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2017.10.06 | 宮原 桃子

オンラインショッピングの段ボールを減らせ! 世界のベンチャー企業の挑戦 

©Fit Things NV

オンラインショッピングは今世界のあらゆる国で普及し、私たちの日々の暮らしに欠かせないものになっています。 世界のオンライン小売市場は、2017年は2兆2900億ドル(約252兆円)と推計され、前年から23.2%増と拡大し続けています。そんなオンラインショッピングで何かを買った時、皆さんの手元に残るものは何でしょうか? それは、大量の段ボールや梱包材です。小さな商品であっても、必要以上に大きな段ボール箱で大量の梱包材とともに郵送されてきたり、いくつかの商品がバラバラに郵送されてきたりするような経験を、多くの人がしているのではないでしょうか。日本では段ボールは95%以上の回収率でリサイクルされているものの、その量もリサイクルに費やされるエネルギーも膨大です。

©arbyreed

オンラインショッピングなどの配送にあたり、段ボールをもっと効率的に使うことはできないか。そんな課題に取り組む企業があります。2016年に設立されたベルギーのベンチャー企業「フィットシングス(Fit Things)」は、商品の大きさにぴったり合った段ボール箱を、瞬時にカスタマイズで作り出す機械「スリムボックス」を、 先月から発売しました。開発のきっかけは、創業者の一人リック・ローゼ氏が、30年以上印刷会社を経営する中で、さまざまな商品に合った段ボール箱を調達するのに苦労した経験からでした。特に世の中の多くを占める中小企業にとっては、商品ごとに適当なサイズの段ボール箱を調達することは、量や費用の面で無駄が多く、現実的な解決策ではありません。また同社によれば、世界中で輸送に使われている段ボール箱は、平均して箱の40%が空気と梱包材であり、大きすぎる箱を使っているケースがほとんどだそうです。そこでリック氏は自ら機械を開発することを決め、二人の息子とともに同社を立ち上げたのです。

カスタマイズで段ボール箱を作る機械「スリムボックス」  ©Fit Things NV  
フィットシングスの創業者チーム。右からCTOのリック・ローゼ氏、CEOのフィリップ・ローゼ氏、CBOのクリストフ・ローゼ氏。リック氏は、フィリップ氏とクリストフ氏の父親  ©Fit Things NV

スリムボックスは、スマホやタブレットのアプリに商品の大きさ情報を入力すると、そのデータを元にジャストサイズの段ボールを、レーザー技術でカットしてプリントアウトします。1枚のシートからなるべく多くカットできるよう、ソフトウェアが効率的なレイアウトを行い、またカットした残りの段ボールを細かく切断して、梱包材を作る機能もあるなど、無駄を極力省いています。段ボール資源の節約になるとともに、倉庫やトラックなどの輸送手段でも余計なスペースを取りません。その結果、CO2排出量を減らすことにもつながります。現在は、ヨーロッパ各国にて販売を開始しており、今後北米やアジアへの展開も計画しているそうです。

またフィンランドでは、段ボール箱の代わりに、リサイクル素材のリユースバッグで輸送するロジスティックスサービス「リパック(RePack)」が2013年に登場。世界初のサービスとして注目され、毎年200%の成長を続けています。同社と提携するオンライン小売企業のショッピングサイトでは、 顧客は通常の箱による郵送か、サステナブルなリパックで郵送して顧客が返送するかを、選択できます(100%リパックで郵送するサイトもあります)。リパックを選択した顧客は、購入時にデポジットを支払い、次の買い物で使える割引クーポンの形で返金されます。リパックを受け取った後は、世界中のどこからでもただポストに投函するだけで、返送料を払う必要はありません。

リパックのリユースバッグで商品を受け取る顧客  ©RePack2017
ポストに投函してバッグを返送  ©RePack2017

  

リパックのバッグを使うことで、段ボールの原料や、その製造・リサイクルに費やされるエネルギーを省きます。返送する際に輸送エネルギーがかかるのでは?と思いますが、それを含めても段ボール箱による輸送方法よりもCO2排出量が80%減るそうです。またリパックを選ぶ顧客は、割引クーポン効果でサイトへのリピート率が高く、購買額も平均より30%多いとの調査結果も出ています。同社のサービスは、世界的なファッションブランドのフィリッパ・コ―(Filippa K)をはじめ、さまざまな欧州ブランドのオンラインサイトで利用されています。特にエシカルやサステナブルを理念に掲げるブランドにとっては、最適な輸送方法と言え、利用する企業が増えています。サステナブルな輸送サービスを提供することが、小売業と顧客、そして環境にとって良い効果を生み出しています。

リパックCEOのヨンネ・ヘルグレン氏。フィンランドで90%以上の回収率を誇るビンのリユースシステムからアイディアを得た  ©RePack2017

  
世界で広がりつつあるサステナブルな輸送方法。企業は、スリムボックスやリパックのような商品・サービスを活用していくことで、サステナブルな企業価値を確立することにつながります。私たち消費者は、例えば自分がよく利用するオンラインショッピングサイトに、サステナブルな輸送方法を導入してほしいと働きかけることもでき ます。またオンラインショッピングにあたっては、まとめて注文する、段ボールをリユースもしくはリサイクルする、再配達のような無駄な輸送が起こらないようするなど、消費者側が工夫できることもいろいろとあるかもしれませんね。

宮原 桃子
宮原 桃子(みやはら ももこ) 地球リポーター

日本貿易振興機構(JETRO)に勤務後、フェアトレードファッション・ブランド「People Tree」にて、バングラデシュ・インド・ネパールにおける生産管理に従事。現在は、企業のサステナビリティ推進を支援する「 エコネットワークス」に、コンテンツプロジェクトマネージャーとして参画。ライフワークとして、フェアトレード絵本「ムクリのにじいろTシャツ」を制作したほか、親子向けにフェアトレードを学ぶワークショップを企画する「フェアトレードガーデン世田谷」(本部・東京)の運営に携わる。社会や世界で起きていることを「自分ごと」として感じ、考え、行動する。そんなきっかけになるような記事をお届けしたいと思います。

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