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Biodiversity

「外来種=侵略者」の偏見を覆す生態系にやさしい役割

2011.06.24 中川 真琴

Tamarisk:Creative Commons,Some Rights Reserved,Photo by Anita363

ハブ駆除のために外から持ち込まれたマングースが、沖縄の固有種であるヤンバルクイナの生存を脅かす―このように、人間によって持ち込まれた外来種が新しい土地で生態系を崩し在来種を絶滅の危機に追いやってしまうケースは世界各地で多く見られます。

しかし「外来種=侵略者=悪者」という面だけに注目するのは外来種に対する偏見であり、その偏見が生態系保護に悪影響を及ぼす場合もあると、世界各国19人の生態学学者が共同で6月9日付の学術誌Natureに論文を掲載しました。

そもそも外来種はすべてが侵略的外来種になるわけではありません。しかし1980年ごろからその侵略的な側面が大きく問題視されるようになり、外来種駆除が生態系保護、生物多様性保護の手段として多く行われるようになりました。

しかし外来種の中には、新しい土地で生物多様性保護に役立っているものもあります。論文で取り上げられているのが、19世紀初頭に土壌浸食を防ぐため米国南西部に持ち込まれたタマリスク(ギョリュウ科)の木。当初は重宝されたタマリスクも、在来種であるハコヤナギなどの生息を脅かすとして1930年代に侵略的外来種に指定され、以後70年にわたり駆除が行われてきました。しかし近年になり、タマリスクが、絶滅危惧種に指定されたメジロハエトリの一種を含む多くの鳥の棲みかとして利用されていることが判明。河川管理や気候変動で人為的に変えられつつある川岸の環境には自生のハコヤナギよりタマリスクの方が適しており、タマリスクは変化しつつある自然環境で新しい生態系を築いているともいえます。

自然環境は常に変わっています。海や河川の富栄養化、都市化、気候変動などの人為的変化もその大きな原因です。「外来種だから駆除」という先入観を捨て、外来種が新しい生態系で果たしている役割を理解し、正しいデータや立証された事実に基づいて外来種を扱うことが重要だと論文は強調しています。



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中川 真琴