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2024.01.16 | ささ とも

地球温暖化でエサが捕れない! 季節のずれで渡り鳥が絶滅の危機に

CC BY-SA 3.0 Bogbumper

昨年の2023年11月30日から12月13日にかけて、アラブ首長国連邦のドバイで、第28回国連気候変動枠組み条約締約国会議(COP28)が開催され、気温上昇を抑制するために、化石燃料からの脱却を進め、2030年までに風力や太陽光などの再生可能エネルギーの発電容量を現在の3倍にすることが合意されました 。

地球温暖化はわたしたち人間だけでなくあらゆる生き物にすでに影響を及ぼしています。たとえば季節によって繁殖地と越冬地を移動する渡り鳥に変化が現れていることが多くの研究で明らかにされています。

ミドリツバメ、北アメリカ北部で繁殖し、中央アメリカで冬を越す(CC BY 2.0 Andy Witchger

春の繁殖時期の異変

春、渡り鳥は長い危険な旅を経て目的地に到着すると、体力を回復させて、縄張りを確保し、つがい相手を見つけ、巣作りをし、卵をかえして雛を育てます。渡り鳥の多くにとって欠かせないエネルギーのもとになるのが昆虫です。しかし、温暖化のために昆虫の孵化が早まり、渡り鳥がエサを必要とする時期とのずれが生じていています。ニューヨーク州イサカで1989年から 2014年にわたり実施された調査によると、昆虫が大量に発生するピークの時期が3~12日早まり、その期間も短くなっています(1)。とくに陸上昆虫(カブトムシやチョウなど)の幼虫よりも栄養価の高い水中昆虫(トンボやカなど)の幼虫の数のピークが早く短くなっているのです。北アメリカで繁殖してブラジルなどの南アメリカで越冬するムラサキツバメや、アラスカから北アメリカ北部で繁殖してメキシコや中央アメリカで越冬するミドリツバメのような渡りの時期が比較的遅い鳥は、エサとなる昆虫のピーク時に渡りを早めることができなければ、種の存続の危機に直面するかもしれません。

コウバシギ、越冬地で十分なエサを食べて、春の渡りに備える(CC BY-SA 4.0 JJ Harrison

温暖化によって小型化した渡り鳥

渡り鳥の中でも、とりわけ長距離を移動するのがコウバシギです。温暖化によってコウバシギの体が小さくなり、絶滅の危機が高まっていることが、国際研究チームの調査で明らかになりました(2)。調査の対象になったコウバシギの亜種アフロ・シベリアン・コオバシギ(Afro-Siberian Red Knots<Calidris canutus canutus>)はシベリア北部で子どもを産み、育て、はるかかなたの西アフリカのモーリタニア西岸に位置するバン・ダルガン国立公園で冬を越します。繁殖地となる北極圏の温暖化は地球全体平均の3倍の速さで進行しているといわれていて、春の雪解けが早くなり、それに伴って昆虫の数がピークになる時期も早くなっています。そのため、コウバシギの幼鳥はエネルギー源となるエサが十分摂れなくなり、体が小型化し、くちばしが短くなっていることがわかりました。シベリアから過酷な旅を経てモーリタニアに到着したとしても、くちばしが短い若鳥は干潟の深いところに生息する、たんぱく質の豊富な二枚貝(Loripes lucinalis)を捕ることが難しく、たんぱく質の乏しい海草の一種ドワーフアマモ(Zostera noltii)などを食べるしかありません。1980年から2017年にわたる別の調査によると、バン・ダルガン国立公園で越冬したアフロ・シベリアン・コオバシギの数は減少しています(3)。

国連の世界気象機関(WMO)が2023年5月に発表した気候変動に関する年次報告書には、50年間においてヨーロッパの100種以上の渡り鳥の飛来時期が、昆虫の飛来の時期と次第にずれてきており、こうしたずれはサハラ以南のアフリカで越冬する渡り鳥の種の個体数が減少している要因であるとの見解が示されています(4)。

温暖化の進行のあまりの速さに適応できなくなるのは、渡り鳥のような野生動物だけではありません。わたしたち人類も深刻な影響を避けられなくなっています。地球温暖化を止めることは、地球上の生き物の中でわたしたちにしかできません。気温上昇の抑制は人類に課せられた喫緊の課題なのです。

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ささ とも
ささ とも(ささ とも) 地球リポーター

神奈川県在住。翻訳者、ライター。 2010年からThink the Earthのリポーターとして世界の持続可能な取り組みのニュースを発信。気候変動、エネルギー、生態系など幅広い分野で世界の動きを追っていきます。翻訳書『ポストキャピタリズム:資本主義以後の世界』(東洋経済新報社)など。

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