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2022.06.15

透明性を確保した服作りを行う学生団体「やさしいせいふく」 長続きの秘訣はチームとコミュニティのあり方

服の大量生産や大量廃棄、生産過程での労働問題、環境問題、業界構造の課題など、ファッションの社会課題について、聞いたことがありますか? 複雑に絡み合ったこれらの社会課題に対して「Good for the Environment, Good for People, Good for the World」の理念のもと活動するのは「やさしいせいふく」。中高大学生が中心となって、ファッションの社会課題に取り組む団体です。

今回はやさしいせいふくの坂本亮さん(前代表)、島崎恵茉さん、村山一央さん、鈴木菜央さん、活動を支えるビジネスサポーターの稲垣貢哉さんにお話を伺いました。

オンライン取材の様子:坂本さん(左上)、鈴木さん(右上)、島崎さん(左下)、村山さん(右下)

やさしいせいふくが活動を始めたきっかけは、2019年のアースデイ。「SDGs for School」で100人以上の中高生たちが集まり、企画を考えてブース出展した時に、おそろいのイベントTシャツを作ったことがきっかけとなりました。その時に、普段自分たちが着ている制服やTシャツがどのように作られているのか、興味を持ったと言います。身近な服の裏側にあるさまざまな社会課題を知り「人や環境、地球に“やさしいせいふく”に変えていきたい」という想いから活動が始まりました。中学校、高校での講演会やSNS発信を通してアパレル産業の問題点や、服との付き合い方「服は消費するものではない」という価値観を同世代に伝えています。

島崎さん「私たちはさまざまな視点で、ファッションについて課題意識を持っています。服を作る素材の課題に注目する人もいれば、廃棄の問題が大きいのではないか、という人もいます。グローバリゼーションや経済構造に特に関心を持っているメンバーもいますね」

坂本さん「僕は同世代がファッションの社会課題について知らないことも課題だと感じています。課題を知らなければ、行動につなげてもらうことはできません。中学校や高校での講演会、ワークショップなどを通して“未来の購買者”に向けてファッションの社会課題を発信しているんです」

環境にも人にも地球にもやさしいTシャツ

講演活動と並行して、環境にも人にもやさしいTシャツ「やさしいてぃーしゃつ」の製作を進めてきました。オーガニックコットンの国際認証(GOTS)を取得したインド産の綿を使用し、インドの工場に直接発注をしています。オンラインで工場見学や綿農家の声も聞き、製作コストも全てオープンに。2022年4月から、やさしいてぃーしゃつの販売が開始されました。

坂本さん「普段、若者が購入するような服には、環境や人権に配慮した製品はあまりないと感じています。配慮された製品を購入したいと思っても、手軽に購入できる価格ではなくて。現実的な選択肢が少ないなら、半分購買者、半分販売者の僕らだからこそできるものを作ろうと思ったんです」

原料から服が作られ購買者に届くまでの過程を短くし、透明性を確保したTシャツ作り。やさしいせいふくのホームページには、こう書かれています。

「大切な思い出に一番近くで寄り添うTシャツが、一体どんな労働環境で、地球環境に対してどんな影響を与えながらつくられているのか、考えるきっかけすらないのが現状ではないでしょうか」やさしいせいふくHPより

2022年4月16日、17日に代々木公園で開催されたアースデイでは、初めて対面での販売を実施。インドの綿農家の方々とZoomでつなぎ、現地の様子をリアルに知ってもらったり、ワークショップの開催も行いました。

島崎さん「販売は目的ではなく、あくまで手段。中高生に身近なイベントTシャツから、ファッションの社会課題を知ってもらったり、環境や人権への配慮など、さまざまな社会課題に目を向けるきっかけになればと思っています」

購入者がiPadで描いた絵をその場でやさしいてぃーしゃつにプリント。

村山さん「僕は大学受験で一時的に活動をお休みしていたのですが、3年前からは考えられないところまで活動が広がってきたなと感慨深いです。アースデイでは、お客さん一人ひとりに、生産背景やファッションの社会課題について説明しながら『やさしいてぃーしゃつ』をお渡しできたのがよかったですね。今後はオンライン販売が中心になるかと思いますが、課題発信にも重点を置いていきたいと考えています」

アースデイで『やさしいてぃーしゃつ』について説明する村山さん

鈴木さん「私は1年前に新メンバーとして参加し、オンラインの活動を中心に参加してきました。アースデイでは、『どんな活動をしているの?』と聞いてくださる人がたくさんいて、直接課題を伝えられる場の大切さを実感しました。自分たちの目的を再確認する機会にもなったと思います」

消費者も、企業も、ファッションの在り方を見直すとき

「やさしいてぃーしゃつ」を作る過程では、活動に共感する大人や企業とのつながりも欠かせなかったといいます。2020年にはプロジェクトを共に進める企業をメンバー自ら審査する審査会を実施。企業と対等にやり取りする姿勢で大人を巻き込みながら、活動を続けてきたのです。審査会では8社とつながりを作りました。

島崎さん「私たちのプロジェクトは、大人の力なしには実現しませんでした。企業の方や学校の先生など、いろいろな方に応援していただいています。最近NHKの特集を見て、審査会でつながった企業の方から応援のメールをもらったんです。『世の中を変えるきっかけになると思う』という言葉が、とても嬉しかったですね」

やさしいせいふくのビジネスサポーターとして活動に参加しているのは、オーガニック繊維、リサイクル等 サステナブル繊維の普及啓発国際 NPO「テキスタイルクスチェンジ」の元理事で、現在はアジア地区アンバサダーを務める稲垣貢哉さん。服の原材料調達から販売まで多岐にわたる経験をもとに、やさしいせいふくの活動を支えています。Tシャツを作るインドの工場とつないだり、中学校・高校での出張授業の取り次ぎなどに関わっているそうです。

稲垣さん「服を大量に作って売る、大量に捨てるというやり方は、考え直さなくてはいけないと思っています。やさしいせいふくの活動は消費者の教育になり、アパレル業界にも影響を与えてくれます。すごく“頼りになる存在”ですね」

やさしいせいふくの活動を支える稲垣貢哉さん(アースデイ当日)

日本のアパレル産業はサプライチェーンが長く、生産背景が見えにくいことが課題の一つです。また日本は品質にこだわるあまり、わずかな混入物(コンタミネーション)も許されず、インド綿などの手摘みの綿は、敬遠されることも。日本のアパレル業界の慣習にも課題があると稲垣さんは指摘します。

稲垣さん「欧米のNikeやパタゴニアといった企業は、年間に使用する綿の量を計算し、あらかじめ1年単位で綿の確保を行うんです。ところが日本では、短いスパンでしか発注しない企業が多い。そうすると良い原料は先に欧米に採用されてしまうこともあり、期中生産をすればその度に輸送も発生し、環境負荷がかかります」

ファッションに携わる人に対しては「もっと原材料に関心を持ってほしい、自分たちがどんな材料、どんな資源を使っているか知ってほしい」と稲垣さんは続けます。

稲垣さん「今アパレル業界には、サステナブルというトレンドがきています。業界の展示会に行くと『サステナブルな素材だから売れますよ』という売り文句が叫ばれている。もちろん、最終的に売れなくて廃棄になってしまうよりはいいのですが、本当にそのやり方が『持続可能なのか』という視点を忘れてはいけません。原材料や生産過程に企業が責任を持って、売れる予測やしっかりと販売計画を立てて、商品を売り切る。こだわりのあるブランドとは、そういうものだと思うんです」

チームであり、コミュニティだからこそ向き合い続けられる

やさしいせいふくは、稲垣さんからもさまざまなインプットを受けつつ、勉強会から活動をはじめて約3年。代表が代変わりするなど、変化する組織でありながらも目的をしっかり共有して活動を継続しています。その鍵は、メンバーそれぞれが課題を「自分ごと」にしていることにありました。

村山さん「中高生が着るイベントTシャツが、世界のどこかの児童労働によって作られているかもしれない。今、自分が学生の時に知ったからこその衝撃があったんです。活動について友人に話すこともありますが、自分ごとにしてもらうのはなかなか難しく、一つの大きな壁。そこを超えるのが、僕たちの役割でもあると思っています」

坂本さん「僕は中学3年生あたりから“社会課題オタク”みたいな感じでした。社会に対して懐疑心の塊で、社会の構造やあり方に興味を持ちはじめたんです。ファッション産業には複数の課題があり、日本だけでなく世界の問題。取り組みがいのある課題だと思っています」


島崎さん「私は『自分を変えたい』と思ったことがきっかけで、やさしいせいふくの活動に関わり始めました。自分にとって居場所のような存在です。組織の中に役割があって、学校生活だけでは味わえなかった感情に出会って、自分を成長させてくれています」

やさしいせいふくのメンバーは現在、中学3年生から大学1年生まで幅広く、他の団体と掛け持ちをしているメンバーもいるといいます。コロナ禍でリアルな活動が制限される中、やさしいせいふくは週1回のオンラインミーティングを2年間継続。そのなかで生まれたのは、一直線にファッションの社会課題に向きあうだけではない組織の在り方でした。

島崎さん「私たちはファッション産業の課題解決という目標を共有する『チーム』であると同時に、“答えのない問い”に向き合い続ける仲間同士でもあります。答えのないことに向き合い続けるのって、しんどい。進路選択など学生ならではの悩みも出てきます。大きくて答えのない問題に取り組んでいるからこそ、仲間の存在は欠かせません。だからやさしいせいふくには、チームとしての側面と『コミュニティ』としての側面があるんです。これは坂本くんがよくメンバーに伝えていることですね」

坂本さん「そうですね。もし、ファッションの社会課題解決という視点だけだったら、もっとガツガツ活動しなきゃいけないと思うんです。でも僕たちはそうじゃない。学生時代という時間を使って、間違っても失敗しても大丈夫な場で、実践をしながら学ぶことに意味があります。考えは揺れ動いていいし、安心して思っていることを話せる。そういうコミュニティとしての側面を大切にしているんです」

アースデイでのブース展示の様子

チームとしてコミュニティとして、課題に向き合い続けるやさしいせいふくのメンバー。前代表の坂本さん自身「チームで一つの問題に長く取り組むというのは、これが初めての経験。みんなとやったほうが長続きしますね」と振り返ります。今後も、やさしいてぃーしゃつはオンラインを中心に販売を続け、ファッションの社会問題や服との付き合い方を、未来の購買者に向けて発信し続けていきます。

島崎さん「3年間この活動に携わってきましたが、あまりにも濃い日々でした。自分の世界の見方が変わり、活動を始めて本当に良かったなと。今後は、やさしいせいふくの活動と大学での学びを結びつけたり、後輩の成長のサポートもしたいです。個人としての成長を『やさしいせいふく』というチーム、コミュニティに還元していきたいと考えています」


鈴木さん「まだ活動に参加し始めて1年ですが、ファッションの社会課題を知ることで、他の社会問題にも目を向けるようになりました。もともと話すのが得意ではなかったけれど、周りの人たちに刺激されて、成長できた部分もあります。今後は、伝えたいことを周りに積極的に発信して、やりたいと思ったことを妥協せずに取り組んでいきたいです」

坂本さん「今後の詳細な活動については、またみんなで話し合っていきたいです。個人的には、メッセージが『より伝わる』にはどうすればいいんだろう、ということを考えていきたくて。闇雲に発信しても伝わらないので、伝え方も含めて学んでいきたいです」

アースデイ当日やオンライン取材中も、仲の良さそうな雰囲気が伝わってきました。同時に、一人ひとりが自分の言葉で取材に応じてくれ、“個”の力強さも感じます。SlackやZoomなど、オンラインでのコミュニケーションも多い“コミュニティ”だからこそ、それぞれの意見がフラットに交わっている印象でした。コロナ禍を乗り越えて活動を継続してきた彼らの今後が、ますます楽しみです。(取材・執筆:佐藤由佳)(写真:上田壮一)

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