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2018.07.09 | 宮原 桃子

街の商店での買い物が、ワンクリックで! ドイツのエコ&ローカルなオンラインショッピングサービス


©Fabrice Pöhlmann

皆さんは、日々の食材や日用品は、どこで買っていますか? 忙しい毎日の中で、一カ所でまとめて買い物ができる大型スーパーチェーンやオンラインショッピング、宅配などを利用する人が多いのではないでしょうか。でも、その一方で街の商店が少しずつ消え、多くの商店街が廃れてしまっていることに、私たちの多くは気づいています。飛行機やトラック、貨物列車などで、わざわざ遠くから届けられている商品を買うことが、環境にとって良くはないことを、薄々は感じている人も多いはず。ただ、忙しさと天秤にかけて、ついつい時間の節約や利便性を優先してしまう…。今、同じようなことが世界中で起きています。

ドイツ中部の都市ヴィースバーデンでも、この状況に対する危機感が生まれていました。それならば利便性はそのままに、地域の商店で買い物ができるようにしたら? そんな視点から生まれたのが、街のさまざまな商店の商品をオンラインでまとめて買えるサービス「キーツカウフハウス(Kiezk aufhaus)」です。

アイデアは、ヴィースバーデンのクリエイティブエージェンシー「ショルツ&フォルクマー」から生まれました。始まりは、こんな疑問からでした。

「ヴィースバーデンに住む人が、アマゾンで本を1冊買う。例えば、それはフランクフルトの出版社の本で、ポーランドの倉庫で保管され、そこからまたヴィースバーデンへ輸送される。そこには、無駄な包装や輸送、大量の返送、市内渋滞など、環境への悪影響がたくさんあるのでは?」

事実、ドイツだけで1日80万個の小包が輸送されていて、これは400トンのCO2排出量に相当するそうです。そこで、同社で社会と経済の「共通価値(Shared Value)」に取り組む4人のデザイナーが、2015年に「キーツカウフハウス」を立ち上げて、地域の商店と消費者をつなぐオンラインサービスを始めました。


©Rui Camilo 「キーツカウフハウス」を立ち上げたメンバーの一人、ナンナ・ベイヤーさん

©Kiezkaufhaus

現在、キーツカウフハウスに登録されている地域の商店は30店舗。オーガニックスーパーや青果店、精肉店、チーズやハムのお店、ワイン店など、さまざまなお店がズラリ。食品だけでなく、文房具や書籍、日用品、おもちゃなども買うことができます。基本的にすべて個人商店で、 オーガニックや地産地消など環境に良い商品も多く扱われています。

さらにユニークなのは、商品の見せ方。多くのお店のページには、棚やケースに並ぶ食品の写真がそのまま映し出され、各商品の上には名前と値段がパッと見てわかるように表示されています。写真の上から欲しい商品をクリックして、そのまま買い物かごへ追加。まるでお店で商品を選んでいるような感覚で、買い物ができます。


オーガニック食品店のチーズコーナー。商品の上に、値段が表示されている

登録されていない商品でも、希望リストに記入しておくと、お店に 在庫があれば対応可能

ユーザーがオンラインで注文すると、注文リストが各店舗に送られ、準備されます。それをキーツカウフハウスの配達人が、電動自転車で回収し、オリジナルバッグにすべて詰め込み、自宅まで配達するのです。商品の調達先も配達先も、すべて同じ街の中であるがゆえに、自転車というエコな輸送方法で届けられます(電動自転車は、すべて再生可能エネルギーによって稼働)。地元で調達するからこそ、商品の鮮度も保たれます。また注文を13時までに行えば、無理なくその日中に届けてもらえるというメリットも。配達料は、何店舗に注文するかに関わらず、 配達先地域によって5ユーロもしくは7ユーロ。


©Fabrice Pöhlmann

ただし、ドイツらしいのは「週末の配達はお休み」というポリシー。ドイツでは日曜日は基本的にすべての小売店がお休みという背景もありますが、「土曜日こそ、皆さんに地元のお店に行ってもらい、ゆったりと買い物をしてもらいたい」との想いからだそうです。これによって顧客と地域のお店のつながりを太くするとともに、それがキーツカウフハウスのさらなる利用にもつながる。企業もお店も顧客もしっかりと休みも取りながら、さまざまな良い循環が生まれていることを感じます。

©Fabrice Pöhlmann

現在、キーツカウフハウスを利用するユーザーは1300人以上。消費者からの評判も高く、ファンレターが届くこともあるそう。登録している商店では、以前よりも平均25%も売り上げが向上しており、地域経済の活性化にもつながっています。こうした反響を受け、ヴィースバーデン以外の地域でも関心が高まり、今年中に新たに2都市でサービスが始まる予定です。キーツカウフハウスは、このサービスをさらに多くの街や国で展開することを目指しています。


©Rui Camilo キーツカウフハウスのオフィスとスタッフ

消費者と地域の商店や生産者をオンラインでつなぐ「キーツカウフハウス」。地産地消と利便性の両方をサポートするサービスは、どの地域でも求められているものではないでしょうか。私たちが暮らす街でも、こうしたモデルが広がることを期待しつつ、さっそく明日は地元の商店に立ち寄ったり、地場野菜を買ったりしてみるのも第一歩かもしれませんね!

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宮原 桃子
宮原 桃子(みやはら ももこ) 地球リポーター

日本貿易振興機構(JETRO)に勤務後、フェアトレードファッション・ブランド「People Tree」にて、バングラデシュ・インド・ネパールにおける生産管理に従事。現在は、企業のサステナビリティ推進を支援する「 エコネットワークス」に、コンテンツプロジェクトマネージャーとして参画。ライフワークとして、フェアトレード絵本「ムクリのにじいろTシャツ」を制作したほか、親子向けにフェアトレードを学ぶワークショップを企画する「フェアトレードガーデン世田谷」(本部・東京)の運営に携わる。社会や世界で起きていることを「自分ごと」として感じ、考え、行動する。そんなきっかけになるような記事をお届けしたいと思います。

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