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2021.11.12 | ささ とも

COP26に厳しい評価 気候変動対策を訴える未来世代に耳を傾けよう

国連の気候変動対策の会議「COP26」が10月31日からイギリス、グラスゴーで開催されています。地球の平均気温の上昇を1.5度未満に抑えるため、温室効果ガスの排出量を世界はどれだけ減らせるか。この会議の取り決めが、わたしたちの近未来を大きく左右することになります。


COP26 – Friday’s for Future Creative Commons,Some Rights Reserved,Photo by Fraser Hamilton

COP26で各国首脳とともにメディアから大きな注目を集めたのが、スウェーデンの環境活動家グレタ・トゥーンベリさんを中心とした未来世代の若者たち。5日の金曜日は「ユースデー」とされ、約2万5000人もの若者による大規模なデモが行われました。演説したグレタさんは「COP26が失敗なのは明らかだ」と痛烈に批判、これまでと同じで何も解決できないと訴えました。

グレタさんが抗議運動を始めたのは2018年8月。当時15歳だった彼女はスウェーデン政府の気候変動対策に抗議するため、「気候のための学校ストライキ」と書いたプラカードを抱えて、国会議事堂前で3週間座りこみをします。彼女の抗議活動はSNSで瞬く間に広まり、世界中の若者を巻き込んで「未来のための金曜日」運動に発展。2019年3月15日の金曜日には、彼女の呼びかけで、世界128カ国の140万人以上の若者が参加する大規模な学校ストライキになりました。(*1)

(*1)『気候変動に立ちむかう子どもたち』(太田出版、2021年4月)より。

なぜ、グレタさんはこれほど短期間で、世界の大勢の若者の心を動かしたのでしょうか。それは彼女の一貫性のある発言と行動だと思います。彼女が訴えているのは、「科学を信じる」こと、そして気候危機を避けるため「行動を起こす」こと。グレタさんは2019年9月のアメリカ議会下院の公聴会で、こう訴えています。

2018年1月1日時点で、あと12年以内に二酸化炭素の排出量を半分にしなければならない、という話を聞いたことがある方もいるでしょう。それでも、地球の気温上昇を工業化以前と比べて1.5度未満に抑えられる確率は50%だということは、ほとんどだれも聞いたことがないと思います。……

ではなぜ、気温上昇を1.5度未満に抑えるのが、それほど重要なのでしょう? それは、気候の不安定化を避けるために必要な、科学的根拠のある水準だからです。……

ならば、どこから始めればよいのでしょう? IPCC(気候変動に関する政府間パネル)による報告書……には、気温上昇を67%の確率で1.5度未満に抑えるとすると、2018年1月1日時点で、残余カーボンバジェット(訳注:地球の温度上昇を1.5度未満に抑えるために排出できる二酸化炭素の上限)は、約420ギガトンと書いてあります。……

現在の排出量のままだと、残余カーボンバジェットは8年半も経たないうちに失われてしまいます。

子どもの将来を、硬貨を投げて決めるような賭けに出てはいけません。
そうではなく、科学に基づいて団結してください。
行動に出てください。(*2)……

(*2)『グレタ・トゥーンベリ:信念は社会を変えた!6人のインタビュー』(あすなろ書房、2020年6月)より

気温上昇を1.5度未満に抑えられる確率が、硬貨を投げて表か裏が出る確率と同じでは、今の対策は不十分——グレタさんの訴えに賛同した若者が、世界各地で気候変動が突きつける課題と向き合い、さまざまな活動を繰り広げてきました。

アメリカ合衆国のアニヤ・サストゥリーさん(18歳)は、気候危機によって影響を受けている2つの地域の問題を題材にしたドキュメンタリー映画を制作しました。カナダ企業がタールサンドのパイプラインを建設している、ミネソタ州北部の先住民が住む地域と、大気汚染が住民の健康被害を引き起こしているシカゴの工業地帯中心部です。

中国のハウェイ・オウさん(17歳)は、2019年5月に行われた「未来のための金曜日」にひとりで参加し、地元政府の庁舎前で気候変動対策の強化を訴えました。警察の取り締まりを受けるなど、抗議活動が妨げられることもありましたが、仲間を募って植林運動を立ち上げ、毎週金曜日に木を植える活動をしています。

チリのフアン・ホセ・マルティン=ブラヴォさん(24歳)は、気候変動対策を要求するための組織作りをしています。関わってきたプロジェクトのひとつの湿地の修復活動では、チリの国民環境賞を受賞しました。

南アフリカのルビー・サンプソンさん(19歳)は、11歳のときアフリカ一周旅行をし、過酷な旱魃や環境破壊を目の当たりにしたことをきっかけに環境問題に関心を寄せるようになりました。現在、仲間と共に設立したNGO「アフリカ気候連合」で、政府に気候変動対策の強化を求める活動をしています。

ここで紹介した若者たちの暮らす国では、世界中の若者60人の声を集めた本『気候変動に立ちむかう子どもたち』(*3)に詳しく書かれているように、事情がそれぞれ異なります。アメリカ合衆国と中国は温室効果ガスの最大排出国でありつつ、気候危機の問題を抱える一方、南アメリカやアフリカなどの途上国では、排出量は比較的少ないのに、より深刻な気候危機に直面しています。ですが国の事情は違っても、「世界が団結して気候対策を強化し、行動しなければならない」という、世界中の若者たちの訴えは同じです。

(*3)いずれも『気候変動に立ちむかう子どもたち』(太田出版、2021年4月)より。子どもたちの年齢は出版時のものです。

アメリカの気候活動のリーダーで、気候変動対策で同国の政府機関を相手に裁判を起こしてきた、21歳のシューテスカット・マルティネスさん(*4)はこう語っています。「僕たちの世代は、気候変動がもたらす危機を、人類が団結するチャンスへと変えています」(*5)

(*4)マルティネスさんは、2019年に日本でも公開されたドキュメンタリー映画『気候戦士:クライメート・ウォーリアーズ』に出演している。
(*5)ナショナルジオグラフィック、2020年4月3日電子版より

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ささ とも
ささ とも(ささ とも) 地球リポーター

神奈川県在住。翻訳者、ライター。 2010年からThink the Earthのリポーターとして世界の持続可能な取り組みのニュースを発信。気候変動、エネルギー、生態系など幅広い分野で世界の動きを追っていきます。翻訳書『ポストキャピタリズム:資本主義以後の世界』(東洋経済新報社)など。

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