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考える、それは力になる

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2022.10.25

ティーチャーズ・ギャザリング2022を開催しました!

SDGs for Schoolの活動として2018年から継続して行っているティーチャーズ・ギャザリング。サステナビリティをテーマに各学校で実践している授業や、企業・NPOの活動を知ることなどを通じて、これからの教育を考える場です。

開催5回目を迎えた今年のテーマは、SDGs達成の折り返し地点だからこそ考えたい「これからの教育とSDGs」です。今回が初めての参加という方も多く、コミュニティの輪が広がってきました。本レポートでは、オンラインで開催されたイベントの様子をお届けします。
(当日のプログラムはこちら

■目次■
◇主催者メッセージ:山本崇雄さん(横浜創英中学・高等学校、新渡戸文化学園他)
◇講演・ワークショップ:辰野まどかさん(グローバル教育推進プロジェクト[GiFT] )
◇実践事例の紹介
◇学校からの実践報告
◇企業の取り組み紹介
◇SDGsの日本のローカルターゲット4をみんなで考えよう

◇主催者メッセージ:山本崇雄さん 横浜創英中学・高等学校、新渡戸文化学園他

はじめに、山本崇雄先生からの主催者メッセージです。


山本崇雄さん 横浜創英中学・高等学校、新渡戸文化学園他

山本さんは教育や授業において「目的をしっかり持つこと」の重要性をお話しされました。

社会や学校現場ではSDGsの認知度が上がった一方で、SDGsを授業に取り入れること自体が目的になっていないだろうか、と問いかけます。
大きな目的は、子どもたちや私たち大人も含めた全員が「社会を創っていく当事者になっていくこと」だと強調しました。本レポートをお読みいただく皆さんも、ぜひ意識しながら、読み進めていただければなと思います。

◇講演・ワークショップ:辰野まどかさん グローバル教育推進プロジェクト(GiFT)  

辰野まどかさんには「自分の中にあるグローバル・シチズンシップ(世界をよりよくする志)とは?」と題し、ワークショップを挟みながら講演をいただきました。


辰野まどかさん グローバル教育推進プロジェクト(GiFT)

辰野さんの講演のテーマは「グローバル・シチズンシップ」。SDGsのゴール4のターゲット4.7には「グローバル・シチズンシップ」という言葉が入っています。このターゲットは「平和と持続可能性のビジョンに基づいた、態度、行動変容を目指す教育の普及」を目指すもの。辰野さんが代表理事を務めるGiFTでは、グローバル・シチズンシップを「世界をよりよくする志」と呼んでいます。

講演の中では、辰野さんが企画協力された書籍『わたしからはじまる!SDGs』をご紹介いただき、その本の中にある「マイ・グローバル・シチズンシップ」というワークを行いました。

このワークについて辰野さんは「SDGsのゴールから始まるのではなく、自分の“物語”や思いからはじまるSDGsに向き合ってみよう、ということがコンセプトです。今日のワークは、どんな思いを持って教育に携わっているのか、先生方自身が自己探究をする場。リラックスしながら参加してください」と話しました。

GiFTのワークは「一人ひとりの中にある物語を引き出すこと」を大切にしています。その物語の共感が人と人とを繋げ、未来を創っていきます。ストーリーテリングの手法で、自分を知る、相手を受け入れるプロセスを経て、最終的にSDGsに繋がっていくとのことでした。辰野さんのストーリーをお聞かせいただいた後、実際にワークシートを記入する時間を取り、2人ずつのブレイクアウトルームに分かれて「自分の物語」をそれぞれシェアしました。ここでは辰野さんの物語を紹介します。

ーーー

辰野さんは関西・神戸生まれ。英語力の高い私立中学校に入学した辰野さんは、英語がペラペラ話せる同級生に圧倒されます。一方の辰野さんは英語が苦手で、中学生から高校2年生まで英語の勉強は一切放棄(!)していたそう。ところがインターナショナル派なお母様から、17歳の誕生日プレゼントとして「一人で3週間、スイスの国際会議へ参加する権利」をプレゼントされました。
世界中からビジネスや政治、NGOのリーダーが集まる場に突然参加することになった辰野さんは、肌の色、目の色、髪の色がさまざまな大人たちの中に混じることになります。会議では、環境問題、都市問題、差別、紛争、貧困……さまざまな課題について毎日毎日大人たちが話し合い、世界のことを何も知らないと痛感させられる場面もありました。


辰野さんのこれまでをモチベーショングラフで表したもの

そんな中で3週間を過ごし、最終日にみんなの前で感想を言う機会をもらいました。「こうやっていろんな国の人たちが世界のために話し合っているのは本当に素晴らしいと思います。この場がこれからもずっと続いてほしいと思います」と発表。そうすると目の前に座っていたおばあちゃんから大声で「何言っているの!あなたが続けていくんでしょ!」と諭されたのだといいます。これが、辰野さんの人生が大きく変わった瞬間でした。「そうか、平和って誰かが作っているから、今私は平和な世界に生きているんだ。私も平和を作る側に立ちたい」と思い、教育を通して世界をよりよくしていきたいと決意しました。

ーーー

「マイ・グローバル・シチズンシップ」のワークを終えた参加者の皆さんからは「自分の原点を声に出して、聞いていただくことで、改めて自分自身の思いを確認することができた」「人生の転機って思いがけないところにあって、それをどう生かしていくのかが大切ですね」などの感想がチャットで寄せられました。

◇実践事例の紹介

●栢之間倫太郎さん 新渡戸文化学園
身の回りから考えるSDGs 


栢之間倫太郎さん 新渡戸文化学園

栢之間さんは新渡戸文化小学校で教員をされています。PBL(Project Based Learning)の手法が好きで、子どもたちが自分たちの街や学校を分析して、それに対するアクションを考えて、みんなで行動していく、ということを実践されていました。
今回ご紹介いただいたのは、新渡戸文化学園の栢之間さんと芥隆司さんの共著『身の回りから考えるSDGsーー小学5・6年生向け こどもSTEAMシリーズ』。

本書は3ステップで構成されており、1つ目は「ゴミを分別しましょう」など正しいと言われている行動は、そもそもなぜそうなのか?を考えてみるステップ。2つ目は「学校に行けない」などの事象によってどのような影響が広がるか、さまざまな面で考えるステップ。3つ目はある社会課題に関して自分なりにアイデアを出してみるステップ。SDGsという言葉がなくとも、なぜ?と考える力や多角的にものをみる力、アイデア力は子どもたちにとって必要な能力です。SDGsという言葉を登場させなくても使える本になっているそうです。

ここからは、実際にページを見せていただきながら取り組み方をご紹介いただきました。

「水を出しっぱなしにする」というお題で、ステップ1の「なぜ?を考える」に取り組みます。なぜ水を出しっぱなしにしてはいけないのか?という問いに対して考えてみると、論理的に答えることは案外難しいことに気づくのではないでしょうか。「先生も子どもたちも一緒に難しさを体験することは、とても価値があると思います」と栢之間さんはいいます。

この本を書き始めた当初に想定した読者像は「SDGsは知っているけど、道徳的に『こうしよう』と言われたりすることに対して懐疑的な小学校高学年」だそう。“よく言われる良いアクション” に対して、大人も子どもも明確に目的感や知識を持てていないことが多くあります。それが要因となって「それって、きれいごとすぎない?」と感じることがあるのではないかと栢之間さんは指摘します。「良いと言われているから」という理由でなんとなくアクションをするのではなく、自分なりの論理を持って行動をすることで納得感が高まりそうです。

●山藤旅聞さん 新渡戸文化学園
好きから始めるSDGs 


山藤旅聞さん 新渡戸文化学園

新渡戸文化高等学校での実践について報告いただきました。山藤さんが大切にしているのは生徒に自分の「想い」を共有すること。新型コロナの流行により一斉休校が起きた2020年4月、人間活動が世界的にストップしたことで街に野生動物が現れたり、大気汚染が改善したりしたニュースを紹介し「人の行動が変わると環境も変わる」とを人類は一度経験した、経験している最中なのだと、考えを共有しているそうです。「自分が行動すれば未来が変わっていくという実感を持ち、結果的にSDGsにつながっていくという視点があってもいいのではないか」と山藤さんは話します。

全国学力テストにおける地域間の学力格差に関する研究では、学習意欲に相関があるものとして、1位「勉強の面白さを教えてくれた大人の数」2位「将来目標にしている大人の数」3位「尊敬できる大人の数」という研究結果が出ており、大人の存在が大きいと示されています。山藤さんは「さまざまな領域で活躍する大人の魅力」を発信する重要性を感じています。

そこで今回事例として紹介いただいたのは、高齢化地域や生産に関わる地域などを訪れ、社会課題に触れるスタディーツアー。従来型の修学旅行から、新しい形の修学旅行に変えていきました。このツアーは人口減少、気候変動、食糧自給率問題、エネルギー問題などの「未来の当たり前」を見直すために、そこに従事するさまざまな大人に出会う旅。実施エリアは10エリア以上に及び、時期を複数回にわけて2回実施。1つのエリアに5〜10名の生徒が訪れ、行政や地域の社長さん、一次産業に従事する人などに「取材」することで、それぞれに学びを得ます。
午前3時の船に乗って漁業をして、水揚げされた中で値段のつかない未流通魚を捌き、自分たちでご飯作って食べたり、宿に泊まることもできるけどテントで泊まるという選択肢もある。そんな旅を作っているのだといいます。

このツアーの学習効果を津田塾大学・京都教育大学と共同で分析しており、現在わかっているのは、ツアー4日間で「問題発見能力」や「プロジェクトへの主体性」などすべての21世紀型スキルが上昇したこと。分析中のデータの中で、相関が取れそうなものとしては「偶然の出会い(人との出会い)」が挙げられるというのが興味深いものです。山藤さんは「予定された講演などではなく『村の人とのちょっとした会話』などの経験が心を動かしている」のだと話します。従来の学校行事をこのように変えることができるのだという一つの事例をご紹介いただきました。

◇学校からの実践報告

●磯西重行さん 大阪府枚方市立東香里小学校
WELL-BEINGな社会における自動販売機って?


磯西重行さん 大阪府枚方市立東香里小学校

東香里小学校では昨年から探究学習を取り入れており、その柱の1つとしてSDGsがあります。昨年度は4年生の探究学習で、子どもたちが仮想の会社を起業し、問題解決に取り組むPBLを実施。教科横断型にするために、SDGsの各ゴールと教科を紐付けて作成した年間計画表などをスライドでご紹介いただきました。

そして今年度は6年生での実施。WELL-BEINGな社会における自動販売機を考えています。子どもたちはワールドカフェ形式で「災害の時にどう使えるか」「ゴミが多く出てしまったら?」「自販機を介した、人との接触のメリット/デメリット」など、さまざまな観点でのアイデアを交わしました。

今後は、昨年度の取り組みをきっかけにつながった冷凍自販機メーカー、サンデン・リテールシステム(「ど冷えもん」を製造・販売)と子どもたちが共同で「WELL-BEINGな社会を作るために自動販売機はどう役立つのか」を考えるワークショップを実施予定。これからの展開が楽しみなプロジェクトでした。

●沓木里栄さん 広島県府中町立府中中学校
広島県府中町の中学校、「8月9日」にヒロシマ・ナガサキを考える


沓木里栄さん 広島県府中町立府中中学校

沓木さんからは「8月9日」に行った平和学習の取り組みについてご紹介いただきました。

このプロジェクトは3年生の実行委員の動きによって実現した全学年横断の取り組み。実施の背景として、広島市は毎年8月6日に平和学習を実施する一方で、府中町ではその慣習があまりなく、府中中学校でも実施していませんでした。そこで2年前から独自に平和学習を開始。今年は「広島原爆の日」である8月6日が土曜日だったため「長崎原爆の日」である8月9日に合わせて平和学習を行うことになりました。

深い学びにするための工夫点として挙げたのは、事前のアンケート実施。「長崎への原爆投下は必要だったか」「原爆投下の責任はどこにあるのか」「原爆投下がなかったら、今より良い世界になっていたか」という質問に対して選択式で回答し、その理由を書いてもらう形式でした。

当日は、クラスごとでの話し合いや縦割りクラスで意見交換を実施。話し合いでは実行委員の生徒が一人ずつ各クラスに入り、進行や問いかけを行いました。

たとえば「長崎への原爆は戦争をやめるために必要だった」という立場に対して実行委員が「そこに自分の家族がいたとしても、必要だったと思うか」と投げかけを行なったそう。討論の前後で意見が変わった生徒も25%いたということで、より幅広く、深く考えられる場になりました。

生徒からは「長崎のことについても学ぶ必要があった」「専門家の意見も聞いてみたい」「沖縄、真珠湾攻撃、戦争前の広島、日本の加害部分などについて知って議論したい」「他地域や他国の中学生と意見交換してみたい」などたくさんの感想・意見があがったといいます。沓木さんは「どこか交流していただける学校があれば嬉しいです」と呼びかけました。

●阿部大輔さん 秋田県立新屋高等学校
「ワクワク」や「楽しさ」が行動につながると実感。そのツールとしてのSDGs


阿部大輔さん 秋田県立新屋高等学校

阿部さんがSDGsに力を入れて取り組むようになったきっかけは、地元企業のCSR活動をSDGsと紐付けて学習するプロジェクトへの参加。一緒に参加した生徒たちが「エシカル消費について何かイベントを起こしたい」と声を上げるようになり、普段は大人しいような生徒が変化したことに、嬉しさと可能性を覚えたと言います。この経験から「ワクワク」や「楽しさ」は行動につながると実感し、そのツールとしてSDGsを捉えているのだそうです。今回は「授業」「理科研究部」「生徒会活動」における実践をご紹介いただきました。

担当する生物の授業では「生態系のバランスや多様性の保全に向けて課題となってくるテーマに対し、SDGs視点で考えるスキルを身につける」を目的として実施。9つのテーマから調べてみたいものを選択し、整理・発表する形式をとりました。

理科研究部では、生息地が減少しているゼニタナゴの保全活動や、外来種である巨大なオタマジャクシ(ウシガエル)、アメリカザリガニなどの駆除活動を行っています。アメリカザリガニは粉砕して肥料としての価値を活かせないかと取り組みを進めているそう。

生徒会活動での実践としては、生徒会主体で開催した「新屋高校SDGsフェスタ」。ゲームを通して楽しみながらSDGsについて学べるイベントです。小学生〜社会人までを対象に幅広い年代の参加者が集まりました。

阿部さんが大切にしているのは「ワーク・ライフ・コミュニティ・バランス」という考え方。「仕事もプライベートも地域活動も、全て関連させながら、私自身も学校自身も持続可能に発展していければなと考えています」と話しました。

●東 庸介さん 辻調理師専門学校
SDGs for School認定エデュケーター大阪発、中高生向けイベント 


東 庸介さん 辻調理師専門学校

東さんからは、SDGs for School認定エデュケーターの交流会がきっかけとなって企画されたイベントについて報告いただきました。

今回のイベントで大きな役割を果たしたのは、辻調理師専門学校の学生サークルSSP(食のサステナブルプロジェクト)。彼らはASC認証のサーモンを用いたレシピ開発や、メロン作りの中で「間引きされるメロン」を使ったメニュー開発、大阪市ごみ減量フェスティバル掲載の動画作成などを行ってきました。動画作成では「家庭の中でゴミが減る調理の工夫を啓発する動画」をテーマに、ママコミュニティにコンタクトを取り、余りやすい食材など調理のニーズをヒアリング。それに応える形で動画を作成していったそうです。

イベントではこのようなSSPの実践報告を中高生に向けて行ったのち、「世の中の困りごと」の課題解決に向けたアイデアワークショップを行いました。

ワークショップではSDGsの観点で新聞記事を読み、それがどのような課題・問題につながっているのか、解決に向かうためにはどうすればいいのかについて話し合いました。SSPの学生が各グループのファシリテーターとなり、中高生の思考の整理をサポート。

今後に向けては「イベントを続けるための仕組みづくりや、団体の枠組みづくりが課題」だと東さんは話しました。

●戸ヶ瀨哲平さん 沖縄県立八重山特別支援学校
ゴミとはなんだろう、プラスチックとはなんだろう? 石垣島の海岸で実践


戸ヶ瀨哲平さん 沖縄県立八重山特別支援学校

八重山特別支援学校は石垣市宮良地区にあり、海まで徒歩で行ける場所に立地しています。今回報告いただいたのは高等部で取り組んだゴミの問題、プラスチックの問題。

「ゴミとはなんだろう、プラスチックとはなんだろう?」ということで、まずは石垣の海岸でゴミ拾いを行いました。よく見ると海外から流れついたゴミも多くあります。その後どのような種類のゴミがあるか分別し、プラスチックだけでも種類がたくさんあることを確認していきました。

石垣市ではプラスチックは資源ゴミとして回収されますが、ほぼ埋め立てられているのが現状。焼却炉の問題など小さな島ならではの課題もあるといいます。集めたプラスチックのリサイクルは難しい問題ですが、今回はポリプロピレンを熱で溶かしてアクセサリーに変身させました。ゴミだけれど、新しい形に生まれ変わることができると子どもたちと一緒に学びました。

今年度は「海のゴミから生活を考える」というテーマで、気仙沼市の幼稚園・小学校・中学校との交流をしながら、石垣島の海について考える実践を行いました。石垣島の複数の海岸を回り、ゴミの特性を観察。ゴミが少ない海岸、漂流ゴミが多い海岸、投棄された生活ゴミがある海岸など、さまざまな状況に気づいたといいます。

気仙沼の中学校とは海岸からオンライン中継で結び、リアルな海の様子を伝えながら、交流を行ったというのが印象的でした。

●杉浦正吾さん 東京都市大学
東京都市大学「ひらめき・こと・もの・ひと」づくりプログラム


杉浦正吾さん 東京都市大学

最後に発表いただいたのは、東京都市大学の杉浦さん。小中学生向けのサステナブルイベントや、一般企業向けのSDGs研修、コンサルティングなどを行いながら、東京都市大学や武蔵野大学大学院で教鞭をとっています。今回は、大学・大学院での講義についてご紹介いただきました。

杉浦さんが最近意識しているのは「STOP!ミス・コミュニケーション」。SDGsについて話すとき、各自がどのくらいの認識または行動フェーズにあるのかを確認することから始め、ミス・コミュニケーションを防ぐのだそうです。特に大学生では、高校でSDGsを絡めて探求学習を多く経験している人とそうでない人が分かれています。

東京都市大学では、サステナブル・ディベロップメントに関するプロジェクトベースドラーニング(SD PBL)や、「ひらめき・こと・もの・ひと」づくりプログラムを展開する中で「全体最適解と統合思考」を標榜しながら講義を行なっています。

たとえば「環境×防災×エネルギー×経済×・・・統合最適解は?」ということで、「東日本大震災(3.11)でプロ野球もナイターゲームが中止になった中で、どうすればナイター再開できるかアイデアを考える」という問いを立て、アイデアを出す。そういったプロセスの中でSDGsを単体ではなく、統合的に考えることを行なっているそうです。

武蔵野大学では、CSR論を担当しています。SDGs、CSR、ESGの関係性やその流れ(歴史)について講義の最初に伝えているそうです。杉浦さんは「流れが見えることが大切。一枚絵にして伝えて、全部つながっていることを理解してもらうようにしています」と話しました。

◇企業の取り組み紹介

続いて、サラヤ株式会社、野村ホールディングス株式会社、ライオン株式会社のみなさんより企業の取り組み紹介をいただきました。

●サラヤ株式会社 秋吉道太さん


サラヤ株式会社 広報 秋吉道太さん

サラヤ株式会社からは、衛生・環境・健康をテーマとした学校向けプロジェクト「いのちをつなぐ学校」についてご紹介いただきました。

2022年4月にオープンしたWebサイトでは、「校長」に就任した生物学者 福岡伸一先生が3Dキャラクターとなり、感染症の歴史や衛生、ウイルス、生命とは何かについてなど、動画コンテンツが展開されています。

プロジェクトが始まったきっかけについて秋吉さんは、「新型コロナウイルス感染症の流行により、私たちは感染症の恐ろしさを知りました。この先いつ新たな感染症が発生するかわからない中、自分や周りの命を守っていかなければいけません。サラヤは感染予防のメーカーとして『最新の衛生情報』を教育現場に情報共有できないかと考え、プロジェクトが始まりました」と話しました。

今後は動画コンテンツのみならず、中学校・高校向けに「出張授業」も展開予定。サラヤの社員が、感染症予防や環境問題について「いのちの大切さ」が実感できる授業を実施していきます。

●野村ホールディングス株式会社 園部晶子さん


野村ホールディングス株式会社 サステナビリティ推進室 園部晶子さん

野村ホールディングス株式会社は1990年代から積極的に金融・経済教育に取り組んでおり、社会におけるお金、個人のお金について学ぶ出張授業を、各学校の目的に合わせて展開しています。

Think the Earthと共同で制作した『未来を良くするお金の使い方 SDGs×金融=ありがとうのつながり』は、お金の観点からSDGsを考えることができる冊子教材。園部さんは「お金が良いものになるのか悪いものになるのかは、私たちの使い方次第。この冊子を通じて、自分たちが使ったお金がどのように社会や環境に影響するのか理解し、自分の人生や世の中を良くするためのお金の使い方を考えていただければ」と話しました。

授業案や教員向け資料なども用意されたこの教材の詳細は、経済学習サイト『man@bow(まなぼう)』に掲載されています。

●ライオン株式会社 岡 由里江さん


ライオン株式会社 岡 由里江さん

昨年設立130周年を迎えたライオン株式会社は「より良い習慣づくりで、人々の毎日に貢献する」ことをパーパスとしています。

グローバル・ジェンダー・ギャップ・レポート2022で日本は116位とかなり低い評価になっている中で、ジェンダー平等の実現が求められています。ライオンでは「Kaji×Kaji ハッピーシェア」というプロジェクトで、夫婦のコミュニケーションを良くすることによって「家事」におけるジェンダーギャップの解消を支援。サイト上には、つい目についてしまうようなマイナスポイントを、ポジティブに伝える「ポジティブ変換表」などを掲載しています。

岡さんは「家庭科で料理を作ったら後片付け(食器洗い)まで行うことで『家事の習慣化』になります。家庭科の授業で若いうちから家事習慣を身につけることで、大人になってからの生活でもギャップが生まれにくくなるのではないか」と話しました。
また、生徒たちにも身近なアイテムを活用して、学校でもすぐに実施できる「ハブラシ・リサイクルプログラム」についても説明し、「エコの習慣化」で地球環境へも貢献していこうと提案しました。

◇SDGsの日本のローカルターゲット4をみんなで考えよう

イベントの最後には、Think the Earth上田の進行のもと、SDGsの日本のローカルターゲット4をグループに分かれて考えました。持続可能な開発のための2030アジェンダの宣言55には「地球規模レベルでの目標を踏まえつつ、各国の置かれた状況を念頭に、各国政府が定めるものとなる」とあります。
上田は「SDGs達成ランキングで日本は19位。ゴール4は目標達成度『高』と評価されていますが、日本国内での実感値はどうでしょうか」と問いかけます。不登校の問題、先生の働き方、ジェンダーの問題…。参加者の皆さんが教育に携わる中で感じている課題についてブレストし、日本のローカルターゲット案に落とし込んでいきました。


ルーム3のブレスト

ルーム5のブレスト

主な論点として1)教職員の労働環境の改善 2)様々な理由で不登校となる子どもたちを包摂する教育環境の整備 3)地域全体で子どもたちの教育に取り組む社会づくり などが出されました。この結果はSDGs達成に向けた日本の取り組みを推進するために設けられている「SDGs推進円卓会議」(政府「SDGs推進本部」が開催)が実施する「SDGs実施指針改定に関するパートナーシップ会議」に提出させていただきました。
ーー

今年も多くの方にご参加いただいたティーチャーズ・ギャザリング。より具体的なアクションや実践報告が寄せられ、明日から実践できそうなヒントも得られたのではないでしょうか。

参加者の皆さんからは「いろいろなヒントをいただきました」「様々な実践や考え方を学ぶことができて自分自身アップグレードできた気がしています」「平和を考えることは未来を発展的に創造することだと気付かされました」などの感想が寄せられました。

SDGsも折り返し地点。次なる持続可能な未来を目指して、ともに歩んでいければと思います。

お集まりいただいた皆さん、最後まで記事をご覧くださった皆さん、誠にありがとうございました!
(佐藤由佳)

▼ティーチャーズ・ギャザリング 過去の報告レポートはこちら
https://www.thinktheearth.net/sdgs/teachers-gathering-report/

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