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2023.07.02 | 岩井 光子

養護施設の子どもたちにバイオリン体験を エル・システマジャパンがクラファン

音楽を通してさまざまな境遇にある子どもたちの成長を力強く後押ししてきたエル・システマジャパン。東日本大震災で被災した福島県相馬市の子どもたちの支援に始まり、今では岩手、長野、東京、大阪、京都など全国6カ所に支援の拠点を広げています。私も初期の活動を児童書『未来をはこぶオーケストラ』に書かせてもらいましたが、子どもの成長は早いもので、当時あどけなかった子どもたちは大学生や社会人となり、それぞれの人生を力強く歩んでいます。

©️エル・システマジャパン

11年目を迎えたエル・システマジャパンは今年、新プロジェクトを立ち上げました。児童養護施設の子どもたちに向けた弦楽器教室です。平塚市の「田中バイオリン工房」田中眞次さんが始めた活動の一部を、エル・システマジャパンが引き継ぐことになったのです。

田中さんは、家庭で眠っている弦楽器を譲り受け、修理して児童養護施設の子どもたちにプレゼントするボランティア活動「弦楽りぼん」を2013年に開始しました。田中さんが所属する演奏グループ有志による弦楽教室も追って立ち上げ、丁寧な指導が好評でしたが、2020年以降はコロナ禍で中断を余儀なくされます。最近になって再開を望む声が上がっていたものの、諸事情により継続が厳しくなりました。悩んだ田中さんは事業の一部を引き継いでもらえないかと、エル・システマジャパンに相談を持ちかけました。

田中さんが作成したバイオリンキーホルダー

エル・システマは南米ベネズエラ発祥の社会教育システムです。スラムなどで暮らす貧しい子どもたちに無償で弦楽器を提供し、質の高い音楽を通して子どもたちの生きる力を育むことに成功したストーリーは世界中の共感を呼び、日本だけでなく各国でその理念は継承されています。日本では東日本大震災をきっかけに、日本ユニセフ協会で支援活動に当たっていた菊川穣さんがエル・システマジャパンを立ち上げました。家庭に複雑な事情を抱えた子どもたちに格差なく、質の高い音楽を提供することはエル・システマの使命です。

エル・システマジャパンの紹介動画

プロジェクトを応援するバイオリストの金川真弓さんは、「楽器は身体、精神、知性のすベてを組み合わせて成長させるすばらしい習い事。複雑な事情を抱えた家庭の子どもにこそ必要」とメッセージを寄せていた ©️エル・システマジャパン

活動の意義の大きさを理解したエル・システマジャパンは田中さんの思いを引き継ぐことにしました。まずは4月、川崎市の新日本学園で弦楽器教室を再開すると、小学生から高校生まで12人の施設の子どもたちが集まりました。児童養護施設の子どもたちは習い事の機会が限られており、弦楽器に触れる機会は少なく、合奏の機会も貴重です。

今後は指導陣やカリキュラムの再編を行い、現在活動休止中の東京、神奈川の2つの施設で行われていた弦楽器教室を順次再開していきたいと考えています。エル・システマジャパン本体の活動も支援者の寄付や補助金で運営しているため、新プロジェクトに関しては目下、クラウドファンディングを実施中です。期間は7月14日までで、毎月継続的な寄付をしてくれるマンスリーサポーターを50人集めることを目標にしています。関心のある方はぜひサイトをのぞいてみてください!

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岩井 光子
岩井 光子(いわい みつこ) ライター

地元の美術館・新聞社を経てフリーランスに。東京都国際交流委員会のニュースレター「れすぱす」、果樹農家が発行する小冊子「里見通信」、ルミネの環境活動chorokoの活動レポート、フリーペーパー「ecoshare」などの企画・執筆に携わる。Think the Earthの地球ニュースには、編集担当として2007年より参加。著書に『未来をはこぶオーケストラ』(汐文社刊)。 地球ニュースは、私にとってベースキャンプのような場所です。食、農業、福祉、教育、デザイン、テクノロジー、地域再生―、さまざまな分野で、地球視野で行動する人たちの好奇心くすぐる話題を、わかりやすく、柔らかい筆致を心がけてお伝えしていきたいと思っています!

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