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2020.04.09 | 河内 秀子

「#stayhome」できないホームレスに支援を ドイツ

日本でも、新型コロナウイルスの感染拡大を防ぐために、外出を控えて「できるだけ家にいる」ことが求められています。しかし、その「家」がない人たちは、どうすればよいのでしょうか。

ドイツでは3月23日から全国区での接触禁止、外出制限の措置が始まりました(同居している家族など以外の他人との距離は、最低1.5メートル以上取ること、しっかり納得のいく理由がない場合は外出しない、など。現時点で4月19日まで)。

しかし、#stayhome(家にいるように)、と呼びかけられても、その「家」がない人たちは困ってしまいます。3月16日から、大人数が集まるような公共の場所、店などが閉鎖されたことを受け、緊急一時宿泊施設や、温かい食事を無料配布するような施設の多くが感染を防ぐために閉鎖されたり、受け入れを縮小し、公園や公衆トイレも場所によっては入り口に鍵がかかっているところもあります。街を行き交う人が減ったことで、(ホームレスの自立を支援する)ストリート新聞の売り上げや寄付も激減。「ウイルスの感染は怖くないが、このままではほかの理由で死んでしまうかも……」、ホームレスの人たちからの不安の声があがってきました。

ベルリン、ミッテ地区の「ガーベンツァウン」。スーパーマーケットの前にあり、買い物の際に、少し多めにパンや果物などを買って柵に結びつける人も多いようです

そこで、始まったのが、「ガーベンツァウン(Gabenzaun)」というアクション。直訳すると、「施しの柵」という意味で、公園や教会、工事現場の前などにある柵、フェンスなどに、パンやバナナ、ミューズリーバー、飲み物などの、日持ちして、簡単に食べることができるものをビニール袋に入れて結びつけておく、新しい寄付のかたちです。ヨガマットや洋服やハンドソープを置いている人も。4月2日付けのベルリン・ブランデンブルク・ニュース「MOZ」によれば、ベルリン市内だけでも、すでに47カ所の「ガーベンツァウン」ができているそうです。

ベルリン、クロイツベルク地区の公園の前の「ガーベンツァウン」。小さな子どもも寄付に参加したのか、踏み台が置かれている。パズルなどのおもちゃも置かれています。「親愛なる、家のない暮らしをしている人、金銭的に困っている人、ガーベンツァウンから必要なものを持っていってください」との手紙が。

また、閉鎖している宿泊施設の代わりとして、現在閉鎖している市内のホステルが、ベッドを提供することになりました。3月31日、まずティーアガルテン地区にあるユースホステルで200人分の部屋が提供されることに。入館時に、個人情報の提供をする必要もなく、国籍などは問わず、家がなくストリートで生きている人たち全てを対象にすると、ベルリン社会保障部署のスポークスマンが発表。女性だけのフロアもあり。緊急一時宿泊施設も、感染を防げるような体制を整え、再開準備を進めています。

そして、4月1日から、Sparda銀行、ベルリン市交通局、スーパーマーケットチェーン「EDEKA」、広告代理店「DOJO」など、いくつかの企業が団結して、「ロジーネンブルミ(レーズントラック)」をスタート。

レーズントラック、といっても、レーズンを載せているわけではありません。1948〜49年、西ベルリンが封鎖された際に、ベルリン市民を救うため、西側諸国が空からお菓子(レーズン)などの食料品を落とした「ロジーネンボンバー」作戦をもじったプロジェクト名を冠した、困窮する人たちに対するサポートなのです。ベルリン交通のバスに、市内20カ所のEDEKAスーパーマーケットからの食料(イースターバニーのチョコレートも!)を入れた紙袋を乗せて、町中を回り、約500人に手渡しました。

ロジーネンブルミ(レーズントラック)を伝えるニュース報道

ホームレスの人たちが新型コロナウイルスの情報を得ることができるようにと、寄付で集まったSIMカード付きのスマートフォンを約2000人のホームレスの人に配るという計画もあるそうです。ベルリン=ブランデンブルク放送のニュースでは「食料もうれしいけれど、なによりも会話があるのがうれしい」というコメントが取り上げられていました。

ドイツは国が裕福だからほかの人を助けることができるのだ、という意見も耳にします。それはある意味正しいとは思います。しかし、今後、世界的に不況が訪れると予想される中、いつ自分たちもどうなるかわからない状況だからこそ、明日は我が身。同じ社会の中で生きている人たちを思うことは、自分のためにもつながっていくのではないでしょうか。

今年オープンした支店「ヒンメル8」を任されているYousefさん(右)とGhayedhさんが腕を振るう  ©︎Andreas Toelke

自らの体験を経て、ホームレスの人たちに何かしたい、と立ち上がった人たちもいます。シリア、アフガニスタン、イラン、イラクなど、様々な国から難民としてドイツにやってきた人たち。現在、「クロイツベルガー・ヒンメル」というレストランを中心に働いている彼らですが、店はいま閉店中。シリア料理のケータリング業で起業したGhayedhさんとともに、ホームレスの人たちに温かい食事を配給するサービスを始めました。まずは一週間で約470食を作り、まだまだ注文は増え続けているそうです。「ドイツに来た時、たくさんの人たちが私たちを助けてくれた。だからいま、そのお返しをしたい。やりがいがあります」と、キッチンのスタッフ、Layaliさんは言います。

「クロイツベルガー・ヒンメル」のキッチンで、料理を作るLayaliさん。「今日はパスタに野菜でソースを作ります!」 ©︎Andreas Toelke

先の見えない不安と孤独の中で心の支えになるのは、助け合い、思いやり。そしてそれが、未来へとつながっていく。彼らの笑顔が、それを物語っているようです。

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河内 秀子
河内 秀子(かわち ひでこ) 地球リポーター

ドイツ ベルリン在住 東京出身。2000年からベルリン在住。ベルリン美術大学在学中から、ライター活動を始める。 現在雑誌『 Pen』や『 料理通信』『 Young Germany』『#casa』などでもベルリンやドイツの情報を発信。テレビのコーディネートも多数。http://www.berlinbau.net/

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