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2024.02.22 | 岩井 光子

資源循環の最前線へ 「捨て方を創造し、使い方をデザインする」ナカダイの現在地

大きなマグネットクレーンが粛々と作業を進め、フォークリフトが行き交う群馬県前橋市の産業廃棄物中間処理・総合リサイクル業「ナカダイ」の場内。99%のリサイクル率を誇る同社にとって、ここは単なる解体現場ではなく、企業の出すごみを金属やプラスチックなど素材別に分け、新たな流通経路に送り出す生産工場なのです。「捨てる」と「使う」をクリエイティブにつなぐ産廃業者の新たなビジネス領域を開拓してきたナカダイホールディングス代表取締役の中台澄之さんにお話を聞きました。

Contents
■“素材”を生産する工場
■リサイクルだけでなく
■サーキュラーパーク構想
■「知見を広げていきたい」

“素材”を生産する工場

モノづくりの工場見学は多々ありますが、モノを解体・選別したり、破砕する現場を間近に見る機会はそんなにないと思います。ナカダイでは、地域や企業などから集まるさまざまなごみを仕分ける様子を見学することができます。


マグネットクレーンで机の天板を吸い上げる。ダイナミックな分別作業に思わず見入ってしまう

ガシャンガシャンと迫力のある金属音を出しながら鉄片をキューブ型に成型するダイナミックなゾーンの一方、旧式家電の解体など、人の手で一つひとつ処理を行うエリアもあります。素材別に次の市場や取引先に手渡すため、分別や解体は丁寧に、正確に行われていきます。


多少の異物の混入が認められている鉄千地(せんち)と呼ばれる鉄のスクラップキューブ

銅、真ちゅうなど素材別の販売ルートを確保した上で、旧式の電化製品などを引き受けるそう。解体用の工具などもそろっている

銅やステンレス、合金などに分別。少量だと売り先が決まらないが、数トン程度にまとまると卸し先が決まるという

中台さんがこの業界に入ったのは1999年。先代は鉄のスクラップ業でしたが、中台さんの代になってから金属やプラスチック、木、繊維、ゴム、ガラスなど主に固形の産業廃棄物を取り扱う総合リサイクル業として、売り上げを大きく伸ばしました。

「工程全般を見直したというお客さんから『ごみが削減できました!』と報告を受けても内心喜べないんです。みんなが廃棄物を減らしたいと思っているのに我々の業界だけ廃棄物が増えてほしいと思っている。そのギャップに耐えられなくなったのが2006年くらい。ごみを減らして利益が上がるようなビジネスモデルを作らなければいけないと思いました」

中台さんは自社の取り扱う幅広い産業廃棄物の種類と丁寧な分別を強みに、工場をごみの処理場ではなく、素材を“生産する場”、と解釈し直しました。この発想が「捨て方を創造し、使い方をデザインする」というコピーに象徴される新しいコンサルティング業(ナカダイでは「リマーケティングビジネス」と呼んでいます)につながっていきます。


油汚れのついた紙などマテリアルリサイクルができないごみを調合して作るRPFと呼ばれる固形燃料の山。石炭並みの熱量があり、代替燃料になる。焼却処分を避けるためのサーマルリサイクルだ

「新規営業にかける時間を社員の知見を上げることに当て、お問い合わせをいただいたらどんなご相談にもお答えできるよう、さまざまな業界の廃棄物とその流通経路を徹底的に勉強しました。しんどかったですが、この頃の努力があったから、今の仕事ができています」


場内の説明をする中台さん

「廃棄の世界がどうなっているか想像がつかない人も多いので、そこをいかにわかりやすく伝えるかを意識して積極的にメディアにも出ました。気をつけたのは一般の廃棄物業者が行うごみの焼却や埋め立ても大切な仕事なので、彼らとの差別化ではなく、リマーケティングビジネスなどの新しい言い方で、自分たちがやろうとしていることは、全く別のビジネススキームだと伝えるようにしました」

リサイクルだけでなく

2011年には廃棄物を解体・分別後の“素材”を展示販売するモノ:ファクトリーをオープン。同名法人を立ち上げ、分社化し、「ごみ減量に協力しながら利益を上げる」ナカダイらしい事業分野を確立していきます。


モノ:ファクトリーの展示コーナー。LED式に変わる前の懐かしい旧式の信号機など、それぞれ廃棄に至った履歴が添えられていて、読みながら見学すると楽しい

例えば、取引先に社員を常駐させ、分別を現地で効率的に行って廃棄コストと環境負荷を抑えたり、期末処分で大量放出される在庫品やモデルチェンジで不要となった旧型製品をリユースする仕組みづくりを協働するなど、廃棄ルートの“交通整理”が企業にさまざまなメリットをもたらすことを実証してきたのです。

特に力を入れたのがリユースでした。リサイクルか焼却処分や埋め立ての2択であれば、リサイクルの方が環境負荷は低いことはすぐにわかりますが、資源を循環させる方法の中では、実はリサイクルよりもリユース、あるいは修理や解体した素材で別の製品を作ったりする方がより環境に負担はかかりません。

イギリスのエレン・マッカーサー財団がサーキュラー・エコノミーのシステム概念を図解した「バタフライ・ダイアグラム」でも、リサイクルは資源循環の中では最も環境負荷の高い最終手段となっています。今でこそ製品の生産段階から再利用を想定した設計が考慮される時代になりましたが、ナカダイはいち早くリユースの可能性を考えてみませんか、と提案してきました。

廃棄物には捨てられるまでのストーリーがあり、時代背景や地域性がしみこんでいます。そこから使い方を創造するチャレンジも、産廃サミットなどの主催イベントや異業種とのコラボレーション、教育現場や企業での講義、研修、ワークショップなど様々な形で行ってきました。


リノベーション事業を手掛けるOpen Aとのコラボ「THROWBACK」より。少子化の影響で廃校になった小学校にあった跳び箱で作った家具。捨てられるモノのインパクトを感じられるプロダクト ©2020THROWBACK

中台さんは個人的にも、服や小物、仕事用のパソコンでも吟味して買い、買ったものは修理しながら長く大切に使うことが好きだそうです

サーキュラーパーク構想

こうしたナカダイの地道な取り組みがビジネスの最前線に躍り出たのは2015年以降のこと。SDGsが登場し、パリ協定が採択された頃でした。

「それまではパフォーマンスで取り組む企業も多いと感じていましたが、取り組んでいないとちょっとまずいなという雰囲気が出てきて、風向きが大きく変わりました。その後、コロナになって、菅義偉・元首相が2050年までのカーボンニュートラルを宣言し、2030年に温室効果ガスを2013年比で46%削減することを目指すと言ったインパクトは、やっぱり大きかったですね」

日本の温室効果ガス排出量(CO2換算で11億4900万トン、2020年度)のうち、資源循環の取り組みを増やすことで最大36%の削減余地があるそうです。環境省は2030年度までに金属のリサイクル量とプラスチックの回収量を倍増する方針を打ち出しました。

脱炭素と資源循環は背中合わせで語られるようになり、モノを購入・生産する企業と、回収や再利用の可能性を探るナカダイのような産業廃棄物業者が協業し、資源が循環する仕組みを一緒に構築する必要性が一気に高まってきたのです。

企業間で課題共有した方が資源循環は進みやすいという認識も広まってきたタイミングで、中台さんはこれまでで最も大きなプロジェクトに巡り合います。

鹿児島県薩摩川内市の火力発電所の操業停止に伴い、九州電力がその跡地をナカダイと協働して再生可能エネルギーと資源循環の一大拠点にすることを決めたのです。1年間の事業可能性調査を経て、昨年7月に「サーキュラーパーク九州株式会社」を九州電力と合弁で設立。中台さんは共同代表に就任。薩摩川内市との立地協定も結びました。

「まず、32万平米という広大な土地を資源循環の拠点に使っていいと九州電力に言っていただいたことが一番。我々みたいな社員80人ほどの地方の中小企業をパートナーに選んでいただいたのはすごくありがたい。九州電力の社長と会長からも『再生可能エネルギーと資源循環は切っても切れない。企業規模の大小に関わらず、ナカダイさんに技術があるのなら協業します』とおっしゃっていただきました」

火力発電所跡地のリノベーションは、世界各地で行われています。例えば、イギリスのテート・モダンなどの美術館も元は火力発電所でした。タービンを抜いた大空間が吹き抜けの気持ち良いギャラリーに生まれ変わっています。他にもアメリカのベロイト大学の学生センターやイギリスのバタシーのように街中の複合施設に生まれ変わった事例もあります。

「でも、これらは主に公共事業。サーキュラーパーク九州は、地元に新しい産業と雇用を生み出すことを目的としたビジネスです。資源循環の拠点として使うというコンセプトも含めたリノベーションが日本のひな型になればいいなという思いを持っています」。中台さんがこのプロジェクトにかける意気込みを感じます。

サーキュラーパーク九州では今後3つの事業を稼働させる予定です。4月から稼働するリソーシング(地域や企業から集まる廃棄物を再資源化する)事業、コンサルティングを軸にしたソリューション事業、来訪者や市民に向けた宿泊施設なども併設する体験事業の3本柱です。

既に花王、サトーホールディングスなど大手企業も続々と賛同。花王は薩摩川内市の千世帯を対象に自社のトイレタリー製品の容器回収の実証実験も始めています。容器の水平リサイクルの課題解決には、地元の鹿児島大学が協力するなど、産官学連携も進んでいるそうです。

回収コストと経済的合理性をどう両立させるか、企業にとっては難題です。消費者や小売店の協力を得て実証実験を行って検証し、課題を反映させてと、資源循環を軌道に乗せるまでには時間もかかります。


「企業は『うちはここができている』と成果をPRしがちですが、課題を共有したい。課題が明らかになれば、知見が集まって解決の糸口が見つかるはず」と中台さん

「環境のことは少し面倒であることは間違いないので、その面倒な行動が自分の生活とある程度密着して腹落ちするまで、当然時間かかるんです。待つこと、寄り添うこともすごく大事。ビジネスとしての回収率とか、お金と直結させて考えるとうまくいかない時代になってきている感じがするんですよね」、中台さんはそう言います。

「知見を広げていきたい」

さまざまな事業が動き出しているサーキュラーパーク九州では、将来的に教育事業を立ち上げる構想もあるそうで、興味が湧きました。

ナカダイは既に多摩美術大学と企業5社との共創プロジェクト「すてるデザイン」など大学との連携事業も行ってきていますが、話を聞いてみると、サーキュラーパーク九州で構想している教育事業は、もっと企業が抱える課題のスピード感に沿ったものになりそうです。

「MBA(経営学修士)みたいにサーキュラーエコノミー(circular economy)学の“MCA”の取得を目指せるような学びの場を考えています。講師は我々のような業界の人もいるし、メーカーもいるかもしれません。先生と生徒が随時入れ替わってインタラクティブになるようなイメージです。例えば、今は耐用年数を迎えた太陽光パネルのリサイクル方法が課題だけど、もう少し経てばEV車になるかもしれない。現在進行中の事例を共有できるような研修や教育をやれたら、と思っています」

サーキュラーパーク九州に集まった貴重な知見が新しい専門性となり、仕事となれば、参加企業にとっても、チャレンジは投資になります。事業が動き出し、この分野を学びたい、もっと知りたいと思う人たちが集まる場があれば、知見はさらに広くシェアされます。教育事業もこうしたニーズに応えるものとして構想されているようです。

同業者にほとんどいないナカダイのようなパイオニアの知見をどう共有していくかも、今後のカギとなりそうです。産業廃棄物には時代性や地域性が強く反映されるので、事業規模や進め方はその土地土地で最適化した方が良いという点は、考え方のポイントになりそうです。


産業廃棄物業者の経営者は二代目が多く、一代で事業を起こすことが非常に難しい業界だそう。厳しい許可制となっている現在のスキームを見直す必要性も今後出てくるのかもしれません

「今、僕らは群馬と九州でやっていますが、例えば、大阪とか他のエリアで取り組みたい同業者が出てきたら協業したり、連携したりしながら知見を渡していきたい。全国各地で同様のチャレンジが増えると、廃棄物が資源に生まれ変わる流れができて社会全体の環境負荷が少なくなりますよね」

モノづくりの生産側を動脈産業と例える際、“静脈”産業”と呼ばれてきた産業廃棄物処理の仕事。一般の人にとってはまだまだ知らないことがたくさんありますが、資源循環の中では製品ライフサイクルの重要な一部分を担います。動脈と静脈をつなぐナカダイのような企業の存在感は今後ますます高まっていくのでしょう。

資源循環を火力発電所跡地で実現させようというサーキュラーパーク九州の刺激的な取り組みは、従来の産廃業者のイメージを大いにアップデートしていくと思います。ナカダイの取り組みに触発され、リユースなど中古品市場に抵抗感の少ない若い人たちが次の担い手を名乗り出る時代は、すぐそこまで来ているのかもしれません。

※本記事は循環型の生活提案を行うライフスタイルメディア「あうんエシカル百科店」と連携しています。
「あうんエシカル百貨店」に掲載された記事はこちらをご覧ください。

(文・岩井光子 写真・土屋ミワ)

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岩井 光子
岩井 光子(いわい みつこ) ライター

地元の美術館・新聞社を経てフリーランスに。東京都国際交流委員会のニュースレター「れすぱす」、果樹農家が発行する小冊子「里見通信」、ルミネの環境活動chorokoの活動レポート、フリーペーパー「ecoshare」などの企画・執筆に携わる。Think the Earthの地球ニュースには、編集担当として2007年より参加。著書に『未来をはこぶオーケストラ』(汐文社刊)。 地球ニュースは、私にとってベースキャンプのような場所です。食、農業、福祉、教育、デザイン、テクノロジー、地域再生―、さまざまな分野で、地球視野で行動する人たちの好奇心くすぐる話題を、わかりやすく、柔らかい筆致を心がけてお伝えしていきたいと思っています!

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