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2018.03.06 | 岩井 光子

育児休業中の父親たちのリアルな日常  巡回写真展「スウェーデンのパパたち」

国立市の子育て古民家「つちのこや」での巡回展。巡回先は小さなスペースが多い。3月20日からは群馬県渋川市役所へ巡回予定

父親と幼い子どもたちの生活の一コマを写した25点の写真が並んでいます。母親がいない何日間か子どもの面倒をみた、という男性は結講いるかもしれませんが、ここで被写体となっているのは、少なくとも半年以上育児休業を取得した20代から40代前半の若い父親たちです。

6カ月以上、育児にかかわった父親それぞれの写真から、子育ての実態が伝わります。歳の近いきょうだい2人分の食事や歯磨き、着替え、お風呂―。生活のお世話に追われる場面は臨場感いっぱいで、子どものかん高い声や部屋の物音まで聞こえてきそうです。中には、無邪気に遊ぶ子どもたちを放心状態で見つめる、ややお疲れ気味のお父さんも…。

「スウェーデンのパパたち」展(主催・スウェーデン大使館、スウェーデン文化交流協会)は、今年7月まで日本全国を巡回しています。写真家のヨハン・ベーブマンさんは、自身も2人の子のために19カ月間の育児休業をとった経験から、子育てに奮闘する父親のリアルな日常を撮ることにこだわった、と言います。確かに、公園でさわやかに子どものブランコを押す、コマーシャルショットのような写真は一枚もありません。

男女平等政策に力を入れるスウェーデンらしい育児休業制度が、“パパ・クオータ制”です。夫婦は自分たちの子どもが生まれるか、養子縁組をした場合、2人で計480日間の育児休業をとる権利がありますが、夫婦がお互いに譲り合えない日数としてそれぞれ90日間が割り当てられています。つまり、父親が育児休業をとらなければ、割り当て分の賃金保障期間はなくなってしまうという仕組みが、パパ・クオータ制です。この制度が功を奏し、スウェーデン男性の育児休業取得率を90%にまで押し上げていますが、そんなスウェーデンでも、育児休業を夫婦で平等に分担して取得する夫婦は、まだ全体の14%に過ぎないそうです。

ベーブマンさんは言います。「5年前に父親になって育児休業を取った時、たった一人で生命の全責任を背負う、事の重大さにショックを受けた。模範となる人も周りにはいなかった」。先進的な政策を掲げるスウェーデンでも、子育ては女性の方が向いていると考える男性はまだまだ多い、と言います。ベーブマンさんが実際に育児休業をとって気づいたのは、男性に限らず、女性だって、現実には絵に描いたような完璧な子育てなんてできないということ。みんな失敗しながら親になっていく、と励ますように、ベーブマンさんは、日々笑顔といらだちが繰り返す、ありのままの父子の日常を写し取ろうとしました。

各写真には父親の職業、年齢、育児休業の取得期間、そして、育児経験を通して気づいた正直な思いがコメントとして添えられています。

©Johan Bävman

ムラト(34歳)アートプログラム制作者 
ジェンダー心理学のコースを先攻していた時に、私たちの社会における機会均等の重要性を理解しました。私は父親として割り当てられた役割を務めるのはやめました。子どもにとって妻と同じぐらい重要な存在でありたかったのです。子どもと一緒にいるのに、これ以上、適切な時期は来るのでしょうか? 私は親として不十分だと感じる事が多くありますが、私はその不安を克服しようとしています。自分の限界を認識し、今をもっと楽しむことを学ぶということです

ベーブマンさん夫妻は、奥さんもフリーランスのジャーナリスト。「お互いにフリーランスの身で、育児休業で仕事を失う不安もあったが、子どもの乳幼児期にそばにいることは、減収になってもかけがえのない時間だった」と、当時を振り返ります。一度育児をみっちり経験したことで、その後も夫妻交代で育児ができ、仕事も家庭も尊重する良い“チーム”としてお互いの関係を築けたそうです。

ちなみに日本の父親育休取得率は、過去最高で3.16%(2016年度)でした。政府は2020 年6月までに父親の育児休業取得率を13%にする目標を掲げていますが、達成の見通しは立っていません。リアルな父子の写真やコメントは、取得率のデータよりもずっと見る人にさまざまな感情を呼び起こします。パパ・クオータ制の導入も検討されている日本。この巡回展は育児のパートナーとして、父親の役割を考えたり、議論したりするきっかけとしては、またとない機会なのかもしれません。

岩井 光子
岩井 光子(いわい みつこ) ライター

地元の美術館・新聞社を経てフリーランスに。東京都国際交流委員会のニュースレター「れすぱす」、果樹農家が発行する小冊子「里見通信」、ルミネの環境活動chorokoの活動レポート、フリーペーパー「ecoshare」などの企画・執筆に携わる。Think the Earthの地球ニュースには、編集担当として2007年より参加。著書に『未来をはこぶオーケストラ』(汐文社刊)。 地球ニュースは、私にとってベースキャンプのような場所です。食、農業、福祉、教育、デザイン、テクノロジー、地域再生―、さまざまな分野で、地球視野で行動する人たちの好奇心くすぐる話題を、わかりやすく、柔らかい筆致を心がけてお伝えしていきたいと思っています!

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