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2017.12.25 | 宮原 桃子

音、匂い、手触り…障がいのある人たちが、ワクワクできる旅を! 韓国ツアー会社の挑戦

アミューズ・トラベルのメンバーたち ©Amuse Travel

2020年の東京オリンピックが近づくなか、「ユニバーサルツーリズム」 という言葉を耳にする機会が増えています。年齢や障がいの有無、性別や国籍などに関わらず、すべての人が楽しめる旅行を指します。当たり前のことのように感じるかもしれませんが、例えば障がいを持つ人が旅行をする時、対応できるツアーやホテル、交通手段、介助ヘルパーなどを探すだけでも簡単ではありません。

©Amuse Travel

 

障がいを持つ人たちが、もっと気軽に旅を楽しめるようにしたい。そんな想いから、昨年10月に韓国で新しいツアー会社「アミューズ・トラベル」が誕生しました。創設者のオウ・ソヨンさんは、数年前に障がい者支援のボランティアに関わった時、日常生活での苦労を目の当たりにしました。同時に、日常を離れて旅行を楽しみたいというニーズは高いのに、いざ旅行しようとすると現実的にはさまざまな問題があることも感じました。

創設者オウ・ソヨンさん ©Amuse Travel

アミューズ・トラベルは、障がいを持つ人たちが、見知らぬ土地でも楽しく旅行ができるよう、国内外にホストネットワークを築いています。ホストは、ソーシャルワーカーや看護師などさまざまなバックグラウンドを持つ人びとで、ツアー準備のサポートやガイド役を担います。現地に詳しいだけでなく、さまざまな障がいに合わせて、どういうホテルや移動手段が良いか、どんなサポートが必要かを心得ています。

スタッフとツアー参加者 ©Amuse Travel

また、同社が大切にしているのは、「旅の楽しさ」。障がい者の方向けのツアーというと、安全面やスムーズな移動など、基本的な環境整備ばかりに目が向きがちですが、旅の原点はやはり楽しむこと。同社スタッフのジュヨンさんは、こう言います。「旅先で美味しいものを食べたい、素晴らしいものを見たいという気持ちは、障がいがある人もない人も同じですから」

同社が企画する、五感ならぬ「三感ツアー」では、見る・聞く・匂いをかぐという3つの感覚に焦点を当てています。視覚障がいを持つ人向けには、匂いや音をよく感じられる場所を選び、語りに力を入れます。例えば、2泊3日のチェジュ島(済州島)の三感ツアーでは、「滝の音を楽しもう、岩に触れて感じよう、済州島の風の匂いを吸い込もう」がキャッチコピー。同社は障害のタイプを15種類、6段階に分類し、それぞれに対応したツアーパッケージを企画しています。

©Amuse Travel

旅の目的地は、韓国国内が6割、海外が4割で、大阪やシンガポール、バリ、ハワイ、ヨーロッパなどバラエティに富んでいます。ツアーは、オンラインでも簡単に検索・予約ができます。各ツアーのページには、車いすや目などのアイコンが表示され、どのような障がいに対応した企画なのかがひと目でわかります。従来のように、本人や家族があちこちへ電話をかけたり、情報を集めたりする苦労はありません。

同社は今後も、旅行を通じて、障がいを持つ人びとの暮らしをより楽しくし、また障がい者と健常者が交わって一緒に楽しむ機会を増やせたら、と考えています。同時に、これはビジネスとしても成り立つ、サステナブルな事業だと感じています。世界で何らかの障害を持つ人は、全人口の約15%、10億人以上と推計されています(WHO)。「これは、決して小さなマーケットではありません」と、創業者のオウさん。同社のツアーには、創業から1年を経た今までに、約800人が参加しました。平昌オリンピックを目前に控え、同社には、障がいを持つアスリートや観光客からの問い合わせや依頼が増えているそうです。

チェジュ島(済州島)ツアーの広告。左上の「目」 のアイコンは、視覚障害者に対応していることを意味する ©Amuse Travel

日本でも、2020年の東京オリンピックに向けて、さまざまな人が楽しめる旅行環境が求められています。「全日本盲導犬使用者の会」会長を長く務め、各地を飛び回る視覚障がい者の清水和行さん(鍼灸治療院「あんま天国はり治国」院長)は、今の日本の現状やこれからについて、こう語ってくれました。

「例えば障がい者が国内で旅行をする時、地域の社会福祉協議会や役所、観光案内所など、さまざまなところに連絡を取りながら、情報を集めたり、介助ボランティアを探したりして、旅行を準備します。これには、エネルギーや時間が必要です。自分でやりたい・やれる人もいれば、旅行会社に任せたい人もいます。ましてや海外となれば、言葉の問題や現地の事情もわからないので、やはり旅行会社の存在は重要です。

障害に対応する専門の旅行会社もなかにはありますが、一般の旅行会社でも障がいに合わせて、旅をカスタマイズし、柔軟に相談に乗ってくれるところがもっと増えていくといいですね。先日四国を旅しましたが、例えば視覚障がい者にとって印象に残るのは、城の天守閣に上る階段がきしむ感覚、瀬戸内海の海の音、藁(わら)焼き体験の香りなど、感覚に訴える体験です。 ガイドの仕方も、見えなくてもイメージしやすい説明が嬉しいわけです。また、障がいを持っていると、同じことをするのにも移動にも時間がかかり、通常の旅行ツアーではスケジュールがタイトすぎます。そうしたさまざまな工夫や配慮が、重要になります」

今後、日本でも世界でも、こうした柔軟で多様な旅行サービスが広がるためには、さまざまな障がいに合わせた情報や知識、経験を持つ人材が欠かせません。ホストネットワークを開拓しながら、多様な障がいに合わせて「楽しい旅」を提供するアミューズ・トラベルの試みは、これからの参考になるのではないでしょうか。

宮原 桃子
宮原 桃子(みやはら ももこ) 地球リポーター

日本貿易振興機構(JETRO)に勤務後、フェアトレードファッション・ブランド「People Tree」にて、バングラデシュ・インド・ネパールでの衣服生産を支援する仕事に携わる。ドイツでの子育て生活を経て、帰国後は親子向けにフェアトレードを学ぶワークショップを企画する団体「フェアトレードガーデン世田谷」(本部・東京)を運営。フェアトレード絵本「ムクリのにじいろTシャツ」の筆者。現在は広島に暮らしながら、フェアトレードや環境、平和などのテーマを中心に執筆。 この社会を変えられるのは、私たち一人ひとりです!社会や世界で起きていることを「自分ごと」として感じ、考え、行動する。そんなきっかけになるような記事をお届けしたいと思います。

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