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Art & Design

マレー機撃墜現場に咲くヒマワリを収めた、1枚の静物写真

2014.10.20 ユイキヨミ

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バス・メーウス作「ヒマワリのブーケ」


花をモチーフにした写真作品を作り続ける、アーティストのバス・メーウス さん。彼はこの夏、ある人物の依頼で、ヒマワリをモチーフにした特別な作品を制作しました。

暗い影を落とす枯れたヒマワリや墓前に捧げられたようなバラ、麦や野花で構成されたブーケが、土のついた陶器の花瓶に生けられた「ヒマワリのブーケ」と題された作品です。

この依頼主は、ヨーリス・ヘンテナールさんという国営放送のTVカメラマンでした。シリアなど戦場でのルポルタージュを多く手掛け、7月17日にウクライナで撃墜されたマレーシア航空機の現場にも真っ先に駆けつけたクルーの一人です。実はヘンテナールさんの親しい友人も、この飛行機に乗っていました。

事件発生直後、クルーたちは、遺体の周りに散乱する遺留品をオランダに持ち帰り遺族に届けたいという衝動を抑えながら、報道を続けたと言います。不安定な地域情勢から、現場に駆けつけたいと言う遺族の望みは当面叶わないこと、そして遺体や遺留品の回収は難航することを予測していたからです。それでも、どうしても友人の遺族に、この現場から何か慰霊の品を持ち帰りたいと考えたヘンテナールさんの目の前には、咲き乱れるヒマワリ畑が広がっていました。彼は、その場でかねてから作品を通して知っていたメーウスさんに電話をかけ、ヒマワリを持ち帰るのでオランダで撮影してほしいと依頼。メーウスさんは快諾しました。他にもさまざまな植物や現場の土をかき集めて、ヘンテナールさんはオランダに帰国しました。

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機撃墜現場周辺は、一面のヒマワリ畑。このヒマワリをかき分けるように歩き回る調査団の姿が、ニュースでも流れていた (写真提供:Joris Hentenaar)


「ヒマワリや麦、野花は、現場付近に咲いていたもの。言ってみれば、今事件の無言の目撃者たちです。バラは、地元の人々が被害者のために献花した花束から抜き取ったもの。そして花瓶には、現場の土を付着させました」と説明するメーウスさん。ディテールに深い意味合いを込めた、心を打つ作品を完成させました。背景の青は、飛行機が撃墜されたウクライナの夏の空の色を、机面のステンレスは飛行機を象徴しています。現場の土を焼き付けた花瓶は、オランダ最古の窯元で特別に焼いてもらいました。

花を受け取ってからと言うもの、メーウスさんは連日個々の花が枯れていくプロセスを個別にカメラに収め続けました。その何百枚にも上る写真から選りすぐった写真を画像処理ソフトで組み合わせて、ひとつのブーケを構成しています。

このブーケを制作中、「人の不幸をネタにする偽善者」などの中傷も数多く受けたとメーウスさんは告白します。けれども彼は、ヘンテナールさんの真摯な依頼に応えるべく、数カ月に渡って集中して制作活動を続行。こうして完成した作品は、ヘンテナールさんの友人の家族だけではなく、希望する遺族全員に進呈されることになりました。

事件からちょうど3カ月が過ぎた10月17日、墜落現場の周辺住民らは被害者を偲ぶ慰霊式を行いました。至る所に手榴弾が散乱する荒涼とした事故現場に質素な十字架を立て、皆で祈る姿がオランダでも報道されました。事件発生直後、オランダのルッテ首相は「真実が明らかになり犯人が裁かれるまで追求をやめない」と強い言葉で訴えましたが、遅遅として進まない調査に関係者らのいらだちはつのります。そんな中、11月10日には、オランダ政府による被害者の追悼式が執り行われる予定です。

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バス・メーウスさん。古典絵画を彷彿させる花の写真を撮り続けるアーティスト(左)。メーウスさんのアトリエにあった、ウクライナのヒマワリやバラ(右)


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