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2019.09.29 | 河内 秀子

電動キックボードシェアはエコなのか? 独でグリーンウォッシュ批判も

2019年9月23日、ニューヨークの国連本部で、気候行動サミットが開催されました。そこで、ドイツのアンゲラ・メルケル首相は、「気候変動と世界の温暖化は、人類が原因であることに間違いはありません」と演説で訴えました。「私たちみんな、たった一つの地球しか持っていないのですから」と。

9月20日に、2030年に目標を定めた「気候変動対策パッケージ」を提案したメルケル政権。同年までに温室効果ガスの排出を55%減らすため、国内の交通運輸、暖房などに使われるエネルギーのCO2価格の設定、電力供給の65%を再生可能エネルギーにすること、2022年までには原子力、2038年までには石炭火力発電をゼロにすることなどが提案されています。中でも大きなテーマが、電気自動車などエレクトロモビリティの推進や、電車代引き下げ、フライト値上げなどの話を盛り込んだ「交通の転換」です。

電動キックボードシェアのもう一つの問題が、多くのユーザーが交通のルールを守らないという点。車道を走らねばならないが歩道を走る人も多く、飲酒運転などもあり、事故が多発。先日は二人乗りをしたユーザーが大怪我する事故が起こった

しかし、交通大臣のアンドレアス・ショイヤー氏が「交通の転換」の大きな一歩として、「環境に優しく、楽しい自動車の代用品。非常に大きな未来へのポテンャルを持つモビリティ」と、6月から導入を許可した電動キックボード・シェアリングに関しては、大きな批判が集まっており、独Welt紙などでは、「グリーンウォッシュ」(※)ではないかとまで報道されています。

※グリーンウォッシュ うわべだけエコ、環境に配慮し、環境にいいことをしている「グリーンなイメージ」を装っていること。

最近では「SDGs(持続可能な目標(Sustainable Development Goals)」に取り組んでいるように消費者にアピールをしながら、実態が伴わない「SDGsウォッシュ」などという言葉も出てきました。持続可能な活動の広告などのコンサルティングを行うイギリスのFuterra社が中心となって2009年に発行したガイドに「グリーンウォッシュを見分ける10のサイン」が掲載されています。

Lime、Circ、Bird、Voi、 Tier、そしてUber Jump。ベルリン市内だけでも現在9000台以上が走っているという。欧州各地の大都市に進出しているが、ミラノでは大きな事故のあと禁止が決まった

この電動キックボードに関して言えば、電気=クリーンというイメージだけをアピールし、その電気は、どこから来ているのか? 本当にこのキックボードの存在によって、自動車の使用量、二酸化炭素排出量は減っているのか? キックボードの耐久性は? などの、本質的な「環境への影響」は語られていません。

独Zeit紙の記事によると、確かに1キロあたりの自動車の二酸化炭素排出量は
▼自動車 257g
▼電動キックボード 126g
と、自動車の半分ではあるものの、
▼満員のバス 51g
▼自転車 5g
と、ほかのモビリティを使った方が環境への負荷が少ないことがわかります。また、電動キックボードをシェアする人の多くが「自動車の代わり」ではなく「徒歩や自転車の代わり」に使っているという指摘も。電動キックボードを買った人の12%が、より多く自動車を使うようになったーという報告もあるそうです。また、環境連邦省の記事によれば、シェア電動キックボードの寿命が28〜32日間と非常に短いというデータもありました(Lime社によれば、4カ月)。

電動キックボードシェアのもう一つの問題点が、置き場所だ。多くの人が歩道や自動車道の真ん中に放置するため、邪魔になる

電動モビリティの充電に関しても問題が指摘されています。電動キックボード・シェアリングは、「ジューサー」と呼ばれる、フリーの業者が充電を請け負うビジネスモデルになっています。その業者が、どういった電力を使っているのか、再生エネルギーによるものなのかはチェックされません。また、1台の充電につき4ユーロ(約470円)と金額も低いため、大抵のジューサーはレンタカーを借りて市内を巡回して大量に回収し、充電していると言います。そのレンタカーからの二酸化炭素の排出に加え、4ユーロ(実費を引くと1台2ユーロ前後〜)が、労働力に対しての最低賃金を下回っているという、労働組合からの指摘もあります。

レンタカーを借りて夕方に市内を周ってキックボードを集めて充電し、翌朝もどす「ジューサー」たち。18歳以上でスマートフォンを所有し、営業許可証を持てば、誰でもジューサーになれる

メルケル首相が言う通り、すべての人にとって地球は一つしかありません。気候変動、環境への対策。それは、皆が力を合わせ、一人ひとりが考えていかなければ、実現できないものです。耳あたりのよい、うわべだけのグリーンにだまされないよう、常に問いかけ、考えながら、一人ひとりが考え、行動していかなければいけない時期にきているようです。

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河内 秀子
河内 秀子(かわち ひでこ) 地球リポーター

ドイツ ベルリン在住 東京出身。2000年からベルリン在住。ベルリン美術大学在学中から、ライター活動を始める。 現在雑誌『 Pen』や『 料理通信』『 Young Germany』『#casa』などでもベルリンやドイツの情報を発信。テレビのコーディネートも多数。http://www.berlinbau.net/

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