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2019.03.17 | 河内 秀子

男女の賃金格差が21 %のドイツ  「イコール・ペイ・デイ」にベルリン交通が女性を21%割引へ

「女性であることが、価値になる」とうたう、ベルリン市交通局(BVG)

「イコール・ペイ・デイ(Equal pay day)」をご存知ですか? 男性と女性の賃金格差を可視化しようという試みです。例えば、ドイツの場合は男性と女性の稼ぎを比較した場合、その差は21%(ドイツ連邦統計局)で、男性と同じ額を稼ぐためには、女性は77日間多く働かなければいけないということになります。1月1日から数えて77日目の3月18日が、ドイツのイコール・ペイ・デイというわけです。日本の場合、昨年のイコール・ペイ・デイは4月6日でした。※今年の該当日は未発表。

独ZEIT紙はこのように分析しています。

残念ながら、ドイツの男女賃金格差は欧州でも最大級。男性の時給は税込で21.60ユーロ(約2730円)に対して、女性は17.09ユーロ(2160円)。10年前の格差は23%だったので、状況は少しずつ改善されている。ただし、この背景には女性の半数近くがパートタイム労働者であることや管理職の女性が少ないこと、また出産や育児などの休暇により仕事を中断しなければならないこと、そもそも賃金が低い仕事に従事している割合も高く、簡単に数字だけで比較できないという批判もある。同等の職で、同じような資格を有する場合であれば、その差は6%に縮まる。

多くの女性が管理職を選ばず、パートタイムで働く背景には、古い性別役割分担のイメージがまだ払拭されていない実情が浮かび上がります。再統一してから30年に満たないドイツでは、旧東ドイツと西ドイツでは賃金格差が大きく異なり、旧西ドイツでは女性の賃金が22%少ないのに比べ、旧東ドイツでは差が15%という結果が出ています。

1949年の建国時、旧西ドイツでも旧東ドイツでも、憲法で男女同権がうたわれました。しかし、「男女同権に反する法律や規則は全て廃止」「女性が市民として、働く人としての使命を、女性や母としての義務と両立しうることを保障する施設を作る」とした東ドイツに比べ、西ドイツ側では、19世紀に定められた民法典がいまだに女性を縛っていました。1957年に「女性が家庭での義務を果たした場合」という条件つきで、女性が労働をして収入を得る権利を得ましたが、1977年の法の改正までは、夫婦の共同生活にかかわる全ての事項において、決定権は夫にあり、女性は世帯の管理が義務付けられ、その義務が果たされていないと夫が判断した場合には、許可なく妻の労働契約の解約をすることができました。1994年、再統一したドイツで、国が男女同権の遂行への援助を約束。しかし、その格差と古い考え方は完全には払拭されていないようです。

今年、ベルリン市交通局では「賃金の差があるなんて、バカみたい! その差を埋めよう」のスローガンのもと、イコール・ペイ・デイに、賃金差の21%分安い女性用1日券のプランを提案し、大きな話題を呼んでいます。通常は7ユーロ(約900円)のところ、女性は5.50ユーロ(約700円)で購入できるこの1日チケット。具体的な数字を目の当たりにすると、この差の大きさを実感できます。

さっそく女性専用チケットを購入! しかし「正社員は月・年間定期を持っているのではないか?」という疑問が生まれました。年間チケットがあるとより良いですが、一番良いのは賃金格差がゼロになることですね
遅延などの問題は多いが市内の公共交通網は広く、週末は深夜もナイトバスで移動ができて便利なベルリン交通。ユニークな広告キャンペーンで話題を呼んでいる

ベルリン市交通局は2003年から、女性の労働をサポートするプログラムを行っています。全ての職種において、男女に同等の賃金が払われること。また、管理職や技術的な部門にも女性を採用すること。同等の適性や資格を持つ場合は、女性を優先すること。育児休暇の後に必ず同じ職場に復帰できる権利や、パートタイム時の研修などが約束され、実施されています。

BVG(ベルリン市交通局)の就職宣伝ビデオ。

2010年からトップとして采配を振るうジーグリット・ニクッタは、このサポートプログラムを取り入れたことで、2017年に「ベルリンの女性賞」を受賞。自らも5人の子どもを持つ母として、積極的に自らの状況をオープンにし、仕事と育児、家庭の両立について呼びかけています。

2010年、ベルリン市交通局(BVG)史上初の女性CEOとなったジーグリット・ニクッタ  ©rosephotography

今年から、3月8日の「国際女性デー」が祝日となったベルリン。市内でも大きなデモが行われました。「世界女性の日が祝日となって、男女同権がうたわれるのはいいけど、本当にいいのは365日それができること!」。ほんの少しずつですが、女性を取り巻く状況は改善されつつあるーと思いたいものです。

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河内 秀子
河内 秀子(かわち ひでこ) 地球リポーター

ドイツ ベルリン在住 東京出身。2000年からベルリン在住。ベルリン美術大学在学中から、ライター活動を始める。 現在雑誌『 Pen』や『 料理通信』『 Young Germany』『#casa』などでもベルリンやドイツの情報を発信。テレビのコーディネートも多数。http://www.berlinbau.net/

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