 によるコミュニティ改善のためのワークショップに参加する市民たち ©Onaranlar Kulubu

伝統的な社会で長く続く制度を尊重しながらも、新しいテクノロジーと発想で変革していくことは、さまざまな国や地域で求められることでもあります。また、地域単位で課題や提案などを誰でも共有できることは、市民が地域のことを「自分ごと」として意識し考えるきっかけになり、市民がより積極的に参加する地域やコミュニティづくりにつながっていくでしょう。トルコの若者たちが始めたムヒットのようなプラットフォームは、私たちが暮らす地域でも求められていくのではないでしょうか。

宮原 桃子
宮原 桃子(みやはら ももこ) 地球リポーター

日本貿易振興機構(JETRO)に勤務後、フェアトレードファッション・ブランド「People Tree」にて、バングラデシュ・インド・ネパールでの衣服生産を支援する仕事に携わる。ドイツでの子育て生活を経て、帰国後は親子向けにフェアトレードを学ぶワークショップを企画する団体「フェアトレードガーデン世田谷」(本部・東京)を運営。フェアトレード絵本「ムクリのにじいろTシャツ」の筆者。現在は広島に暮らしながら、フェアトレードや環境、平和などのテーマを中心に執筆。 この社会を変えられるのは、私たち一人ひとりです!社会や世界で起きていることを「自分ごと」として感じ、考え、行動する。そんなきっかけになるような記事をお届けしたいと思います。

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