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Food

福島を復興させる特産品は、「かーちゃん」たちの知恵と技術

2012.08.28 瀬戸 義章

「かーちゃん農場」で収穫したミニトマトを調理する渡邊文子さん photo by yoshiaki seto

トマトキムチ。口の中でミニトマトの爽やかな酸味が広がり、キムチのしつこい辛さを和らげてくれます。何とも夏にぴったりの味でした。しかも、トマトを食べ、汁をご飯にかけて、残ったキムチの具をキュウリとまぜる、と3回楽しむことができます。福島県相馬郡飯舘村のキムチ名人、高橋トク子かーちゃんによる逸品です。

このキムチは、「かーちゃんの力・プロジェクト」によって、製造・販売されています。プロジェクトの参加者は、飯舘村や浪江町・葛尾村・川内村など、居住制限がかかっている地域の出身です。福島第一原発の事故により、原発周辺に住んでいた約16万人もの人々が、いまだに避難を余儀なくされています。

震災発生からしばらくは、避難先であきらめムードが漂っていました。しかしそこは、毎日仕事に精を出していたかーちゃんたち。「このままじゃいけない。甘えたまんまじゃだめだ」「あるものを使って、何とか自立しよう」と決意します。福島大学やまちづくりNPOなどの支援を受け、「かーちゃんの力・プロジェクト」は2011年の10月に立ち上がりました。

いまでは10人以上のかーちゃんたちが働くプロジェクトへと成長しています。営業の結果、お弁当やお総菜は、仮設所や大学生協、飯舘村役場などで販売することができるようになりました。お弁当は、朝6時からすべて手作り、9品目でバランスもばっちりの「かーちゃんの笑顔弁当」です。今後は直売所も運営していく方針です。

プロジェクトで扱う食品は、すべて放射性物質検査をしています。基準は、国の基準値である1キロ当たり100ベクレルよりも厳しい20ベクレル。検出限界に近い数字です。しかも、1回の検査には、1キロの加工食品が必要になります。せっかく手作りしたお弁当の1キロ、ケーキの1キロ、たれの1キロを提供しなければなりません。弁当は3個分で1,500円分が破棄処分になります。「品目が変わるごと」に検査をしなければなりません。

「悔しくてたくさん泣いたけど」と、プロジェクト協議会代表の渡邊とみ子さんは言います。「このままではかーちゃんたちの『味』も『技』も『人』も、消えて行ってしまいます。だから、関わった人の歴史を残していきたい。そのためにも、あきらめない! という強い気持ちで頑張っています」

※Think the Earthは「東日本大震災 忘れないプロジェクト」を通じて「かーちゃんの力・プロジェクト」を応援しています。



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瀬戸 義章