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2022.04.20 | 岩井 光子

日本でできるウクライナ支援 問題の本質をとらえることから始めよう

ロシアによるウクライナへの軍事侵攻が続いています。何の罪もない民間人の命をあまりにも軽々しく扱う軍の残虐な行為には憤りを感じますし、家族や住まいを理不尽な暴力によって奪われた人々の心中は察するに余りあります。激しい攻撃を受けた東部の港町マリウポリの市民犠牲者は2万人を超すともみられています。

ウクライナから国外へ逃れた難民は500万人を超え、日本でも少しずつですが、避難民の受け入れが始まっています。何か力になれることがあれば協力したい、そう考えている人は多いと思います。

Creative Commons,Some Rights Reserved,Photo by VasenkaPhotography

2000人弱のウクライナ人が暮らす日本には、2000年頃から在住ウクライナ人が運営するコミュニティ「KRAIANY(クラヤニ)」(「端で暮らす人々」という意味だそうです)があります。2021年度に特定非営利法人「日本ウクライナ友好協会 クラヤニ」として法人登録されました。ここ数年はコロナの影響で開催を見送っていますが、赤い編み込みの刺しゅう柄が入ったウクライナの民族衣装「ヴィシバンカ」を身につけて銀座をパレードする「東京ウクライナ・パレード」や、ウクライナの文化や料理を紹介するフェスティバル「ウクライナDAY」など、日宇の交流を深める楽しいイベントを企画してきました。ウクルインフォルム日本語版編集者の平野高志さんも、著書『ウクライナ・ファンブック』の中で推薦している団体です。

文化交流イベント「ウクライナDAY」 写真提供 クラヤニ

ロシアの侵攻が始まってから世界中で抗議活動が巻き起こる中、日本でクラヤニが始めた人道支援活動が「ウクライナ支援トライデント」。トライデントとは三叉の槍をデザインしたウクライナの国章でクラヤニのマークにも使われています。サイトの会計報告を見ると、既にこれまでに寄せられた約1450万円の支援金が既に戦地の市民の食料や薬、生活必需品、避難民の移動費などに使われたとあります。寄付金は現地ボランティアに直接届くので、速やかに活用されています。

FacebookなどSNSページでは砲撃下の都市ハリキウなどで住民に物資を届けるボランティアの様子が日々アップされています。クラヤニと協力して活動するNGO「Stand with Ukraine Japan」のFacebookには、瓶詰めの保存食を作るボランティアの話が載っていました。多くの人が外出時の攻撃を恐れて食糧や水を入手できず、料理もできないからだそうです。中には地下鉄の避難所から出られず、1カ月以上留まっている人もいたと報告しています。

トライデントのサイトには、ウクルインフォルムなどウクライナ政府公認の報道プラットフォームや情報源一覧もあります。今回の侵攻の歴史的背景を解説したページでは、筆者はウクライナから見たロシアと、ロシアから見たウクライナには齟齬があることを強く訴えています。メディアが首都の呼び名をなぜキエフからキーウに変更したのか、この報道を理解するためにも、ウクライナがたどってきた苦難の歴史を知る必要があります。

打開策や希望を見いだすことが非常に難しい状況ですが、言語や文化の自由、平穏に暮らす権利を何度も奪われ、制限されてきたウクライナの歴史を知り、問題の本質をとらえることも彼らの支援につながるように思います。クラヤニのサイトや前述の平野さんの著書にもウクライナの歴史について詳しく触れたページがあります。

ウクルインフォルム

4月26日にはキーウの音楽や料理を楽しみながらVRでキーウの街をバーチャルトリップするイベント「KYIV STYLE PARTY」が渋谷のペントハウスで開かれるそうですので、関心のある方はチェックしてみてください。収益はトライデントに寄付されるそうです。

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岩井 光子
岩井 光子(いわい みつこ) ライター

地元の美術館・新聞社を経てフリーランスに。東京都国際交流委員会のニュースレター「れすぱす」、果樹農家が発行する小冊子「里見通信」、ルミネの環境活動chorokoの活動レポート、フリーペーパー「ecoshare」などの企画・執筆に携わる。Think the Earthの地球ニュースには、編集担当として2007年より参加。著書に『未来をはこぶオーケストラ』(汐文社刊)。 地球ニュースは、私にとってベースキャンプのような場所です。食、農業、福祉、教育、デザイン、テクノロジー、地域再生―、さまざまな分野で、地球視野で行動する人たちの好奇心くすぐる話題を、わかりやすく、柔らかい筆致を心がけてお伝えしていきたいと思っています!

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