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2019.11.27 | 河内 秀子

ヴィヴァルディの「四季」に気候変動の影響が? 独オーケストラの斬新な試み 

2019年11月16日、北ドイツ放送エルプフィルハーモニー管弦楽団で、ちょっと変わったコンサートが行われ、ドイツ中で大きな話題を呼びました。

11月16日のコンサートの様子。1000人の観客がこの実験的な試みに惜しみない拍手を送った。様々なデータを数値化したのは、ベルリンのサウンドスタジオ、Kling Klang Klong。エルプフィルハーモニー管弦楽のトロンボーン奏者、シモーネ・カンドットがアレンジを担当した (c)Peter Hundert

初演を迎えたのはヴィヴァルディの「四季(Four Seasons)」―ではなく、「季節のために(For Seasons)」。ヴィヴァルディの作曲年、1725年から今日までの「気候変動」を数値化して楽譜に反映させたもの。いままさに危機にさらされている地球の環境、世界の気候変動を実感してもらおうという試みです。

まずは、この動画を耳をすませて聞いてみてください。

アラン・ギルバート指揮による「For Seasons」。ヴィヴァルディの聞き覚えのあるメロディなのですが、どことなく違う。知らないうちに歯車が少しずつずれ、美しい音が歪み、軋み出すその感じは、まさに私たちが、近年感じている「あれ、夏って、冬って、昔もこんなだったっけ?」という、世界的な気候変動への感覚と重なります。どこか不穏なメロディ。

この「For Seasons」は、ヴィヴァルディの「四季」の楽譜をベースに、様々な環境団体や大学、研究所が算出したデータ、例えば世界的な気温の上昇や、異常気象の頻度の増加だけでなく、気候変動の影響で絶滅してしまった生き物の数なども総譜に反映させて作られました。例えば、ヴィヴァルディの作曲時から現在までに、15%の鳥が絶滅していますが、それを「春」や「夏」の、鳥のさえずりをモチーフとしたメロディの音符の15%をなくすことで表現しています。

「地球の代わりはない」「耳をすませ」「いま行動を起こすか、後で溺れるか」などのプラカードで、環境変動へのアクションを促す、エルプフィルハーモニー管弦楽団のミュージシャンたちと、アラン・ギルバート (c)Peter Hundert

「夏」は早めに「春」のパートに影響し、ヴィヴァルディらしい軽やかさは耳障りな金管の音に遮られます。ピンと張り詰めたような寒さの中にいるようだった「冬」からは、数々の不協和音が聞こえてきます。

このプロジェクトを指揮した、エルプフィルハーモニー管弦楽団指揮者のアラン・ギルバートは「For Seasons」のステートメントの中でこう語っています。

気候変動とそこからの影響に対して、もう耳を塞いでいることはできません。この問題に幅広く耳を傾けてもらえるように、「For Seasons」では私たちが持っている表現手段―音楽を使いました。

我々音楽家だけでなく、誰もが、何かをしなければいけない時期に来ています。皆が一丸とならなければ、気候変動は克服できません。それは私たちのためだけでなく、子どもたちや地球のためです。もう選択の余地はないのです

世界の気候が、環境がバランスを崩しているということが、数字で見る以上に、はっきりと実感できる、この「For Seasons」プロジェクト。北ドイツ放送エルプフィルハーモニー管弦楽団は、11月のコンサートが好評を博したことから、今後もいくつかの公演を予定しているそうです。

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河内 秀子
河内 秀子(かわち ひでこ) 地球リポーター

ドイツ ベルリン在住 東京出身。2000年からベルリン在住。ベルリン美術大学在学中から、ライター活動を始める。 現在雑誌『 Pen』や『 料理通信』『 Young Germany』『#casa』などでもベルリンやドイツの情報を発信。テレビのコーディネートも多数。http://www.berlinbau.net/

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