contents
第2回エデュケーター・ギャザリング
エデュケーターからの報告
2023年2月28日、第2回エデュケーター・ギャザリングが開催されました。このイベントは「SDGs for School 認定エデュケーター講座」を受講修了したエデュケーターの皆さんを対象に、情報共有や活動報告、エデュケーター同士のつながりを作る場として開催しています。7名のエデュケーターのみなさんによる活動報告を中心にレポートしていきます。
第1部のレポートはこちら
眞鍋和博さん:北九州市立大学
眞鍋さんは北九州市立大学の教授でありつつも、現在はイギリスに在住し、ウィンチェスター大学にてMBAを学んでいる学生でもあります。学生を教える中で「学生たちを送り出す“社会側”が変わる必要がある、もっと自分ができることがあるのではないか」と考え、社会について学ぼうと思い至ったそうです。
ウィンチェスター大学のサステナビリティの取り組みとしては、売店では食品などの量り売りが行われていたり、ビーガン専用のカフェもあります。ベジタリアンやビーガン向けのメニューは、コンビニなど手に取りやすい場でも一般的に提供されているそう。ブラックスチューデント向けや、ムスリム向けの大学パンフレットもあるのだといいます。
一方、イギリスのゴミに関する状況は芳しくなく、いまだに埋め立て処理が多く、ゴミ処理に関しては日本の方が進んでいると感じているそうです。
ウィンチェスターの街には、サステナビリティに関する活動をする団体も多く、眞鍋さん自身も活動に参加し「自分たちの地域をより良くしよう、という市民の熱気を感じている」と話しました。眞鍋さんは「おぢさん留学 in UK」と題し、noteでの発信も行っています。
きらめきひいろさん(VTuber):一般社団法人SDGsヒーローズ
代表理事の井上麻理子さんとVTuber「きらめきひいろ」が、活動報告を行いました。
一般社団法人SDGsヒーローズでは、産学官の連携をしながらSDGsについて情報発信をしています。愛知県警察本部とのコラボでは、おまわりさんが取り組んでいるSDGsについて発信。南山大学とのコラボでは、名古屋エシカルフェアで大学生と一緒にSDGsクイズを行ったり、SDGsのオリジナルソング2曲をライブで披露したそうです。
2022年12月には、一般社団法人日本国際協力センター(JICE)が主催する海外の方との交流イベントにも参加し、きらめきひいろさんがフル英語で海外の方と交流したそうです。
井上さんは「SDGsを伝える際には、難しい言葉や暗い話題も出てきます。でもVTuberを通すことで伝わりやすかったり、聞いてもらいやすかったりします」と、VTuberで発信する意義を実感しているとのことでした。SDGsヒーローズ チャンネルでは、さまざまなSDGs情報を発信しています。
藤原敏晃さん:昭和女子大学附属昭和中学・高等学校
藤原さんからは、昭和女子大学附属中高部で実施している「OPERATION GREEN」という取り組みについて報告いただきました。この取り組みは一般社団法人アースカンパニーのサポートのもと行っています。
活動には3つのグループがあり、Foundation(基盤づくり)ではインスタグラムを中心に啓発活動や校外への発信を行っています。
CO2 Reduction(二酸化炭素削減)では、学園内の二酸化炭素排出源を調査し「カーボンダッシュボード」で可視化。月26万kgのCO2を排出していることがわかりました。その96%が「電力消費」に由来しており、これを受けて、節電キャンペーン「カエル・キャンペーン」を展開。生徒が作ったカエルのステッカーで、校内に節電を呼びかけたり、太陽光パネルの増設を学園本部に提案などをしたりしたそうです。
Waste Management(廃棄物管理)では、まず紙資源の無駄ゼロを目指した「裏紙ポスト」の導入を開始しました。今後は「ノーペットボトルDay」の実施や、コンポスト導入も目指しているそう。
「リジェネラティブな世界をみんなで作っていきたい、その一歩として学校をリジェネラティブにしていこう」と活動を行っています。
森由香さん:ルーデンス株式会社、NPO法人横浜コミュニティデザイン・ラボ
森さんからは、代表取締役副社長を務めているルーデンス株式会社での取り組みについて報告いただきました。横浜市のイベント運営会社であるルーデンスでは、社員向けにSDGsの講座を行ったり、SDGsに配慮した企画提案を行うよう呼びかけたりしているそうです。
日々使う封筒やフォルダーは、廃盤海図を活用したものを使用。産業廃棄物と紙資源の削減に取り組んでいます。
クイーンズスクエア横浜のクリスマスツリーの設置・運営では、SDGsと絡めた企画を行い、点灯式では地元の小学生によるSDGsに関する発表を行いました。日本大通りでは「SDGs Day」と題し、SDGsアクションボードに投票をしてくれた方に、地産地消のおでんを提供したそうです。
横浜市にはSDGsの認証制度があり、三段階中、二段階目の認証を受けているルーデンス。森さんは、「小さい会社ですが、それぞれの立場でやれることをやっていこうという意識で取り組みを行なっています」と話しました。
朝日仁美さん:絵本でSDGs推進協会
朝日さんからは、2つの活動について報告いただきました。
1つ目は、渋谷の国連大学で開催された「第3回パリ協定とSDGsシナジー強化に関する国際会議」にて「絵本でSDGs」の活動を紹介したこと。絵本という世界共通のツールでSDGsの話ができることを伝え、絵本を読む機会がない方にも知ってもらえるいい機会になったといいます。
2つ目は、別冊太陽シリーズ『絵本で学ぶSDGs』(平凡社)の出版。このムック本では、絵本専門士5人でSDGsの17ゴール+1、合わせて18テーマで絵本を選書し、総勢38人の絵本専門士や大学の先生などがレビュー。例えばゴール5に関連する絵本『ぼくのママはうんてんし』、ゴール9に関連する仕掛け絵本『発明絵本 インベンション!』などが紹介されています。「絵本リストでもあるので、子どもに関わるいろいろな方、絵本にちょっと興味があるなという方にぜひ見ていただきたい」と呼びかけました。
橋田正城さん:朝日新聞社
橋田さんからは、伊藤忠商事と朝日新聞社が取り組んでいるオンラインイベント「SDGs ミライテラス」についてご紹介いただきました。月1回開催してきたこのイベントでは、SDGsをグローバルな文脈で理解するために、国内外のプレイヤーの声を紹介しています。
例えば「コーヒーの2050年問題」について開催した回では、地球温暖化で美味しいコーヒー豆が取れなくなってしまう問題や、児童労働の問題について、UCCの方をお招きし考えました。伊藤忠商事からは元中南米駐在員の方が参加し、ビジネスの観点からコーヒーについて考えていきました。
そのほかにも講演会を開催。かつて誤認逮捕され一貫して無罪を訴え続けていた、村木厚子さんをお招きし「困難にぶち当たった時、人はどう生きるのか?」というテーマについて、高校生や大学生とセッションを行いました。
これらの取り組みのコンセプトは「SDGsでビジネスと教育の橋渡しを」。学生の関心に沿った企画を意識しているそうです。アーカイブ動画は、探究授業の導入部分などで活用可能。学校の先生はぜひお声がけくださいと呼びかけました。
松山桃世さん:東京大学生産技術研究所
最後の発表は、松山さんから、東京大学 生産技術研究所で作っているカードゲームについて紹介いただきました。「ひみつの研究道具箱」カードゲームは、最先端技術を「自分の道具」と捉え、使い方を楽しく考える体験ができるカードゲームです。
教育学的な調査によると、子どもたちはSDGsの問題を知ることには興味がある一方、それをどう解決するか考えたり、解決するためにはどんな技術が必要かを考えたり、その技術を社会に取り入れる際の問題点などを考えることには興味がない、という傾向が分かっているそうです。そのような課題感が元になり、社会課題に対して最新技術を使う体験を、ハードルを下げてできないかと考え生まれたのが、このカードゲーム。
ルールは、1人につき5枚の技術カードが配られ、それらを組み合わせて“ピンチ”を解決するアイデアを競うというもの。これまでさまざまな人を対象にカードゲームを実施し、特にSDGsの課題をピンチとして設定して実施した回では、子どもも学生も大人も、前のめりに参加する様子が見られたそうです。
ーーーーーー
今回のエデュケーター・ギャザリングも、さまざまな場で精力的に活動されている皆さんの報告が集まりました。浜田さんの講演では「ジェンダー後進国」という日本の現状について教えていただき、黒部さんからはCOP27で見た世界の人々の様子を共有いただきました。SDGsは「世界共通の目標」であることを、改めて意識したいです。
今回できたエデュケーター同士の繋がりや再会が、次のアクションにつながっていくことで輪が広がっていくといいなと思います。エデュケーターのみなさんからの新たな企画や提案もお待ちしています。
執筆:佐藤由佳