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2025.12.16 | 笹尾 実和子

使用済みの漁具が“美しい海を守るサステナブルなバッグ” に生まれ変わる

日本で初となる「使用済みのブイ」を使ったバック「MARINA」

海洋プラスチックごみと聞いて、あなたはまず何を想像しますか? 私たちが普段よく使っているペットボトルやビニール袋などが真っ先に思い浮かぶのではないでしょうか。海洋プラスチックごみの種類や総量を正確な数で把握することは難しいですが、日本の海岸に漂着したプラスチックごみのうち、漁具やブイなど漁業系プラスチックごみの重量比は5~6割を占めるというデータ(*1)があります。これは、適切に回収・再利用されず、そのまま廃棄されてしまう漁業系プラスチックごみが大量にある現実を映し出しています。

*1 環境省令和4年度漂着ごみ組成調査データ 取りまとめの結果について

これ以上海洋プラスチックごみを出さないようにするためには、そもそもプラスチックの利用を減らすこと、使った際は正しく破棄・再利用することが大切です。そして漁業系プラスチックごみを減らすためには、廃棄されるはずだったモノを価値ある資源として再び活かす新しい循環の仕組みづくりが必要になってきます。

この仕組みづくりに挑戦しているのが、使用済みの漁業系廃棄物を回収し、リサイクル・アップサイクルを通じて海洋プラスチックごみ問題の解決を目指す一般社団法人Alliance for the Blueです。これまで多くの協働企業と共に使用済みの廃漁網のリサイクル、それらを活用した生地や商品の開発に取り組んできました。その一例がFUMIKODAとの美しい海を守るサステナブルなバッグづくりです。

2024年には廃棄される「漁網」をリサイクルした高品質ナイロン生地を使用したバッグ「MEGAN(ミーガン)」を生み出し、2025年10月には日本で初となる「使用済みのブイ」を使ったバック「MARINA」を発売しました。「MARINA」のために開発された「オーシャンVレザー」は使用済みのブイをマテリアルリサイクルしたもので、その含有率は25%。丈夫で壊れにくいブイの特徴を活かし、耐久性と美しさを両立した合成皮革ができました。

黄色い使用済みのブイが優しいマリンブルーのバック「MARINA」に ※ちなみにMARINAでオーシャンVレザーを使用しているのはブルーのみで、他色はバンブーレザーを使用。(写真提供:Alliance for the Blue)

さらにリサイクル素材とは思えない美しい色合いは、開発チームが試行錯誤を重ねてようやく実現できたものです。リサイクル素材は品質のクオリティを一定に保つための高い技術が必要だったり、新しい素材を使う以上にコストが高くなってしまうことがよくあります。

様々なハードルがある中で、本気で海の課題に取り組もうという強い気持ちがないと、このような商品を作ることはできません。マテリアルリサイクルの高い技術を持つ大同化成株式会社や使用済み漁業用ブイを回収するニチモウ株式会社などそれぞれ専門性を持つ企業と連携することで、海の課題を解決する商品が完成しました。

バックを販売するFUMIKODAが24年に実施した顧客へのアンケート調査では89%の人が「デザインや機能に差がなければ、環境に配慮したものを選びたい」と答えたそうです。こうしたリサイクル製品は、海の課題を解決したい、と考える企業とその思いに共感する消費者、両者がいて初めてビジネスとして成立します。デザインや値段だけではなく、素材や製造プロセス、作り手の思いなど、商品が生まれた背景にも目を向けることは、よりサステナブルな未来を形づくる力になるはずです。

海は想像以上に、多くの課題を抱えています。これからの選択や行動、そして社会の仕組みを海を守るためのアクションに変えていかかなければ、今ある問題を解決することはできません。「MARINA」は海を守るアクションのひとつ。いろんな方法であなたが「やってみたい」と思えるアクションを、ぜひ見つけてみてください。

笹尾 実和子
笹尾 実和子(ささお みわこ) Think the Earth 広報

夏生まれの横浜育ち。新卒で人材派遣の会社に3年勤め、行く先を決めず退社。その後の一人インド旅で全てをリセットし、小さくも面白い会社でインターンを始めたことで仕事観が変わる。そんな中Think the Earthと出会い、ここなら小学校からの夢が叶う!と気持ちひとつで飛び込み入社。現在はひとり広報として奮闘中。話すよりも聞く方が得意。

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